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本作品は実在する歌い手グループ「いれいす」様の二次創作(nmmn)小説です。ご本人様および公式関係者様とは一切関係ありません。学園・軽音部パロディのため、年齢設定や過去の経歴などに大幅な捏造設定・キャラ崩壊が含まれます。デリケートなジャンル(nmmn)であるため、ルールとマナーを守ってお楽しみください。
「えーっと、次は……『-hotoke-』くんだよね」
りうらをスカウトした翌日、俺──ないこは、再び生徒名簿を片手に校舎を歩いていた。
昨日はあんなに大口を叩いたものの、まだメンバーは俺とりうらの2人だけ。廃部回避まではあと4人、先は長い。
次に目をつけたのは、高等部に入学したばかりの1年生、-hotoke-くん。通称「ほとけ」と呼ばれているらしい。
彼は幼少期からクラシックピアノのコンクールで入賞を重ねてきた、いわば鍵盤のサラブレッド。だが、風の噂によると、高校に入ってからは音楽推薦枠であるにもかかわらず、一切の演奏活動を拒否しているという。
「……いたいた。あそこが特別ピアノ室か」
放課後の第一音楽室のさらに奥。防音扉に囲まれた贅沢な部屋から、美しく、それでいてどこか窮屈そうなピアノの旋律が聞こえてきた。
ショパンのワルツ。一音一音の強弱、テンポ、どれをとっても完璧なお手本のような演奏だ。
トントン、とドアをノックして部屋に入る。
「あの、失礼します!」
「わわっ!? だ、誰ですか!?」
ピアノの前に座っていた水色っぽい髪の少年──ほとけは、飛び上がるほど驚いて鍵盤から手を離した。
丸い目をさらに丸くして、侵入者である俺を警戒している。
「あはは、驚かせてごめんね! 2年のないこです。軽音部の部長をやってるんだ」
「軽音部……? ぼ、僕に何か用ですか? クラシックの練習なら、もうすぐ終わりますけど……」
ほとけは居心地悪そうに視線を落とし、譜面台に置かれた分厚い楽譜をいじり始めた。
「ううん、君のピアノを聞きにきたんだ。すごく綺麗な演奏だね。さすがコンクール常連」
「綺麗、ですか……。でも、それだけ、ですよね」
自嘲気味に呟いた彼の言葉に、俺は胸を突かれた。
彼の演奏は確かに完璧だった。だけど昨日見たりうらのギターと同じように、どこか「見えない檻」に閉じ込められているような息苦しさがあった。
「僕のピアノって、つまらないんです。先生にも『お前の演奏には没個性(オリジナリティ)がない』っていつも怒られて。楽譜通りにしか弾けないロボットだって……。だから、自由に音楽を楽しむ軽音部なんて、僕には一番向いてないと思います」
ぽろぽろと、溢れるように弱音を吐き出すほとけ。
周囲の期待、完璧を求める指導、そして「自分らしさ」が見つからない焦り。そのストレスからか、彼の指先には小さな絆創膏がいくつも貼られていた。
「ロボット、か。みんなすぐそういう酷いこと言うよね」
俺はピアノの横まで歩き、鍵盤を人差し指で一つ、ポーンと叩いた。
「ねえ、ほとけくん。楽譜通りに弾くの、もうやめない?」
「え……? でも、クラシックは楽譜が絶対で……」
「ここは軽音部のスカウト会場だよ? クラシックのルールなんて関係ないじゃん。試しにさ、その楽譜を全部閉じて、今頭に浮かんだ音をめちゃくちゃに叩いてみてよ」
「そんなの無理ですよ! 怒られちゃうし、間違えたら格好悪いし……」
「俺しか聞いてないから大丈夫だって! ほら、一音だけでいいから、君が今『出したい』って思った音を鳴らして!」
俺の勢いに押され、ほとけはごくりと唾を飲み込んだ。
少しだけ震える手を鍵盤にかざし、迷った末に、ドンの濁った低い低音を力強く叩きつけた。
──ジャンッ!!!
美しく整えられた音楽室にはお似合いではない、激しくて歪んだ不協和音。
「……あ」
ほとけがハッとして自分の手を見る。
「ほら、いい音じゃん! すごく感情が乗ってる」
「え、でも、今のはただのミスというか、めちゃくちゃな音で……」
「それがいいんだよ! 音楽(おんがく)ってさ、『音を学べる』じゃなくて『音を楽しむ』って書くんだよ。間違えたっていい、めちゃくちゃだっていい。そこに君の心が乗っていれば、それは世界に一つだけの最高の音楽なんだよ」
俺は昨日と同じ、6色のサイコロが描かれたチラシを、今度はほとけの鍵盤の上にそっと置いた。
「俺たちのバンドには、君のその『感情が溢れ出た音』が必要なんだ。楽譜の檻から抜け出して、俺たちと一緒に新しい音楽を作ろう?」
ほとけはチラシを見つめ、それから自分の手をじっと見つめた。
彼の瞳の奥に、ただ楽譜をなぞるだけだった人形ではなく、一人の「表現者」としての小さな灯火が宿るのが見えた。
「僕、本当に自由に弾いていいの……?」
「あったりまえじゃん! むしろ、大暴れしちゃってよ!」
俺が親指を立てて笑うと、ほとけの顔に初めて、パッと弾けるような明るい笑顔が咲いた。
「……うん。僕、やってみたいかも。あなたのバンドで、僕だけの音を見つけたい!」
廃部まで、あと4人。
天才ギタリストに続き、最強のキーボーディストが、俺たちのダイスに加わった。
りうらをスカウトした翌日、俺──ないこは、再び生徒名簿を片手に校舎を歩いていた。
昨日はあんなに大口を叩いたものの、まだメンバーは俺とりうらの2人だけ。廃部回避まではあと4人、先は長い。
次に目をつけたのは、高等部に入学したばかりの1年生、-hotoke-くん。通称「ほとけ」と呼ばれているらしい。
彼は幼少期からクラシックピアノのコンクールで入賞を重ねてきた、いわば鍵盤のサラブレッド。だが、風の噂によると、高校に入ってからは音楽推薦枠であるにもかかわらず、一切の演奏活動を拒否しているという。
「……いたいた。あそこが特別ピアノ室か」
放課後の第一音楽室のさらに奥。防音扉に囲まれた贅沢な部屋から、美しく、それでいてどこか窮屈そうなピアノの旋律が聞こえてきた。
ショパンのワルツ。一音一音の強弱、テンポ、どれをとっても完璧なお手本のような演奏だ。
トントン、とドアをノックして部屋に入る。
「あの、失礼します!」
「わわっ!? だ、誰ですか!?」
ピアノの前に座っていた水色っぽい髪の少年──ほとけは、飛び上がるほど驚いて鍵盤から手を離した。
丸い目をさらに丸くして、侵入者である俺を警戒している。
「あはは、驚かせてごめんね! 2年のないこです。軽音部の部長をやってるんだ」
「軽音部……? ぼ、僕に何か用ですか? クラシックの練習なら、もうすぐ終わりますけど……」
ほとけは居心地悪そうに視線を落とし、譜面台に置かれた分厚い楽譜をいじり始めた。
「ううん、君のピアノを聞きにきたんだ。すごく綺麗な演奏だね。さすがコンクール常連」
「綺麗、ですか……。でも、それだけ、ですよね」
自嘲気味に呟いた彼の言葉に、俺は胸を突かれた。
彼の演奏は確かに完璧だった。だけど昨日見たりうらのギターと同じように、どこか「見えない檻」に閉じ込められているような息苦しさがあった。
「僕のピアノって、つまらないんです。先生にも『お前の演奏には没個性(オリジナリティ)がない』っていつも怒られて。楽譜通りにしか弾けないロボットだって……。だから、自由に音楽を楽しむ軽音部なんて、僕には一番向いてないと思います」
ぽろぽろと、溢れるように弱音を吐き出すほとけ。
周囲の期待、完璧を求める指導、そして「自分らしさ」が見つからない焦り。そのストレスからか、彼の指先には小さな絆創膏がいくつも貼られていた。
「ロボット、か。みんなすぐそういう酷いこと言うよね」
俺はピアノの横まで歩き、鍵盤を人差し指で一つ、ポーンと叩いた。
「ねえ、ほとけくん。楽譜通りに弾くの、もうやめない?」
「え……? でも、クラシックは楽譜が絶対で……」
「ここは軽音部のスカウト会場だよ? クラシックのルールなんて関係ないじゃん。試しにさ、その楽譜を全部閉じて、今頭に浮かんだ音をめちゃくちゃに叩いてみてよ」
「そんなの無理ですよ! 怒られちゃうし、間違えたら格好悪いし……」
「俺しか聞いてないから大丈夫だって! ほら、一音だけでいいから、君が今『出したい』って思った音を鳴らして!」
俺の勢いに押され、ほとけはごくりと唾を飲み込んだ。
少しだけ震える手を鍵盤にかざし、迷った末に、ドンの濁った低い低音を力強く叩きつけた。
──ジャンッ!!!
美しく整えられた音楽室にはお似合いではない、激しくて歪んだ不協和音。
「……あ」
ほとけがハッとして自分の手を見る。
「ほら、いい音じゃん! すごく感情が乗ってる」
「え、でも、今のはただのミスというか、めちゃくちゃな音で……」
「それがいいんだよ! 音楽(おんがく)ってさ、『音を学べる』じゃなくて『音を楽しむ』って書くんだよ。間違えたっていい、めちゃくちゃだっていい。そこに君の心が乗っていれば、それは世界に一つだけの最高の音楽なんだよ」
俺は昨日と同じ、6色のサイコロが描かれたチラシを、今度はほとけの鍵盤の上にそっと置いた。
「俺たちのバンドには、君のその『感情が溢れ出た音』が必要なんだ。楽譜の檻から抜け出して、俺たちと一緒に新しい音楽を作ろう?」
ほとけはチラシを見つめ、それから自分の手をじっと見つめた。
彼の瞳の奥に、ただ楽譜をなぞるだけだった人形ではなく、一人の「表現者」としての小さな灯火が宿るのが見えた。
「僕、本当に自由に弾いていいの……?」
「あったりまえじゃん! むしろ、大暴れしちゃってよ!」
俺が親指を立てて笑うと、ほとけの顔に初めて、パッと弾けるような明るい笑顔が咲いた。
「……うん。僕、やってみたいかも。あなたのバンドで、僕だけの音を見つけたい!」
廃部まで、あと4人。
天才ギタリストに続き、最強のキーボーディストが、俺たちのダイスに加わった。