終焉の吐息
雪は二人だけの時間のために降るのだと、あの頃は信じていた。
世界から切り離されたかのような静寂に包まれた街路樹の下。マフラーに埋もれた君の頬が、少しだけ紅潮していたのを覚えている。
悴んだ指先を、君が大きな手で包み込んでくれた、あの束の間の温もり。
それは触れれば壊れてしまいそうなほど頼りない夢だった。
降り積もる純白は僕たちの恋そのもののように、あまりにも脆く、そして美しかった。
踏み固められた雪道に残る足跡も、次の朝には新しい雪に埋もれて消えてしまう。まるでこの恋が最初から存在しなかったかのように。
「永遠なんてないよね」と、君が呟いた時、冷たい空気が胸の奥まで凍み渡った。
煌めくイルミネーションの下で、僕は君を見つめ返せなかった。
知っていたから。
この輝きが、冬の終わりと共に消え去る運命なのだと。
約束なんて交わさなかった。言葉にすれば、この儚い均衡が崩れてしまうのが怖かった。
ただ、隣を歩く君の吐息が白く空に溶けていくのを見つめていることしかできなかった。
季節は巡り、雪解け水が小川を流れる頃自分たちの関係も音もなく終わった。まるで、冬の陽炎のように眩しかった記憶だけを残して。
今、一人で見上げる冬の夜空。
舞い落ちる雪は、あの日の君の言葉のように冷たい。
けれど、その一瞬の輝きを知っているから僕はまだ、この凍てついた季節を愛してしまう。
儚さこそが、最も深く心に残る痛みであることを知りながら。
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