あの冷たい表情がふわっと和らぐ瞬間が好きだった。
クスッと笑ってくれたら嬉しかった。
人の笑顔ってこんなに心温まるんだと思った。
それは君が俺に教えてくれた大事なもの。
「私の話、聞いてくれる?」
そう言って始まった榊さんの悩み事。
俺は静かに聞くことしかできなかった。
私は、小さい頃はこんなに無愛想ではなかった。
どちらかと言うと天真爛漫で外ではしゃぎまくっていた。でも、ある日から私は元気をなくしていった。
お母さんが、灯尽病になった。
治療は1年。
それだけのはずなのにお母さんは灯尽病の治療が合わなくて昏睡状態に入ってしまった。
そうなる人はまれにいるらしい。
それが、私のお母さん。
その日からお母さんの代わりは私だった。
お父さんは昔は売れていた小説家だったが、今は落ちこぼれ。家でひたすら売れない小説を書いている。
私のバイト代だけでは裕福な暮らしはできないので 、家はだんだん古くなっていく一方だった。
辛かった。正直に言うと、もうお母さんの代わりになりたくなかった。でも、妹や弟、お母さんには言えなかった。「みんな頑張っているから頑張らないと」という気持ちが私の中を支配していた。
高校生になって、友達も欲しかった。でも、お母さんの代わりをしないといけないから遊べない。それが申し訳なく思えて自分から孤立することを決めた。
案の定、上手くいった。これで、良かったはずだった。
でも、お金がだんだんなくなってきて
食べるものも食べられなくなってきた。
「お腹すいたぁー。」
と言う妹と弟に申し訳なかった。もっと働かなきゃ。
バイトを増やして、毎日働いた。
疲れのせいだろう。結果、私は円形脱毛症になった。
髪の毛が長いから隠せるけれど、隠し続けられる日々はそんなに長くないだろう。
「ほら。ここ。円形脱毛症で真っ白。」
榊さんが見せてくた頭には心に穴が空いたように白いところがあった。
「ありがとう。聞いてくれて。じゃあ、また明日ね。今日は本当にありがとう。」
そう言ってこの話を終わらせようとする榊さんに
少しイラついた。
「榊さん!!!」
俺の大声にびっくりしたのか肩をビクッと震わせた榊さん。驚きながらもこちらを向いてくれた。
「俺は、榊さんの大変さが分からない。大変そうだなと思うことしかできない。でも、榊さんは高校生。1人で悩む必要なんてない!話す友達がいないなら俺が相手になるし、俺が頼りにならないんだったら、俺の友達に相談してよ。榊さんは全部1人で抱え込むんじゃなくて頼ることをしなよ!誰かがきっと力になってくれるし、俺も力になるから!!」
榊さんの顔が夕日で見えない。でも、おそらく…。
「あ、りがとう……。」
泣いているのだろう。俺の言葉が伝わってほしい。
そう思った。
「また、明日ね。」
榊さんの頭をぽんとしてから俺は家に帰った。
「おはよ~。宮本。」
「おーっす。君嶋。目ぇおかしいぞ。大丈夫か?」
「いやぁ。寝不足。」
昨日榊さんとの会話が頭に残りすぎて寝れなかった。
とは、宮本に言えない。
「漫画かぁ?」
「おう。そんなとこー。」
「今日テストだぞ。」
「えぇ。マジぃ?」
うわ。テスト勉強してねーーーー。
そんな感じにいつものように話していたところ、
「おはよう。君嶋くん。」
後ろから凛とした声が聞こえた。
「お、おはようっ。榊さん。」
「麗奈でいいわよ。昨日はありがとう。」
「いやっ。全然大丈夫。」
急にグイグイ来られてびっくりしたけれど嬉しい。
榊さん……麗奈はそう言ってクスッと笑ったあと教壇に登って頭を下げた。
「皆さん。今まで冷たい態度を取ってしまってごめんなさい。実は、私はお母さんが入院していて貧乏で、バイトや家の仕事をしないといけないから友だちを作っても遊べないと思って冷たい態度を取っていました。本当にごめんなさい。」
深々と頭を下げて、麗奈は謝った。謝ることじゃないのに。とは思うけど、今までの麗奈と比べるとこちらのほうが良いのかもしれない。
「俺は、別にいいけどなぁ。これから榊さんとたくさん話せるんだろ?てか榊さんとみんな話したいし。」
沈黙のなか第一声をはなったのは宮本だった。
それにみんな頷くように、
「私たちも事情知らずに避けてごめんね。」
「俺らも話したいし大丈夫だよ。」
そんな温かい声が教室いっぱいになった。
良かった。麗奈がこれから悩みを抱えないよう、俺も麗奈と仲良くしよう。
教壇にいた麗奈と目があい、
2人で笑ったのは俺らだけの秘密。
悩み事なんていくらでもある。
でも、抱えなくていい。
何のために自分以外の人がたくさんいるのか。
悩み事をつくりだし、その悩み事を解決して
大人になるためだと、俺は思う。
だから、悩み事は人に話そう。
クスッと笑ってくれたら嬉しかった。
人の笑顔ってこんなに心温まるんだと思った。
それは君が俺に教えてくれた大事なもの。
「私の話、聞いてくれる?」
そう言って始まった榊さんの悩み事。
俺は静かに聞くことしかできなかった。
私は、小さい頃はこんなに無愛想ではなかった。
どちらかと言うと天真爛漫で外ではしゃぎまくっていた。でも、ある日から私は元気をなくしていった。
お母さんが、灯尽病になった。
治療は1年。
それだけのはずなのにお母さんは灯尽病の治療が合わなくて昏睡状態に入ってしまった。
そうなる人はまれにいるらしい。
それが、私のお母さん。
その日からお母さんの代わりは私だった。
お父さんは昔は売れていた小説家だったが、今は落ちこぼれ。家でひたすら売れない小説を書いている。
私のバイト代だけでは裕福な暮らしはできないので 、家はだんだん古くなっていく一方だった。
辛かった。正直に言うと、もうお母さんの代わりになりたくなかった。でも、妹や弟、お母さんには言えなかった。「みんな頑張っているから頑張らないと」という気持ちが私の中を支配していた。
高校生になって、友達も欲しかった。でも、お母さんの代わりをしないといけないから遊べない。それが申し訳なく思えて自分から孤立することを決めた。
案の定、上手くいった。これで、良かったはずだった。
でも、お金がだんだんなくなってきて
食べるものも食べられなくなってきた。
「お腹すいたぁー。」
と言う妹と弟に申し訳なかった。もっと働かなきゃ。
バイトを増やして、毎日働いた。
疲れのせいだろう。結果、私は円形脱毛症になった。
髪の毛が長いから隠せるけれど、隠し続けられる日々はそんなに長くないだろう。
「ほら。ここ。円形脱毛症で真っ白。」
榊さんが見せてくた頭には心に穴が空いたように白いところがあった。
「ありがとう。聞いてくれて。じゃあ、また明日ね。今日は本当にありがとう。」
そう言ってこの話を終わらせようとする榊さんに
少しイラついた。
「榊さん!!!」
俺の大声にびっくりしたのか肩をビクッと震わせた榊さん。驚きながらもこちらを向いてくれた。
「俺は、榊さんの大変さが分からない。大変そうだなと思うことしかできない。でも、榊さんは高校生。1人で悩む必要なんてない!話す友達がいないなら俺が相手になるし、俺が頼りにならないんだったら、俺の友達に相談してよ。榊さんは全部1人で抱え込むんじゃなくて頼ることをしなよ!誰かがきっと力になってくれるし、俺も力になるから!!」
榊さんの顔が夕日で見えない。でも、おそらく…。
「あ、りがとう……。」
泣いているのだろう。俺の言葉が伝わってほしい。
そう思った。
「また、明日ね。」
榊さんの頭をぽんとしてから俺は家に帰った。
「おはよ~。宮本。」
「おーっす。君嶋。目ぇおかしいぞ。大丈夫か?」
「いやぁ。寝不足。」
昨日榊さんとの会話が頭に残りすぎて寝れなかった。
とは、宮本に言えない。
「漫画かぁ?」
「おう。そんなとこー。」
「今日テストだぞ。」
「えぇ。マジぃ?」
うわ。テスト勉強してねーーーー。
そんな感じにいつものように話していたところ、
「おはよう。君嶋くん。」
後ろから凛とした声が聞こえた。
「お、おはようっ。榊さん。」
「麗奈でいいわよ。昨日はありがとう。」
「いやっ。全然大丈夫。」
急にグイグイ来られてびっくりしたけれど嬉しい。
榊さん……麗奈はそう言ってクスッと笑ったあと教壇に登って頭を下げた。
「皆さん。今まで冷たい態度を取ってしまってごめんなさい。実は、私はお母さんが入院していて貧乏で、バイトや家の仕事をしないといけないから友だちを作っても遊べないと思って冷たい態度を取っていました。本当にごめんなさい。」
深々と頭を下げて、麗奈は謝った。謝ることじゃないのに。とは思うけど、今までの麗奈と比べるとこちらのほうが良いのかもしれない。
「俺は、別にいいけどなぁ。これから榊さんとたくさん話せるんだろ?てか榊さんとみんな話したいし。」
沈黙のなか第一声をはなったのは宮本だった。
それにみんな頷くように、
「私たちも事情知らずに避けてごめんね。」
「俺らも話したいし大丈夫だよ。」
そんな温かい声が教室いっぱいになった。
良かった。麗奈がこれから悩みを抱えないよう、俺も麗奈と仲良くしよう。
教壇にいた麗奈と目があい、
2人で笑ったのは俺らだけの秘密。
悩み事なんていくらでもある。
でも、抱えなくていい。
何のために自分以外の人がたくさんいるのか。
悩み事をつくりだし、その悩み事を解決して
大人になるためだと、俺は思う。
だから、悩み事は人に話そう。