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・パロディなので原作と違いが出てくる可能性があります。
獅子奮迅
弱い。弱い弱い弱い。雑魚。戦う価値無。
僕がバトルを終えた後に毎度思い浮かべる感想はそればかりだ。
人状態になれるようになってからすぐに混沌と活気の溢れるこの街に上[漢字]京[/漢字][ふりがな]バンカラ[/ふりがな]し,
ここに来てから僕は幼いころからあこがれていたバトルにすぐに没頭し、ただ勝つためだけに自分の時間を全て注いだ。
その結果、日々のバトルには勝利しか訪れず、最近は負けの感触など忘れてしまっている。
溜まっていく金、上がっていくレベル、毎度上がる歓声。
気づけばなっていたバンカラ八傑も周りは自分以下でもはや楽しませてくれるやつはいないと思っていた。
あれほど好きで血反吐吐くほど努力したのに、ここまでつまらくなるとはガキの時の僕も思いもしなかっただろうに。
自分で自分の幼少期を哀れみながらため息を一つ、また一つとしながらロビーを出た。
「なぁ。次バンカラ八傑のワイヤーグラスがバトルすんだってよ‼見るっきゃねーだろ‼」
「あぁ。なんたってバンカラ八傑の«獅子奮迅»だからなっ‼さっさといこーぜ。」
バンカラ八傑のワイヤーグラス。たしかバンカラ八傑の中で俺が唯一戦ったことのないやつだ。
タイミングを狙っていたが、やはり彼も人気の[漢字]選手[/漢字][ふりがな]プレイヤー[/ふりがな]なのか。
興味深い………。彼と戦うまでに下調べでもするか。
俺はそう思いロビーへ出ていく足を再度ロビーへむけ、ロビーへ入った。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
思いもしなかった。まさか自分がここまでとっさに思いついたままに行動するとは。
まあ。それもそのはず今からこのバトルをするワイヤーグラスという男は、バンカラ八傑の中でもとびぬけて格の違う戦いをするという噂を耳にすることは多々ある。それもあり、彼のバトルを一度はみて勝負を挑みたいとずっと思っていた。
「ワイヤーグラスくんまだかなぁ~」
「バンカラ八傑ってイケメン多いよね。そこらのアイドルよりずっと顔がいいっていうか。」
「ワイヤーグラスくんは特にいいよね。最近強いって話題のエイトくんもよくない?」
「それな~」
何やら見に来ている人の中には彼の観戦というよりは«鑑賞»目当てのヤツもいるらしい。
その話のなかで自分の名前が出てくるとは思わず、ちょっとうれしいような気持ちだがそれを出すまいとちょっと顔をそらした。
すると会場は暗くなり、あたり一面、歓声が上がりこむ。
「さぁさぁお立会い~~~‼」
威勢よく響いた声の主、すりみ連合の「フウカ」と、
「おぬしら~~~ァ盛り上がっとるかのぉう‼」
迫力と根のある力強い声の「ウツホ」、
「えーい、エ~イ!」
と何を言ってるのかわからないがとにかくでかい「マンタロー」の三人が会場内のステージに登場した瞬間、会場の熱気がさらに上がった。
「今回の戦いはなんと、バンカラ八傑同士のあつ~いあついタイマンやでぇ~‼」
その一言にまた会場も困惑の歓声をあげる。
タイマン?バトルではないのか?八傑同士のタイマンなんてとても見れたもんじゃないし、ましてやあのワイヤーグラスのタイマンって。そりゃここまで立派な会場で開催されるな。納得がいく。
(※タイマン…バンカラの若者達は、一対一の戦いをタイマンというぞ。普通のバトルとは違い、ただひたすらに倒しあうルールだ。)
「なんじゃとぉ⁉フウカ、どいつが戦うんじゃ⁉はよぅおしえるのじゃぁ‼」
「えいえーーい!」
「そいじゃ、紹介しましょか。今回はこの二人のタイマンやぁぁ‼」
すると会場には巨大すぎるスクリーンにバンカラ八傑であるデメニギスの顔と、例のワイヤーグラスの顔が表示される。
その瞬間後ろのワイヤーグラス鑑賞組が黄色い声をあげた。これは少しめんどくさくなりそうだ。
「さぁ早速二人の登場じゃぁ!バンカラ八傑デメニギス。ロングブラスター使い!的確で冷静な判断とエイムを持ち合わせ、爆風が当たったら死も同然!みつかったら危ないのじゃ!」
ウツホのコメントと共に堂々と歩くデメニギス。こいつは戦ってみたが個人的には面白くなかった。性格の割には無駄に注意深すぎて積極的に仕掛けに来なかった。癖なのか?
「そして、お相手はバンカラ八傑のワイヤーグラス!プライムシューター使い!とんでもない身体能力に尋常やない俊敏さとエイムを兼ね備えてはって、スペシャルウェポンのカニタンクは鬼に金棒ってくらいの圧倒的な命中率やで‼」
お目当てのワイヤーグラスの登場だ。ギラギラに光らせた強さに満ち溢れた瞳、鋭く尖ったカラストンビで満面の笑みを浮かばせ、覇気が伝わってくるような雰囲気をかもしだしながら歩く彼に会場中はくぎ付けになった。
これがバンカラ八傑の«獅子奮迅»………。
鼓動の音がドンドン大きくなっていく。デメニギスとは更に上のオーラがある。彼こそが本当に僕を楽しませる唯一の一人なのでは。少しの期待を抱き、開戦までただひたすらに彼を見つめ続けた。
「ルールは3分間‼お互いに睨み合い、切磋琢磨するタイマンバトル。スペシャルウェポンとサブウェポンの使用は禁止じゃ!」
「それじゃお二人の壮大で[漢字]混沌[/漢字][ふりがな]カオス[/ふりがな]のバトルの始まり始まり~‼」
互いに睨みあう二人。その光景があまりにも迫力がすごいせいか、騒がしかった会場もとうとう静まり返った。
【Ready?】
【Go‼】
始まった。タイマン専用のステージだろうか。あまり見慣れないステージだ。障害物がそこそこあるが、かといって動きにくいわけでもなく、ここまでのレベルの二人がやりあったらそこそこすごい攻略をしそうだ。
早速前へ来るのはやはりワイヤーグラス。自分のペースでこの3分間を進めようとするのが彼の基本的な戦法だ。
と思ったが、なんとデメニギスが彼の背後に迫ってきていた。彼はワイヤーグラスより先回りしたというのか。なぜだ⁉積極的な立ち回りをしない彼にしてはかなりバグった戦法じゃないか。だが相手が悪かった。そういうしかない結果になってしまった。彼はすぐさま長距離のバク転を決め、すぐさま体制を整えそのままキルを決めてしまった。美しく決まった。
ただデメニギスもバンカラ八傑だ。バカではない。うまいこと立ち回ろうと障害物を使ったり、彼の射程距離を不利にするが彼の最大の武器である身体能力がそれを全てノックアウトしてしまう。
倒すたびに獲物を捕まえた獣のような凶暴な笑みを浮かべ、いい顔で気持ちよさそうに超技を決めていく。
華麗に決めるその技一つ一つが僕の抱いた期待を大きくしていく。これがバンカラの獅子奮迅。彼こそが僕を楽しませてくれる存在だ。確信した。
3分間という時間はあっという間だった。
結果としてはワイヤーグラスは彼に1キルも入れさせることなく、彼の26キルという圧倒的な結果で彼の勝利に終わってしまった。
なんだよ。いるじゃないか。こんなに強いやつ今すぐにでも戦いたい。その気持ちがただひたすらにでかくなっていくとき、彼がインタビューを受けさせられていた。
「俺にはまだ戦っていない八傑の奴がいる。最近強いともてはやされている『エイト』という野郎だ。そいつの戦いは見させてもらっている。もう戦いたくて仕方がねえ。もしこの会場にエイトがいるというのなら今言っておく。次あったら俺とお前がタイマンする。それまでに精々俺を楽しませてくれるようになっとけよ。」
彼がそう言い終えたあと、たちまち会場に歓声があがった。
へぇ。「楽しませてくれ」、ねえ。君までもほかのつまらない八傑のやつらと一緒だったら僕はどれほどこのバトルの世界を恨むだろう。
そのくらい君に期待してるんだ。ワイヤーグラス。この勝負。必ず勝たせてもらう………!
僕は心でそうつぶやき、そっと微笑んだ。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
はぁ。ロビーって落ち着く。第二の実家にしてしまおうか。そう思ってしまうほどこの場所が好きだ。
普通の人ならこんな無駄に設備のいい建物なんか落ち着かないかもだけど、僕にとってはかなり居心地の良い場所だ。
特にこのロッカーエリアはほぼ自分の私物置き場だから自分の家っつったって過言ではないだろう。
そう色々考えながら僕はロビーに入ってすぐのロッカーエリアに向かった。
あんなダイナミックにタイマンを仕掛けられてから5日目。僕はもう相当彼の下調べもした。だがこれといった新しい情報がなかったので、そこまで調べた意味がなかった。まぁ。練習は死ぬほどしてる。いつあってもとりあえず大丈夫だ。
この思想がフラグだったのだろーか。
真隣にそのタイマンを仕掛けてきた本人がいた。
「よぉ。バンカラ八傑のエイトくんよぉ♡」
「お前、この前のタイマンの試合、見に来てたらしいな。」
彼がお見通しと言わんばかりにニタリと怪しい笑みを浮かべた。
「君は噂通りスキがないね。でもまあ。僕も君以外このバンカラ八傑には正直呆れている。」
「なんだ。弱いといいたいのか?」
「ごもっとも。君さえたおせば僕もバンカラ八傑のトップになるんだよ。」
「ほぉう。じゃあ約束どおり、例のタイマン、やろーじゃねえか。」
「望むところだ。」
僕がうなずくと彼は満足そうに笑った。だがすぐに表情を少し冷ややかにしてこういった。
「誰が弱いのかはっきりさせてやる。調子にのるな。バンカラ八傑は甘くないぞ。」
「君は何が言いたいんだ。弱者を自分と同等のものとして扱う人ではないだろう。君は。」
「そうだ。だがバンカラ八傑はそんなお前のいう低レベルな弱者の塊ではない。」
そういいながらロビーのポットへ入り、タイマン部屋を作った。
「お前はああいう会場でするのは好きじゃなさそうだな。いいだろう。そのまま普通のバトルにしてやる。」
「いいのかい?君、噂ではかなり恐れられているみたいだけど。獣の王も気は使えるんだね。」
僕が少しこばかにすると彼は「おえー」っとでも言うように舌を出して白目をむいて煽るような表情をしてきた。
「ルールは三分間。スペシャル、サブウェポンの使用は禁止。メインウェポンのみの対戦だ。」
「承知した。」
「覚悟はいいな?」
「ああ。」
【Ready?】
【Go‼】
はじまった。僕の96ガロンと彼のプライムシューターはどちらも長射程シューターに部類されるものだ。
つまりはほぼほぼ条件は同じ。互いの実力がはっきりと試される戦いだ。この試合。なかなか最高だ。
いざたたかってみるといけそうなばめんもかなりあった。だがこれはなぜだ。すべてがなにかのルールに歯向かうように無効になる。彼の圧倒的な動き、技、そして何としてもこの覇気だ。
絶対勝つ。絶対に撃たせない。彼から何も言われなくても彼のその覇気に満ち溢れた瞳からはそんな感情が読み取れる。
いろいろと足りていなかった。勝てるなんて大嘘だった。だって彼の戦い方に欠点など見当たらないのだから。
これがバンカラの獅子奮迅なのだ。彼は、強い。
「お前。弱いじゃねぇか。何が話題の八傑の一人だ。」
「そりゃどうも………うっ…。っく…。君は強いね。何にでも勝る強みと覇気を持ち合わせている。…っはぅ」
するとバンカラの獅子奮迅は苦笑し倒れている僕に近づき、そっと僕のヘッドフォンを外した。
すると耳元というかなりの至近距離でこうささやいた。
「だがな。つまらなくなかった。おもしろかった。お前との戦いにはやりがいを感じた。決めた。俺についてこい。俺たち上位4人のチームを結成する。新バンカラクラスだ。お前が気にいった。」
やりがいを感じた…。気にいっ、た。
彼のささやいた耳からぶわぁっと熱が伝わっていき、気づけばゆでだこ状態になってしまった。
き、気にいった、って。
「も、もちろん。そ、そーだ。連絡先。連絡先交換しよ。」
「あぁ。お前そんなすぐに賛同してくれるとはな。」
彼との連絡先交換を通知する音が流れ、すぐさまナマコフォンをポケットにしまった。
「こ、これからはどうぞよろしく‼わ、ワイヤーグラス。」
「おう。ともに仲間として高みを目指していこう。」
バンカラ八傑のトップになるなんて夢のまた夢だった。でもこうして急に仲間になりそして、ちょっぴり友達とは違う何かができて、僕のバトルづけの生活が前よりちょっぴり、期待できそうです。
そしていつかは、また彼をたおしてみせる。
でもまあ。彼のとなりには居続けたいなと、なんとなく思い始めているんだけど…。
🎧🐙おまけ👓🦑~その後のエイト~
ワイヤーグラスに、チームメンバーに誘われてしまった。
『気にいった。』
ワイヤーグラスのあの耳元にささやいた声を思い出すだけで、体温が一気に上がっていく。
「なんなんだ。彼は最高の敵じゃなかったのかよ。何変な妄想してんだ…。」
僕は脳内で自分自身を責めつつベッドでうずくまり、頭まで掛け布団を被った。
僕を倒した後のあの哀れむ笑み、敵を倒すたびに見せる凶暴なカラストンビ、耳元できこえる低音に響くささやき声、覇気に満ち溢れたあの強さと妖美さをまとった怪しげに光る青い瞳。
自分の中で勝手にあふれ出る鮮明な記憶によってただひたすらに体温が上がり続ける。
こんな気持ちいつぶりだろう。こんなのって僕が中学に入りたてとかそのくらいじゃないか?たしかクラスメイトの女子に…って僕、まさか彼にもうそんな気持ちを……⁉
「ああっ‼もう!」
恥ずかしさをごまかすように少し喚いた僕はナマコフォンに手を伸ばし、気持ちをそらすためにネットサーフィンをした。しばらくして眠気が自然ときて、僕はそのまま眠りに落ちた。
~ワイヤーグラスのその後~
バンカラの夜はただひたすらに騒がしく、非日常感をまとった時だ。
仕事に追われ、この時間だけバカ騒ぎする壊れたやつ、現実逃避の為か少しでも大人になった気分を味わいたいのかうろついたり遊んだりする中学生くらいのガキ、仕事帰りに居酒屋に足を踏み入れる大人、裏路地に溜まるいかにも頭がイッてそうな若者。
こんな壊れた夜もあるこの街は、客観的に見ればばかげているようだが、そんなところも俺は好きだと思っている。
今日はそういえばイレギュラーな一日ではあったな。新バンカラクラスに勧誘したエイトとかいうやつ。
いや、本当にあいつは「気にいった」。
喋ればわかるが、相当なクソ真面目。それでいて愛らしい整った顔立ち。必死に戦う真剣なまなざし。
何もしたことがないのだろうな。俺があいつのヘッドフォンを外した瞬間、心の底から驚いたような顔をした。そのあと俺が耳元で話しかけると、ものすごい勢いで顔を赤らめていた。
あれだけでことでこの反応……。これより上をすればあいつはどんな反応をするんだろうか…。
ここまで気に入る自分にも心底驚いてしまうな。実に楽しみだ。エイト…。
僕がバトルを終えた後に毎度思い浮かべる感想はそればかりだ。
人状態になれるようになってからすぐに混沌と活気の溢れるこの街に上[漢字]京[/漢字][ふりがな]バンカラ[/ふりがな]し,
ここに来てから僕は幼いころからあこがれていたバトルにすぐに没頭し、ただ勝つためだけに自分の時間を全て注いだ。
その結果、日々のバトルには勝利しか訪れず、最近は負けの感触など忘れてしまっている。
溜まっていく金、上がっていくレベル、毎度上がる歓声。
気づけばなっていたバンカラ八傑も周りは自分以下でもはや楽しませてくれるやつはいないと思っていた。
あれほど好きで血反吐吐くほど努力したのに、ここまでつまらくなるとはガキの時の僕も思いもしなかっただろうに。
自分で自分の幼少期を哀れみながらため息を一つ、また一つとしながらロビーを出た。
「なぁ。次バンカラ八傑のワイヤーグラスがバトルすんだってよ‼見るっきゃねーだろ‼」
「あぁ。なんたってバンカラ八傑の«獅子奮迅»だからなっ‼さっさといこーぜ。」
バンカラ八傑のワイヤーグラス。たしかバンカラ八傑の中で俺が唯一戦ったことのないやつだ。
タイミングを狙っていたが、やはり彼も人気の[漢字]選手[/漢字][ふりがな]プレイヤー[/ふりがな]なのか。
興味深い………。彼と戦うまでに下調べでもするか。
俺はそう思いロビーへ出ていく足を再度ロビーへむけ、ロビーへ入った。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
思いもしなかった。まさか自分がここまでとっさに思いついたままに行動するとは。
まあ。それもそのはず今からこのバトルをするワイヤーグラスという男は、バンカラ八傑の中でもとびぬけて格の違う戦いをするという噂を耳にすることは多々ある。それもあり、彼のバトルを一度はみて勝負を挑みたいとずっと思っていた。
「ワイヤーグラスくんまだかなぁ~」
「バンカラ八傑ってイケメン多いよね。そこらのアイドルよりずっと顔がいいっていうか。」
「ワイヤーグラスくんは特にいいよね。最近強いって話題のエイトくんもよくない?」
「それな~」
何やら見に来ている人の中には彼の観戦というよりは«鑑賞»目当てのヤツもいるらしい。
その話のなかで自分の名前が出てくるとは思わず、ちょっとうれしいような気持ちだがそれを出すまいとちょっと顔をそらした。
すると会場は暗くなり、あたり一面、歓声が上がりこむ。
「さぁさぁお立会い~~~‼」
威勢よく響いた声の主、すりみ連合の「フウカ」と、
「おぬしら~~~ァ盛り上がっとるかのぉう‼」
迫力と根のある力強い声の「ウツホ」、
「えーい、エ~イ!」
と何を言ってるのかわからないがとにかくでかい「マンタロー」の三人が会場内のステージに登場した瞬間、会場の熱気がさらに上がった。
「今回の戦いはなんと、バンカラ八傑同士のあつ~いあついタイマンやでぇ~‼」
その一言にまた会場も困惑の歓声をあげる。
タイマン?バトルではないのか?八傑同士のタイマンなんてとても見れたもんじゃないし、ましてやあのワイヤーグラスのタイマンって。そりゃここまで立派な会場で開催されるな。納得がいく。
(※タイマン…バンカラの若者達は、一対一の戦いをタイマンというぞ。普通のバトルとは違い、ただひたすらに倒しあうルールだ。)
「なんじゃとぉ⁉フウカ、どいつが戦うんじゃ⁉はよぅおしえるのじゃぁ‼」
「えいえーーい!」
「そいじゃ、紹介しましょか。今回はこの二人のタイマンやぁぁ‼」
すると会場には巨大すぎるスクリーンにバンカラ八傑であるデメニギスの顔と、例のワイヤーグラスの顔が表示される。
その瞬間後ろのワイヤーグラス鑑賞組が黄色い声をあげた。これは少しめんどくさくなりそうだ。
「さぁ早速二人の登場じゃぁ!バンカラ八傑デメニギス。ロングブラスター使い!的確で冷静な判断とエイムを持ち合わせ、爆風が当たったら死も同然!みつかったら危ないのじゃ!」
ウツホのコメントと共に堂々と歩くデメニギス。こいつは戦ってみたが個人的には面白くなかった。性格の割には無駄に注意深すぎて積極的に仕掛けに来なかった。癖なのか?
「そして、お相手はバンカラ八傑のワイヤーグラス!プライムシューター使い!とんでもない身体能力に尋常やない俊敏さとエイムを兼ね備えてはって、スペシャルウェポンのカニタンクは鬼に金棒ってくらいの圧倒的な命中率やで‼」
お目当てのワイヤーグラスの登場だ。ギラギラに光らせた強さに満ち溢れた瞳、鋭く尖ったカラストンビで満面の笑みを浮かばせ、覇気が伝わってくるような雰囲気をかもしだしながら歩く彼に会場中はくぎ付けになった。
これがバンカラ八傑の«獅子奮迅»………。
鼓動の音がドンドン大きくなっていく。デメニギスとは更に上のオーラがある。彼こそが本当に僕を楽しませる唯一の一人なのでは。少しの期待を抱き、開戦までただひたすらに彼を見つめ続けた。
「ルールは3分間‼お互いに睨み合い、切磋琢磨するタイマンバトル。スペシャルウェポンとサブウェポンの使用は禁止じゃ!」
「それじゃお二人の壮大で[漢字]混沌[/漢字][ふりがな]カオス[/ふりがな]のバトルの始まり始まり~‼」
互いに睨みあう二人。その光景があまりにも迫力がすごいせいか、騒がしかった会場もとうとう静まり返った。
【Ready?】
【Go‼】
始まった。タイマン専用のステージだろうか。あまり見慣れないステージだ。障害物がそこそこあるが、かといって動きにくいわけでもなく、ここまでのレベルの二人がやりあったらそこそこすごい攻略をしそうだ。
早速前へ来るのはやはりワイヤーグラス。自分のペースでこの3分間を進めようとするのが彼の基本的な戦法だ。
と思ったが、なんとデメニギスが彼の背後に迫ってきていた。彼はワイヤーグラスより先回りしたというのか。なぜだ⁉積極的な立ち回りをしない彼にしてはかなりバグった戦法じゃないか。だが相手が悪かった。そういうしかない結果になってしまった。彼はすぐさま長距離のバク転を決め、すぐさま体制を整えそのままキルを決めてしまった。美しく決まった。
ただデメニギスもバンカラ八傑だ。バカではない。うまいこと立ち回ろうと障害物を使ったり、彼の射程距離を不利にするが彼の最大の武器である身体能力がそれを全てノックアウトしてしまう。
倒すたびに獲物を捕まえた獣のような凶暴な笑みを浮かべ、いい顔で気持ちよさそうに超技を決めていく。
華麗に決めるその技一つ一つが僕の抱いた期待を大きくしていく。これがバンカラの獅子奮迅。彼こそが僕を楽しませてくれる存在だ。確信した。
3分間という時間はあっという間だった。
結果としてはワイヤーグラスは彼に1キルも入れさせることなく、彼の26キルという圧倒的な結果で彼の勝利に終わってしまった。
なんだよ。いるじゃないか。こんなに強いやつ今すぐにでも戦いたい。その気持ちがただひたすらにでかくなっていくとき、彼がインタビューを受けさせられていた。
「俺にはまだ戦っていない八傑の奴がいる。最近強いともてはやされている『エイト』という野郎だ。そいつの戦いは見させてもらっている。もう戦いたくて仕方がねえ。もしこの会場にエイトがいるというのなら今言っておく。次あったら俺とお前がタイマンする。それまでに精々俺を楽しませてくれるようになっとけよ。」
彼がそう言い終えたあと、たちまち会場に歓声があがった。
へぇ。「楽しませてくれ」、ねえ。君までもほかのつまらない八傑のやつらと一緒だったら僕はどれほどこのバトルの世界を恨むだろう。
そのくらい君に期待してるんだ。ワイヤーグラス。この勝負。必ず勝たせてもらう………!
僕は心でそうつぶやき、そっと微笑んだ。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
はぁ。ロビーって落ち着く。第二の実家にしてしまおうか。そう思ってしまうほどこの場所が好きだ。
普通の人ならこんな無駄に設備のいい建物なんか落ち着かないかもだけど、僕にとってはかなり居心地の良い場所だ。
特にこのロッカーエリアはほぼ自分の私物置き場だから自分の家っつったって過言ではないだろう。
そう色々考えながら僕はロビーに入ってすぐのロッカーエリアに向かった。
あんなダイナミックにタイマンを仕掛けられてから5日目。僕はもう相当彼の下調べもした。だがこれといった新しい情報がなかったので、そこまで調べた意味がなかった。まぁ。練習は死ぬほどしてる。いつあってもとりあえず大丈夫だ。
この思想がフラグだったのだろーか。
真隣にそのタイマンを仕掛けてきた本人がいた。
「よぉ。バンカラ八傑のエイトくんよぉ♡」
「お前、この前のタイマンの試合、見に来てたらしいな。」
彼がお見通しと言わんばかりにニタリと怪しい笑みを浮かべた。
「君は噂通りスキがないね。でもまあ。僕も君以外このバンカラ八傑には正直呆れている。」
「なんだ。弱いといいたいのか?」
「ごもっとも。君さえたおせば僕もバンカラ八傑のトップになるんだよ。」
「ほぉう。じゃあ約束どおり、例のタイマン、やろーじゃねえか。」
「望むところだ。」
僕がうなずくと彼は満足そうに笑った。だがすぐに表情を少し冷ややかにしてこういった。
「誰が弱いのかはっきりさせてやる。調子にのるな。バンカラ八傑は甘くないぞ。」
「君は何が言いたいんだ。弱者を自分と同等のものとして扱う人ではないだろう。君は。」
「そうだ。だがバンカラ八傑はそんなお前のいう低レベルな弱者の塊ではない。」
そういいながらロビーのポットへ入り、タイマン部屋を作った。
「お前はああいう会場でするのは好きじゃなさそうだな。いいだろう。そのまま普通のバトルにしてやる。」
「いいのかい?君、噂ではかなり恐れられているみたいだけど。獣の王も気は使えるんだね。」
僕が少しこばかにすると彼は「おえー」っとでも言うように舌を出して白目をむいて煽るような表情をしてきた。
「ルールは三分間。スペシャル、サブウェポンの使用は禁止。メインウェポンのみの対戦だ。」
「承知した。」
「覚悟はいいな?」
「ああ。」
【Ready?】
【Go‼】
はじまった。僕の96ガロンと彼のプライムシューターはどちらも長射程シューターに部類されるものだ。
つまりはほぼほぼ条件は同じ。互いの実力がはっきりと試される戦いだ。この試合。なかなか最高だ。
いざたたかってみるといけそうなばめんもかなりあった。だがこれはなぜだ。すべてがなにかのルールに歯向かうように無効になる。彼の圧倒的な動き、技、そして何としてもこの覇気だ。
絶対勝つ。絶対に撃たせない。彼から何も言われなくても彼のその覇気に満ち溢れた瞳からはそんな感情が読み取れる。
いろいろと足りていなかった。勝てるなんて大嘘だった。だって彼の戦い方に欠点など見当たらないのだから。
これがバンカラの獅子奮迅なのだ。彼は、強い。
「お前。弱いじゃねぇか。何が話題の八傑の一人だ。」
「そりゃどうも………うっ…。っく…。君は強いね。何にでも勝る強みと覇気を持ち合わせている。…っはぅ」
するとバンカラの獅子奮迅は苦笑し倒れている僕に近づき、そっと僕のヘッドフォンを外した。
すると耳元というかなりの至近距離でこうささやいた。
「だがな。つまらなくなかった。おもしろかった。お前との戦いにはやりがいを感じた。決めた。俺についてこい。俺たち上位4人のチームを結成する。新バンカラクラスだ。お前が気にいった。」
やりがいを感じた…。気にいっ、た。
彼のささやいた耳からぶわぁっと熱が伝わっていき、気づけばゆでだこ状態になってしまった。
き、気にいった、って。
「も、もちろん。そ、そーだ。連絡先。連絡先交換しよ。」
「あぁ。お前そんなすぐに賛同してくれるとはな。」
彼との連絡先交換を通知する音が流れ、すぐさまナマコフォンをポケットにしまった。
「こ、これからはどうぞよろしく‼わ、ワイヤーグラス。」
「おう。ともに仲間として高みを目指していこう。」
バンカラ八傑のトップになるなんて夢のまた夢だった。でもこうして急に仲間になりそして、ちょっぴり友達とは違う何かができて、僕のバトルづけの生活が前よりちょっぴり、期待できそうです。
そしていつかは、また彼をたおしてみせる。
でもまあ。彼のとなりには居続けたいなと、なんとなく思い始めているんだけど…。
🎧🐙おまけ👓🦑~その後のエイト~
ワイヤーグラスに、チームメンバーに誘われてしまった。
『気にいった。』
ワイヤーグラスのあの耳元にささやいた声を思い出すだけで、体温が一気に上がっていく。
「なんなんだ。彼は最高の敵じゃなかったのかよ。何変な妄想してんだ…。」
僕は脳内で自分自身を責めつつベッドでうずくまり、頭まで掛け布団を被った。
僕を倒した後のあの哀れむ笑み、敵を倒すたびに見せる凶暴なカラストンビ、耳元できこえる低音に響くささやき声、覇気に満ち溢れたあの強さと妖美さをまとった怪しげに光る青い瞳。
自分の中で勝手にあふれ出る鮮明な記憶によってただひたすらに体温が上がり続ける。
こんな気持ちいつぶりだろう。こんなのって僕が中学に入りたてとかそのくらいじゃないか?たしかクラスメイトの女子に…って僕、まさか彼にもうそんな気持ちを……⁉
「ああっ‼もう!」
恥ずかしさをごまかすように少し喚いた僕はナマコフォンに手を伸ばし、気持ちをそらすためにネットサーフィンをした。しばらくして眠気が自然ときて、僕はそのまま眠りに落ちた。
~ワイヤーグラスのその後~
バンカラの夜はただひたすらに騒がしく、非日常感をまとった時だ。
仕事に追われ、この時間だけバカ騒ぎする壊れたやつ、現実逃避の為か少しでも大人になった気分を味わいたいのかうろついたり遊んだりする中学生くらいのガキ、仕事帰りに居酒屋に足を踏み入れる大人、裏路地に溜まるいかにも頭がイッてそうな若者。
こんな壊れた夜もあるこの街は、客観的に見ればばかげているようだが、そんなところも俺は好きだと思っている。
今日はそういえばイレギュラーな一日ではあったな。新バンカラクラスに勧誘したエイトとかいうやつ。
いや、本当にあいつは「気にいった」。
喋ればわかるが、相当なクソ真面目。それでいて愛らしい整った顔立ち。必死に戦う真剣なまなざし。
何もしたことがないのだろうな。俺があいつのヘッドフォンを外した瞬間、心の底から驚いたような顔をした。そのあと俺が耳元で話しかけると、ものすごい勢いで顔を赤らめていた。
あれだけでことでこの反応……。これより上をすればあいつはどんな反応をするんだろうか…。
ここまで気に入る自分にも心底驚いてしまうな。実に楽しみだ。エイト…。
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