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その日の夜。
王都リュミエールの空は、
相変わらず無駄にきらびやかだった。
誰かが作った「星を[漢字]ちょっとだけ[/漢字][ふりがな]かなり[/ふりがな]増やす魔法」
のせいで、
本来の星座はほぼ行方不明である。
「……増やすなよ、そこは」
エルクは自宅の窓から空を見上げて、
ため息をついた。
――そのとき。
ぴし。
「ん?」
ガラスに、
小さなヒビが入った。
風もない。
何かがぶつかったわけでもない。
それなのに、
ヒビはじわじわと広がっていく。
ぴし、ぴし、ぴし。
「え、ちょ、待ってこれ自然現象じゃないよな?」
次の瞬間、
ヒビの隙間から“黒いもや”がにじみ出した。
昼間に見たものと、
同じだった。
「……は?」
もやは重力を無視するように、
部屋の中へと流れ込んでくる。
空気が一瞬だけ、
音を失った。
外から聞こえていたはずの喧騒―
― 暴走する箒と鳩のバトル音すら、
すっと消える。
「おいおいおいおい、冗談だろ」
エルクは思わず後ずさる。
もやはゆっくりと床に落ち、
そこに――
黒い魔法陣を描いた。
「昼のやつと同じ……!」
だが、
今回は違う。
魔法陣は“ふざけていない”。
光らない。
回らない。
効果音も鳴らない。
ただ静かに、
そこに“ある”。
それが逆に、
異様だった。
「……こういうのは大体、触るなって相場が――」
ぼこっ。
「今なんか出た!?」
魔法陣の中央が、
わずかに盛り上がる。
次の瞬間。
にゅるり、
と。
黒い何かが顔を出した。
「いやいやいやいや何それ!?生き物!?魔法!?どっち!?」
それは形を持たない影のようで、
けれど確かに“こちらを見ていた”。
そして――
「……見つけた」
低い声が、
直接頭の中に響いた。
「うわ喋ったァ!?」
エルクは反射的に、近くにあった椅子を投げつけた。
バキィッ!
椅子は見事に空振りし、
そのまま壁に激突して壊れた。
「当たれよ!!せめて物理は通れ!!」
黒い存在はゆらりと揺れただけで、
何事もなかったかのようにそこにいる。
そして、
ゆっくりと“広がった”。
床から、
壁へ。
壁から、
天井へ。
じわじわと、
部屋を侵食していく。
「これ、完全に笑えないやつだろ……!」
エルクは歯を食いしばる。
昼間、
自分が言った言葉が頭をよぎる。
[斜体][太字][明朝体]――実用性のある魔法を、自分で作る[/明朝体][/太字][/斜体]
「……は、はは」
乾いた笑いが漏れる。
「タイミング最悪すぎるだろ……!」
黒いもやは、
すぐそこまで迫っていた。
逃げ場は、
ドアの向こうだけ。
「……でもまぁ」
エルクは一歩下がり、
ドアノブに手をかける。
「“何が起きても慣れてる”のが取り柄なんでね」
次の瞬間、
ドアを蹴り開けた。
バンッ!!
廊下に飛び出す。
――そして、
固まった。
「……は?」
廊下にも、
あった。
黒い魔法陣が、
ひとつ、
ふたつ、
みっつ。
そして。
そのすべてから、
同じ“もや”があふれ出していた。
遠くで、
誰かの叫び声が響く。
「ちょっと!これ新しい魔法!?全然面白くないんだけど!!」
「いやそこ評価基準おかしいだろ!!」
思わずツッコミながら、
エルクは走り出す。
だがその背後で。
自分の部屋が、
音もなく“黒”に飲み込まれた。
王都リュミエール。
剣と魔法と、
だいたいふざけた失敗でできたこの街に――
ついに、
“失敗じゃない魔法”が現れた。
しかも最悪な形で。
「……くそ」
走りながら、
エルクは吐き捨てる。
「これ、俺がどうにかする流れだよな?」
少しだけ考えて、
すぐに首を振った。
「いや無理だろ普通に!!」
それでも、
足は止まらない。
なぜなら。
黒いもやは、
もう“街全体”に広がり始めていたからだ。
王都リュミエールの空は、
相変わらず無駄にきらびやかだった。
誰かが作った「星を[漢字]ちょっとだけ[/漢字][ふりがな]かなり[/ふりがな]増やす魔法」
のせいで、
本来の星座はほぼ行方不明である。
「……増やすなよ、そこは」
エルクは自宅の窓から空を見上げて、
ため息をついた。
――そのとき。
ぴし。
「ん?」
ガラスに、
小さなヒビが入った。
風もない。
何かがぶつかったわけでもない。
それなのに、
ヒビはじわじわと広がっていく。
ぴし、ぴし、ぴし。
「え、ちょ、待ってこれ自然現象じゃないよな?」
次の瞬間、
ヒビの隙間から“黒いもや”がにじみ出した。
昼間に見たものと、
同じだった。
「……は?」
もやは重力を無視するように、
部屋の中へと流れ込んでくる。
空気が一瞬だけ、
音を失った。
外から聞こえていたはずの喧騒―
― 暴走する箒と鳩のバトル音すら、
すっと消える。
「おいおいおいおい、冗談だろ」
エルクは思わず後ずさる。
もやはゆっくりと床に落ち、
そこに――
黒い魔法陣を描いた。
「昼のやつと同じ……!」
だが、
今回は違う。
魔法陣は“ふざけていない”。
光らない。
回らない。
効果音も鳴らない。
ただ静かに、
そこに“ある”。
それが逆に、
異様だった。
「……こういうのは大体、触るなって相場が――」
ぼこっ。
「今なんか出た!?」
魔法陣の中央が、
わずかに盛り上がる。
次の瞬間。
にゅるり、
と。
黒い何かが顔を出した。
「いやいやいやいや何それ!?生き物!?魔法!?どっち!?」
それは形を持たない影のようで、
けれど確かに“こちらを見ていた”。
そして――
「……見つけた」
低い声が、
直接頭の中に響いた。
「うわ喋ったァ!?」
エルクは反射的に、近くにあった椅子を投げつけた。
バキィッ!
椅子は見事に空振りし、
そのまま壁に激突して壊れた。
「当たれよ!!せめて物理は通れ!!」
黒い存在はゆらりと揺れただけで、
何事もなかったかのようにそこにいる。
そして、
ゆっくりと“広がった”。
床から、
壁へ。
壁から、
天井へ。
じわじわと、
部屋を侵食していく。
「これ、完全に笑えないやつだろ……!」
エルクは歯を食いしばる。
昼間、
自分が言った言葉が頭をよぎる。
[斜体][太字][明朝体]――実用性のある魔法を、自分で作る[/明朝体][/太字][/斜体]
「……は、はは」
乾いた笑いが漏れる。
「タイミング最悪すぎるだろ……!」
黒いもやは、
すぐそこまで迫っていた。
逃げ場は、
ドアの向こうだけ。
「……でもまぁ」
エルクは一歩下がり、
ドアノブに手をかける。
「“何が起きても慣れてる”のが取り柄なんでね」
次の瞬間、
ドアを蹴り開けた。
バンッ!!
廊下に飛び出す。
――そして、
固まった。
「……は?」
廊下にも、
あった。
黒い魔法陣が、
ひとつ、
ふたつ、
みっつ。
そして。
そのすべてから、
同じ“もや”があふれ出していた。
遠くで、
誰かの叫び声が響く。
「ちょっと!これ新しい魔法!?全然面白くないんだけど!!」
「いやそこ評価基準おかしいだろ!!」
思わずツッコミながら、
エルクは走り出す。
だがその背後で。
自分の部屋が、
音もなく“黒”に飲み込まれた。
王都リュミエール。
剣と魔法と、
だいたいふざけた失敗でできたこの街に――
ついに、
“失敗じゃない魔法”が現れた。
しかも最悪な形で。
「……くそ」
走りながら、
エルクは吐き捨てる。
「これ、俺がどうにかする流れだよな?」
少しだけ考えて、
すぐに首を振った。
「いや無理だろ普通に!!」
それでも、
足は止まらない。
なぜなら。
黒いもやは、
もう“街全体”に広がり始めていたからだ。