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莫迦長長編作品となっています!
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種も仕掛けもございます!
七月にもなればいくら寒がりの俺でももう夏服になっていた。
外ではセミが鳴きだし、教室ではクーラーの音が絶え間なく耳に入る。
あと五分程度で六限が終わり、部活にも入っていない俺は部活でお疲れの皆様の前を南風と共に颯爽と駆け抜けて帰路へつけるわけだ。
でもあと五分ピッタリ尺が稼げる手品は生憎持ち合わせていない。
だから机の下で手遊びをしながらボーっと授業が終わるのを待っていた。
キーンコーンカーンコーン
小学校とは違う今は十分すぎる暖かみがないチャイムが聞こえると、クラスの奴らはもう授業道具を片している。
無事に六限が終わると俺は早速手品の準備に取り掛かった。
昼休みと帰り支度の空き時間に俺はちょっとした手品ショーをやる。
客は毎日少なくとも一人。
時たまそいつの友人が見に来て
「すごーい!」
「何で何で?」
だとか他の男子がいるからか猫撫で声で囃し立てる。
俺はそんなのも悪くないとは思う。
ただし,そんなことを言っても、想像と現実は違う。
今日の客は小鹿名小波ただ一人だ。
小波は髪を肩までおろし、肌は色黒の俺に比べたら白く、目元も花魁のような釣目だ。
俺とは全く対極の存在。
例えるなら俺が北極にいるなら小波は南極にいると断言できるくらい、俺たちは思想も見た目も何もかもが反対だ。
だが、俺たちは幼馴染だ。それが一番の謎なのかもしれない。
小波は俺が手品を始めたら種を見極めようとじっと見つめている。
だが仕掛けがバレたことは唯の一度もない。
いつも小波は手品が終わった途端に
「今日も見つけれなかった!乙女に勝たせてあげようって気はないのかい!」
と威勢のいい大声を出す。
「乙女じゃないでしょ。乙女だと思われたいならまずはその大声を治すことだね」
と独り呟いた。
手品も掃除も終わらせ、俺は教室から出た。
すると廊下の壁にもたれた小波がいる。
小波は俺がいることに気付き、
「おっ!かなり遅かったね。結構待ったよ」
とこれもまた芯の通った声を出す。
「別に待ってくれなんて一言たりとも言ったつもりはないんだけど」
と俺は低い声で反論したが、彼女の耳には届くはずもなく、彼女は淡々と話をする。
「君に言いたいことがあったんだ。忘れちゃいけないから覚えてる内に話しておこうと思って。今日空いてるでしょ?何処かおすすめの場所ない?なかったら公園でいいけど」
お得意のマシンガントークだ。
僕はそれに対して
「公園でいいでしょ」
自分でもわかる。ショットガンにも満たない言うならばBB弾銃だ。
「ならそこで!」
俺たちは昔よく二人で遊んだ公園に来た。
「で、何なの。言いたいことって」
彼女は少し後ろめたそうな顔をしながら俺に話してくれた。
「…私、余命が二か月なんだって」
声が真面目すぎる。言葉が出ない。
こんなに元気そうな人間が余命二か月?おかしい。
それなら俺の方が二か月でポックリ逝きそうだ。
「冗談?」
驚きすぎて声に笑いのような震えが生じた。
彼女はさっきよりも真面目な声で
「マジ。急に幼馴染が死んだら困るだろうから言っただけ。君は別に信じてくれなくてもいいよ。二か月後確かめればいい。
でも、ニつだけ言っとく。他人に言わないことと、長くて二か月だってこと。それと、本当は二年前から宣告されてたんだけどね。怖くて言えなかった。ごめんね」
それだけ言い、小波は何も言わずに去って行った。
翌日は昼休みも帰り支度の空き時間も小波は手品を見に来てくれなかった。
次の日も、その次の日も。
俺は小波に話しかけないと後悔する気がして、その日の放課後に小波に話しかけた。
「小波。あの、余命が少ないのって、あとどれだけの命があるかなんて誰にも分からないと思う。から、明日自動車に車に轢かれるかもしれねぇだろ?だから、悲観するんじゃなくて犯罪とかでも犯してみたらどうだ?」
口が暴走して吐いた言葉だけど、これって幼馴染に犯罪勧めてる変人じゃね?
まあ、小波の口元が緩んで笑ってくれたからよかったけど、そうじゃなかったら危なかった…。
小波がまた手品を見に来てくれるようになってから数日たった。
今日も帰ろうとすると小波に引き留められ、あの公園に二人で赴いた。
「君ってマジックのこと絶対に手品っていうよね。なんで?」
よく気付いたものだ。
「マジックって魔法という意味も込められているんだ。俺は別に魔法使いになりたいわけじゃない。ただ、自分の実力で勝負できる手品の方が俺に合っていると思ったまでだ。だから、小波が超常現象だとか言ってるやつも種も仕掛けもあるんだよ」
俺の家は貧乏でいいスパイクなんかも買ってもらえなかった。だから、自分だけで勝負できる手品が好きだ。
「ふーん。私は超常現象とか信じるけどね。だから君のマジックも分からないんだよ!」
違うような気がするけど、それを口に出すまでもなかった。
それから何日も太陽が沈んで、五十回以上沈んだ。
そろそろ小波の告白から二か月が過ぎようとしていた。
小波は一週間ほど前から入院生活中だ。
俺は毎日見舞いに行っているが弱っているのは一目瞭然だった。
今日も見舞いに行くと小波は小さな声で
「私が死んでしまったら、私の棺の中に君が持ってるトランプの中にある一枚のジョーカーを入れて。そして私の10回目の命日の日まで毎日欠かさず墓に来てね。10回目の命日が来たらそのトランプ全部を燃やし尽くして。そうしたら未練は綺麗さっぱり無くなる。そして命日の10年後に何処か君が知る場所で君と出会って見せましょう。種も仕掛けもございませんって言ってね」
小波は涙を一筋残して死んでいた。
俺は何故か涙は一滴も出なかった。ただ、
「そんなか細い声だと乙女にもなれないじゃねえか」
とポツリ呟いた。
俺は小波の棺の中にジョーカーの一枚を入れた。
そして、彼女の墓に毎日毎日来ていた。
今日は小波との約束の日だ。
俺は残り一枚のジョーカーを残してトランプを燃やした。
トランプは勢いよく燃えた。
まるで今までの10年の速さのように。
儚く、美しく。
俺は家に帰り、ニュースを見た。
そこには小学生天才マジシャンがいた。
まさか…!
テレビの中のマジシャンは
「ある人に伝えたい言葉があります。種も仕掛けもございます!ってね」
終
外ではセミが鳴きだし、教室ではクーラーの音が絶え間なく耳に入る。
あと五分程度で六限が終わり、部活にも入っていない俺は部活でお疲れの皆様の前を南風と共に颯爽と駆け抜けて帰路へつけるわけだ。
でもあと五分ピッタリ尺が稼げる手品は生憎持ち合わせていない。
だから机の下で手遊びをしながらボーっと授業が終わるのを待っていた。
キーンコーンカーンコーン
小学校とは違う今は十分すぎる暖かみがないチャイムが聞こえると、クラスの奴らはもう授業道具を片している。
無事に六限が終わると俺は早速手品の準備に取り掛かった。
昼休みと帰り支度の空き時間に俺はちょっとした手品ショーをやる。
客は毎日少なくとも一人。
時たまそいつの友人が見に来て
「すごーい!」
「何で何で?」
だとか他の男子がいるからか猫撫で声で囃し立てる。
俺はそんなのも悪くないとは思う。
ただし,そんなことを言っても、想像と現実は違う。
今日の客は小鹿名小波ただ一人だ。
小波は髪を肩までおろし、肌は色黒の俺に比べたら白く、目元も花魁のような釣目だ。
俺とは全く対極の存在。
例えるなら俺が北極にいるなら小波は南極にいると断言できるくらい、俺たちは思想も見た目も何もかもが反対だ。
だが、俺たちは幼馴染だ。それが一番の謎なのかもしれない。
小波は俺が手品を始めたら種を見極めようとじっと見つめている。
だが仕掛けがバレたことは唯の一度もない。
いつも小波は手品が終わった途端に
「今日も見つけれなかった!乙女に勝たせてあげようって気はないのかい!」
と威勢のいい大声を出す。
「乙女じゃないでしょ。乙女だと思われたいならまずはその大声を治すことだね」
と独り呟いた。
手品も掃除も終わらせ、俺は教室から出た。
すると廊下の壁にもたれた小波がいる。
小波は俺がいることに気付き、
「おっ!かなり遅かったね。結構待ったよ」
とこれもまた芯の通った声を出す。
「別に待ってくれなんて一言たりとも言ったつもりはないんだけど」
と俺は低い声で反論したが、彼女の耳には届くはずもなく、彼女は淡々と話をする。
「君に言いたいことがあったんだ。忘れちゃいけないから覚えてる内に話しておこうと思って。今日空いてるでしょ?何処かおすすめの場所ない?なかったら公園でいいけど」
お得意のマシンガントークだ。
僕はそれに対して
「公園でいいでしょ」
自分でもわかる。ショットガンにも満たない言うならばBB弾銃だ。
「ならそこで!」
俺たちは昔よく二人で遊んだ公園に来た。
「で、何なの。言いたいことって」
彼女は少し後ろめたそうな顔をしながら俺に話してくれた。
「…私、余命が二か月なんだって」
声が真面目すぎる。言葉が出ない。
こんなに元気そうな人間が余命二か月?おかしい。
それなら俺の方が二か月でポックリ逝きそうだ。
「冗談?」
驚きすぎて声に笑いのような震えが生じた。
彼女はさっきよりも真面目な声で
「マジ。急に幼馴染が死んだら困るだろうから言っただけ。君は別に信じてくれなくてもいいよ。二か月後確かめればいい。
でも、ニつだけ言っとく。他人に言わないことと、長くて二か月だってこと。それと、本当は二年前から宣告されてたんだけどね。怖くて言えなかった。ごめんね」
それだけ言い、小波は何も言わずに去って行った。
翌日は昼休みも帰り支度の空き時間も小波は手品を見に来てくれなかった。
次の日も、その次の日も。
俺は小波に話しかけないと後悔する気がして、その日の放課後に小波に話しかけた。
「小波。あの、余命が少ないのって、あとどれだけの命があるかなんて誰にも分からないと思う。から、明日自動車に車に轢かれるかもしれねぇだろ?だから、悲観するんじゃなくて犯罪とかでも犯してみたらどうだ?」
口が暴走して吐いた言葉だけど、これって幼馴染に犯罪勧めてる変人じゃね?
まあ、小波の口元が緩んで笑ってくれたからよかったけど、そうじゃなかったら危なかった…。
小波がまた手品を見に来てくれるようになってから数日たった。
今日も帰ろうとすると小波に引き留められ、あの公園に二人で赴いた。
「君ってマジックのこと絶対に手品っていうよね。なんで?」
よく気付いたものだ。
「マジックって魔法という意味も込められているんだ。俺は別に魔法使いになりたいわけじゃない。ただ、自分の実力で勝負できる手品の方が俺に合っていると思ったまでだ。だから、小波が超常現象だとか言ってるやつも種も仕掛けもあるんだよ」
俺の家は貧乏でいいスパイクなんかも買ってもらえなかった。だから、自分だけで勝負できる手品が好きだ。
「ふーん。私は超常現象とか信じるけどね。だから君のマジックも分からないんだよ!」
違うような気がするけど、それを口に出すまでもなかった。
それから何日も太陽が沈んで、五十回以上沈んだ。
そろそろ小波の告白から二か月が過ぎようとしていた。
小波は一週間ほど前から入院生活中だ。
俺は毎日見舞いに行っているが弱っているのは一目瞭然だった。
今日も見舞いに行くと小波は小さな声で
「私が死んでしまったら、私の棺の中に君が持ってるトランプの中にある一枚のジョーカーを入れて。そして私の10回目の命日の日まで毎日欠かさず墓に来てね。10回目の命日が来たらそのトランプ全部を燃やし尽くして。そうしたら未練は綺麗さっぱり無くなる。そして命日の10年後に何処か君が知る場所で君と出会って見せましょう。種も仕掛けもございませんって言ってね」
小波は涙を一筋残して死んでいた。
俺は何故か涙は一滴も出なかった。ただ、
「そんなか細い声だと乙女にもなれないじゃねえか」
とポツリ呟いた。
俺は小波の棺の中にジョーカーの一枚を入れた。
そして、彼女の墓に毎日毎日来ていた。
今日は小波との約束の日だ。
俺は残り一枚のジョーカーを残してトランプを燃やした。
トランプは勢いよく燃えた。
まるで今までの10年の速さのように。
儚く、美しく。
俺は家に帰り、ニュースを見た。
そこには小学生天才マジシャンがいた。
まさか…!
テレビの中のマジシャンは
「ある人に伝えたい言葉があります。種も仕掛けもございます!ってね」
終
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