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本作品は実在する歌い手グループ「いれいす」様の二次創作(nmmn)小説です。ご本人様および公式関係者様とは一切関係ありません。学園・軽音部パロディのため、年齢設定や過去の経歴などに大幅な捏造設定・キャラ崩壊が含まれます。デリケートなジャンル(nmmn)であるため、ルールとマナーを守ってお楽しみください。
「頼むから、今年度中にメンバーをあと5人集めてくれ。じゃないと、この軽音部は廃部だ」
放課後の職員室。
顧問の先生から突きつけられた非情な宣告が、頭の中で何度もリフレインしていた。
「5人、か……」
私立イレギュラー学園2年、ないこ。
この伝統ある軽音部の部長を務めている。
……いや、「守っている」という表現の方が正しいかもしれない。
少し前までは、それなりに部員もいた。
だけど、「もっと本気で音楽をやろう!」と俺が熱くなればなるほど、周囲との熱量の差が開いていった。
『ないこについていけない』
気づけば、みんな去っていった。最後に残ったのは、俺と、誰もいない静かな部室だけ。
「でも、諦めてたまるかってんだ」
ここで立ち止まったら、本当に俺の音楽は終わってしまう。
もう二度と、仲間を失うあの孤独な瞬間を味わいたくはない。
そのためには、俺と同じくらい、いや、それ以上に音楽へ熱を注げるやつが必要だ。
ガサ、と生徒名簿をめくる。
目をつけた候補はいくつかある。その筆頭が、新入生の名簿に載っている『彼』だった。
[下線]──りうら。[/下線]
中学時代、数々のジュニアコンクールを総なめにした天才ギタリスト。
しかし、ある時期を境に表舞台からパタリと姿を消し、この学園の普通科に入学してきたという。
「……いた」
放課後の旧校舎。
使われていない物置同然の音楽準備室から、信じられないほど正確で、歪んだエフェクターの音が聞こえてきた。
ドアを少しだけ開けて、中を覗く。
夕日が差し込む部屋の真ん中で、小柄な少年がストラトキャスターを抱えていた。
指の動きは残像が見えるほどに速い。一音の狂いもない、完璧な運指。教科書通りの、非の打ち所がない演奏。
だけど──。
「……冷たいな」
思わず、呟きが漏れた。
機械が奏でているかのように冷徹で、感情の起伏が一切感じられない音だった。
ジャーン、と最後のコードが雑に鳴り響き、演奏が止まる。
少年──りうらは、ドアの隙間にいる俺の視線に気づくと、ひどく冷めた目でこちらを睨んだ。
「……誰ですか。勝手に見ないでほしいんですけど」
「あはは、ごめんごめん! あんまりにも上手いから、つい見惚れちゃってさ。俺、2年のないこ。軽音部の部長やってるんだ」
ないこ、という名前に、りうらの眉が一瞬だけピクリと動いた。
校内の掲示板で、一人で部を守っている『お荷物部活の部長』として名前くらいは見たことがあるのだろう。
「軽音部? 興味ないです。僕、部活やるつもりないんで」
りうらはすぐにギターのボリュームノブを絞り、ケースに片付けようとし始める。あからさまな拒絶だった。
「待って! りうらくんだよね? 君の噂は聞いてるよ。中学のとき、コンクールで優勝しまくってた天才」
「……その名前で呼ばないでください」
りうらの声が、低く沈んだ。
ギターを握る彼の白い指先が、かすかに震えている。
「あそこの大人たちが言ってたことは、全部正しいですから。僕のギターには感情がない。ただ技術をなぞっているだけの、血の通ってない機械の音だって。だからもう、誰かと一緒に音楽をやるつもりはありません」
あの大舞台で、審査員たちに投げつけられた辛辣な言葉。
それが、今も彼の心を縛り付けるトラウマなのだと、その痛々しい表情が物語っていた。
だけど、俺は引き下がらなかった。
だって、今ここで見た彼の演奏は、そんな薄っぺらい言葉で片付けられるものじゃなかったから。
「機械の音、ねえ。じゃあさ、なんでそんな冷たい音を出しながら、そんなに泣きそうな顔してギター弾いてるわけ?」
「え……?」
りうらが目を見開く。
「完璧に弾かなきゃ認めてもらえないって、怯えてるようにしか見えなかったよ。本当はさ、もっと泥臭くて、めちゃくちゃで、感情を爆発させるような音楽がやりたいんじゃないの?」
「あなたに、僕の何がわかるんですか……!」
初めて、りうらの感情が剥き出しになった。鋭い声が、狭い準備室に響く。
「わかんないよ。会ったばかりだしね」
ないこは一歩、りうらとの距離を詰めた。そして、自分の胸ポケットから、赤、青、紫……と、カラフルな6色のサイコロが描かれた手作りの部活勧誘チラシを取り出し、彼の前に突きつける。
「でも、俺も一人の音楽仲間を失って、もう誰も信じられないかもって絶望してたんだ。だから、傷ついてる君の音に、すごく共感しちゃったんだよね」
チラシを見つめるりうらの瞳に、夕日の赤が反射する。
「俺たちのダイス(可能性)は、まだ回り始めてもない。君のその冷たい音を、俺たちの熱で最高の音楽に変えてみせる。だからさ──」
ないこは満面の笑みを浮かべ、右手を差し出した。
「俺と一緒に、誰も追いつけない最高のバンド、作ってみない?」
沈黙が部屋を満たす。
りうらは差し出された手と、ないこの真っ直ぐな瞳を交互に見つめ、小さく息を呑んだ。
廃部まで、あと5人。
不揃いなダイスたちが重なり合う、奇跡のセッションが、今ここから始まろうとしていた。
放課後の職員室。
顧問の先生から突きつけられた非情な宣告が、頭の中で何度もリフレインしていた。
「5人、か……」
私立イレギュラー学園2年、ないこ。
この伝統ある軽音部の部長を務めている。
……いや、「守っている」という表現の方が正しいかもしれない。
少し前までは、それなりに部員もいた。
だけど、「もっと本気で音楽をやろう!」と俺が熱くなればなるほど、周囲との熱量の差が開いていった。
『ないこについていけない』
気づけば、みんな去っていった。最後に残ったのは、俺と、誰もいない静かな部室だけ。
「でも、諦めてたまるかってんだ」
ここで立ち止まったら、本当に俺の音楽は終わってしまう。
もう二度と、仲間を失うあの孤独な瞬間を味わいたくはない。
そのためには、俺と同じくらい、いや、それ以上に音楽へ熱を注げるやつが必要だ。
ガサ、と生徒名簿をめくる。
目をつけた候補はいくつかある。その筆頭が、新入生の名簿に載っている『彼』だった。
[下線]──りうら。[/下線]
中学時代、数々のジュニアコンクールを総なめにした天才ギタリスト。
しかし、ある時期を境に表舞台からパタリと姿を消し、この学園の普通科に入学してきたという。
「……いた」
放課後の旧校舎。
使われていない物置同然の音楽準備室から、信じられないほど正確で、歪んだエフェクターの音が聞こえてきた。
ドアを少しだけ開けて、中を覗く。
夕日が差し込む部屋の真ん中で、小柄な少年がストラトキャスターを抱えていた。
指の動きは残像が見えるほどに速い。一音の狂いもない、完璧な運指。教科書通りの、非の打ち所がない演奏。
だけど──。
「……冷たいな」
思わず、呟きが漏れた。
機械が奏でているかのように冷徹で、感情の起伏が一切感じられない音だった。
ジャーン、と最後のコードが雑に鳴り響き、演奏が止まる。
少年──りうらは、ドアの隙間にいる俺の視線に気づくと、ひどく冷めた目でこちらを睨んだ。
「……誰ですか。勝手に見ないでほしいんですけど」
「あはは、ごめんごめん! あんまりにも上手いから、つい見惚れちゃってさ。俺、2年のないこ。軽音部の部長やってるんだ」
ないこ、という名前に、りうらの眉が一瞬だけピクリと動いた。
校内の掲示板で、一人で部を守っている『お荷物部活の部長』として名前くらいは見たことがあるのだろう。
「軽音部? 興味ないです。僕、部活やるつもりないんで」
りうらはすぐにギターのボリュームノブを絞り、ケースに片付けようとし始める。あからさまな拒絶だった。
「待って! りうらくんだよね? 君の噂は聞いてるよ。中学のとき、コンクールで優勝しまくってた天才」
「……その名前で呼ばないでください」
りうらの声が、低く沈んだ。
ギターを握る彼の白い指先が、かすかに震えている。
「あそこの大人たちが言ってたことは、全部正しいですから。僕のギターには感情がない。ただ技術をなぞっているだけの、血の通ってない機械の音だって。だからもう、誰かと一緒に音楽をやるつもりはありません」
あの大舞台で、審査員たちに投げつけられた辛辣な言葉。
それが、今も彼の心を縛り付けるトラウマなのだと、その痛々しい表情が物語っていた。
だけど、俺は引き下がらなかった。
だって、今ここで見た彼の演奏は、そんな薄っぺらい言葉で片付けられるものじゃなかったから。
「機械の音、ねえ。じゃあさ、なんでそんな冷たい音を出しながら、そんなに泣きそうな顔してギター弾いてるわけ?」
「え……?」
りうらが目を見開く。
「完璧に弾かなきゃ認めてもらえないって、怯えてるようにしか見えなかったよ。本当はさ、もっと泥臭くて、めちゃくちゃで、感情を爆発させるような音楽がやりたいんじゃないの?」
「あなたに、僕の何がわかるんですか……!」
初めて、りうらの感情が剥き出しになった。鋭い声が、狭い準備室に響く。
「わかんないよ。会ったばかりだしね」
ないこは一歩、りうらとの距離を詰めた。そして、自分の胸ポケットから、赤、青、紫……と、カラフルな6色のサイコロが描かれた手作りの部活勧誘チラシを取り出し、彼の前に突きつける。
「でも、俺も一人の音楽仲間を失って、もう誰も信じられないかもって絶望してたんだ。だから、傷ついてる君の音に、すごく共感しちゃったんだよね」
チラシを見つめるりうらの瞳に、夕日の赤が反射する。
「俺たちのダイス(可能性)は、まだ回り始めてもない。君のその冷たい音を、俺たちの熱で最高の音楽に変えてみせる。だからさ──」
ないこは満面の笑みを浮かべ、右手を差し出した。
「俺と一緒に、誰も追いつけない最高のバンド、作ってみない?」
沈黙が部屋を満たす。
りうらは差し出された手と、ないこの真っ直ぐな瞳を交互に見つめ、小さく息を呑んだ。
廃部まで、あと5人。
不揃いなダイスたちが重なり合う、奇跡のセッションが、今ここから始まろうとしていた。