mmntr短編集
#1
1.来世
jo side
「っ!!」
気が付いた時には体が飛び出していた。
手を突き出してはるてぃーさんを力いっぱい押す。
はるてぃーさんがいた場所に僕が割り込む。
はるてぃーさんのものではなく、本物のブレーキ音が響いた。
[下線] [/下線]
「じおるっっ!!」
はるてぃーさんの声が大きく響く。
いや、実際にはそこまで大きくはないのかもしれないけど、僕にはそう聞こえた。
「なんでっっ、…きゅ、救急車…!!」
あーあ…。
はるてぃーさんの行動は無駄だ。
言われなくても分かる。
もう、手遅れだ。
視界が赤い。
痛みが全身を襲っている。
「…[小文字]はる、てぃ、さん[/小文字]」
精一杯大声を出したつもりなのに、小さな掠れた声しか出なかった。
それでもはるてぃーさんは気づいてくれて、持っていたスマホを放り出して駆け寄ってきてくれた。
「なにっ…?なんでも、なんでもいいから言って!」
だけど、呼んだはいいものの、言いたい言葉が見つからなくて。
正確には、言いたい言葉がありすぎて伝えられなかった、と言った方が正しい。
数秒間、考えて。
僕はぽろぽろと涙をこぼしているはるてぃーさんとは対照的に、笑った。
「……来世[小文字]が[/小文字]、あ[小文字]るな[/小文字]ら……」
「……また、会ってくれますか…っ?」
はるてぃーさんは涙をためたままの目を見開いた。
そして、すぐに泣き笑い、のような表情を浮かべた。
「…もちろんっ…!だから、…絶対、会いに来い!」
僕はその言葉に安心して…
ゆっくりと目を閉じた。
[下線] [/下線]
hr side
「…って、言ってもなぁ…」
あれから何年経っただろう。
ただ、十年はゆうに過ぎている気がした。
俺はスマホを片手にただ散歩をしていた。
別に普段からしているわけでもないし、本当に気分だっただけだ。
そのとき、ピロンとスマホに着信音が鳴る。
…うたくんだ。
「もしもしー?」
『あ、はるてぃー?今どこにいんの?』
「道」
『は?…分からんけど急げよ、もうお前以外集まってんぞ』
「え?…もしかしてそろもん来てんの?」
『珍しく、な。だって今日は……』
「…そうだったね。じゃあ、今から行くわ」
『はーい。じゃあな』
プツ、と電話が切れる。
忘れていたわけではないけど、改めて言われると全然現実感がない。
スマホに表示された日付は、4月27日だった。
他人の記念日を覚えるのが苦手な俺でも、はっきりと脳に焼き付いている。
じおるの、誕生日と命日だ。
一人の人物で同じ日付をダブらせるなんてずるい。
こんなの、どうしたって忘れられない。
そうこうしているうちに、うたくんの家に着いた。
インターホンを鳴らす。
『はーい。…はるてぃーか。開いてるから入って』
うたくんの声。
言われた通り、ドアを開けて中に入る。
「…ほんとに来てんじゃん、そろもん」
俺の視線の先には当然のようにそこに座るそろもんがいた。
「そりゃくるでしょ、今日くらいは」
そろもんが笑っていった。
「逆に今日来なかったら見損なうわ」
うたくんが呆れたように言う。
「まぁ、良かったじゃん。…久しぶりにリアルで集まったね」
場を収めたのは、あすた。
あすたの言った通り、最近はあまりリアルで合わなくなった。
多分、メンバーが一人欠けたからだろう。
過去にも一回メンバーがいなくなったけど、それとこれとは別物だった。
気まずさもあるし、罪悪感もあるし。
だけど、今日くらいは、きっと楽しく笑い合える。
そう信じてみんなで集まった。
「…じゃあ、始めるか」
「そうだね…楽しみだな」
あすたが本当にうれしそうに笑った。
「じゃあ、いっせーのーで、でいくよ?」
目配せして、全員に確認する。
「いっせーのーで、」
「「「「じおる、誕生日おめでとう!」」」」
そろもんがクラッカーをならす。
うたくんがケーキを持ってくる。
ケーキはもちろん、本日の主役であるじおるが好きなもの。
あすたは今日のために動画を作ったらしく、パソコンを持ってきていた。
今日だけは、きっとみんな、心の底から笑えていた。
でも、きっと明日からまた一年、ちゃんとは笑えない。
来年が楽しみだな、なんて思いながら一切れケーキを切り分けて、誰も座っていない席に置く。
みんなそれを見て、笑ったり、少し目を逸らしたりしていた。
そのとき、ピンポーン、とインターホンが鳴った。
「…うたくん?なんか頼んだの?」
うたくんに尋ねると、首を傾げていた。
「いや、何も頼んでないと思うけど…」
「ふーん…じゃあ俺行ってくるわ、みんなゲームしてて!…あ、もちろんマイクラね?」
「流石にそれは間違えないよ…」
あすたが苦笑いで言ったのを確認して、俺はドアを開けて、外に出た。
そしてインターホンを鳴らした人物を見て、固まった。
「…約束通り。」
そう呟いたその人物は、見たことのある面影が残っていた。
「…じ、おるっ…?」
ぱっと見て、中学生くらいだろうか。
男性にしては少し長めな髪を揺らして、そこに立っていた。
その人物は、じおるにしか見えなかった。
「……」
彼は何も言わず、微笑んだ。
その笑みが、あのときのじおると重なった。
「…はるてぃーさん。コーヒー、お淹れしましょうか?」
「…!」
なんだよ。
ちゃんと、じおるじゃん。
あーあ、心配して、疑って損した。
だから俺は、満面の笑みで言った。
「全員分、よろしく!」
「承知しました。」
世の中、本当に奇跡なんてあるんだな。
そう思いながら、俺は何年かぶりにまた夢ができた。
[下線] [/下線]
【番外編】
「なぁ、なんでじおる中学生なの?」
「さぁ、…さすがにもとの年齢のまま、なんて奇跡は起きないんじゃないですか?」
「そっか…まぁ、いいや!また一緒に実況撮ってくれるか?」
「もちろんです!」
「あ、みんなにも言うか」
「…驚きません?」
「いいじゃん、サプライズしようぜ」
「承知しました」
「こんにじおー!」
全員の視線がその少年に突き刺さった。
「は?」
うたがまず声を漏らした。
「…うそ、でしょ」
続いてあすたが。
「…じおる?」
最後にそろもんが。
全員がぽかんとして、…一斉にじおるに飛びついた。
「わぁぁ!!じおる!?え、本物!?」
「久しぶりじおるちゃーん!」
「え、まじ?ドッキリじゃなくて??」
「ふふ、…本物で、久しぶりで、ドッキリじゃないですよ」
「このやけに落ち着いてる感…そして感じる普通ではなく変…!」
「うたくんのそれはなんなの?いじり?誉め言葉?」
「もうそんなのどうだっていいじゃん!そろもん、じおるのケーキ!持ってきて!」
「了解だっピ!」
「ほらじおる、誕生日ケーキ!」
「わぁ、ありがとうございます!用意してくださっていたんですね」
間違いなく、この日が全員が久しぶりに、本当に笑った日だった
「っ!!」
気が付いた時には体が飛び出していた。
手を突き出してはるてぃーさんを力いっぱい押す。
はるてぃーさんがいた場所に僕が割り込む。
はるてぃーさんのものではなく、本物のブレーキ音が響いた。
[下線] [/下線]
「じおるっっ!!」
はるてぃーさんの声が大きく響く。
いや、実際にはそこまで大きくはないのかもしれないけど、僕にはそう聞こえた。
「なんでっっ、…きゅ、救急車…!!」
あーあ…。
はるてぃーさんの行動は無駄だ。
言われなくても分かる。
もう、手遅れだ。
視界が赤い。
痛みが全身を襲っている。
「…[小文字]はる、てぃ、さん[/小文字]」
精一杯大声を出したつもりなのに、小さな掠れた声しか出なかった。
それでもはるてぃーさんは気づいてくれて、持っていたスマホを放り出して駆け寄ってきてくれた。
「なにっ…?なんでも、なんでもいいから言って!」
だけど、呼んだはいいものの、言いたい言葉が見つからなくて。
正確には、言いたい言葉がありすぎて伝えられなかった、と言った方が正しい。
数秒間、考えて。
僕はぽろぽろと涙をこぼしているはるてぃーさんとは対照的に、笑った。
「……来世[小文字]が[/小文字]、あ[小文字]るな[/小文字]ら……」
「……また、会ってくれますか…っ?」
はるてぃーさんは涙をためたままの目を見開いた。
そして、すぐに泣き笑い、のような表情を浮かべた。
「…もちろんっ…!だから、…絶対、会いに来い!」
僕はその言葉に安心して…
ゆっくりと目を閉じた。
[下線] [/下線]
hr side
「…って、言ってもなぁ…」
あれから何年経っただろう。
ただ、十年はゆうに過ぎている気がした。
俺はスマホを片手にただ散歩をしていた。
別に普段からしているわけでもないし、本当に気分だっただけだ。
そのとき、ピロンとスマホに着信音が鳴る。
…うたくんだ。
「もしもしー?」
『あ、はるてぃー?今どこにいんの?』
「道」
『は?…分からんけど急げよ、もうお前以外集まってんぞ』
「え?…もしかしてそろもん来てんの?」
『珍しく、な。だって今日は……』
「…そうだったね。じゃあ、今から行くわ」
『はーい。じゃあな』
プツ、と電話が切れる。
忘れていたわけではないけど、改めて言われると全然現実感がない。
スマホに表示された日付は、4月27日だった。
他人の記念日を覚えるのが苦手な俺でも、はっきりと脳に焼き付いている。
じおるの、誕生日と命日だ。
一人の人物で同じ日付をダブらせるなんてずるい。
こんなの、どうしたって忘れられない。
そうこうしているうちに、うたくんの家に着いた。
インターホンを鳴らす。
『はーい。…はるてぃーか。開いてるから入って』
うたくんの声。
言われた通り、ドアを開けて中に入る。
「…ほんとに来てんじゃん、そろもん」
俺の視線の先には当然のようにそこに座るそろもんがいた。
「そりゃくるでしょ、今日くらいは」
そろもんが笑っていった。
「逆に今日来なかったら見損なうわ」
うたくんが呆れたように言う。
「まぁ、良かったじゃん。…久しぶりにリアルで集まったね」
場を収めたのは、あすた。
あすたの言った通り、最近はあまりリアルで合わなくなった。
多分、メンバーが一人欠けたからだろう。
過去にも一回メンバーがいなくなったけど、それとこれとは別物だった。
気まずさもあるし、罪悪感もあるし。
だけど、今日くらいは、きっと楽しく笑い合える。
そう信じてみんなで集まった。
「…じゃあ、始めるか」
「そうだね…楽しみだな」
あすたが本当にうれしそうに笑った。
「じゃあ、いっせーのーで、でいくよ?」
目配せして、全員に確認する。
「いっせーのーで、」
「「「「じおる、誕生日おめでとう!」」」」
そろもんがクラッカーをならす。
うたくんがケーキを持ってくる。
ケーキはもちろん、本日の主役であるじおるが好きなもの。
あすたは今日のために動画を作ったらしく、パソコンを持ってきていた。
今日だけは、きっとみんな、心の底から笑えていた。
でも、きっと明日からまた一年、ちゃんとは笑えない。
来年が楽しみだな、なんて思いながら一切れケーキを切り分けて、誰も座っていない席に置く。
みんなそれを見て、笑ったり、少し目を逸らしたりしていた。
そのとき、ピンポーン、とインターホンが鳴った。
「…うたくん?なんか頼んだの?」
うたくんに尋ねると、首を傾げていた。
「いや、何も頼んでないと思うけど…」
「ふーん…じゃあ俺行ってくるわ、みんなゲームしてて!…あ、もちろんマイクラね?」
「流石にそれは間違えないよ…」
あすたが苦笑いで言ったのを確認して、俺はドアを開けて、外に出た。
そしてインターホンを鳴らした人物を見て、固まった。
「…約束通り。」
そう呟いたその人物は、見たことのある面影が残っていた。
「…じ、おるっ…?」
ぱっと見て、中学生くらいだろうか。
男性にしては少し長めな髪を揺らして、そこに立っていた。
その人物は、じおるにしか見えなかった。
「……」
彼は何も言わず、微笑んだ。
その笑みが、あのときのじおると重なった。
「…はるてぃーさん。コーヒー、お淹れしましょうか?」
「…!」
なんだよ。
ちゃんと、じおるじゃん。
あーあ、心配して、疑って損した。
だから俺は、満面の笑みで言った。
「全員分、よろしく!」
「承知しました。」
世の中、本当に奇跡なんてあるんだな。
そう思いながら、俺は何年かぶりにまた夢ができた。
[下線] [/下線]
【番外編】
「なぁ、なんでじおる中学生なの?」
「さぁ、…さすがにもとの年齢のまま、なんて奇跡は起きないんじゃないですか?」
「そっか…まぁ、いいや!また一緒に実況撮ってくれるか?」
「もちろんです!」
「あ、みんなにも言うか」
「…驚きません?」
「いいじゃん、サプライズしようぜ」
「承知しました」
「こんにじおー!」
全員の視線がその少年に突き刺さった。
「は?」
うたがまず声を漏らした。
「…うそ、でしょ」
続いてあすたが。
「…じおる?」
最後にそろもんが。
全員がぽかんとして、…一斉にじおるに飛びついた。
「わぁぁ!!じおる!?え、本物!?」
「久しぶりじおるちゃーん!」
「え、まじ?ドッキリじゃなくて??」
「ふふ、…本物で、久しぶりで、ドッキリじゃないですよ」
「このやけに落ち着いてる感…そして感じる普通ではなく変…!」
「うたくんのそれはなんなの?いじり?誉め言葉?」
「もうそんなのどうだっていいじゃん!そろもん、じおるのケーキ!持ってきて!」
「了解だっピ!」
「ほらじおる、誕生日ケーキ!」
「わぁ、ありがとうございます!用意してくださっていたんですね」
間違いなく、この日が全員が久しぶりに、本当に笑った日だった