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グロ描写があるかもしれません。少し重めの内容です。
[小文字]今回特にグロ注意です....[/小文字]
締め日の夜が終わり、静まり返ったワンルームの自室。
コンカフェの衣装からスウェットに着替えた私は、ベッドの上に膝を抱えて座っていた。
頭の中をぐるぐると回るのは、美香の悪気のない笑顔と、彼女の卓に並んでいた3本もの100万円のシャンパン。
そして、蓮さんの『俺もあのお酒、飲んでみたいな……』という寂しそうな声。
「足りない……全然足りないよ……」
コンカフェで毎日オタクの男性に笑顔を振り撒き、やっと稼いだ30万円。それは私にとって命を削るような大金だったのに、ホストクラブという街では、一瞬で消えていくただの泡でしかなかった。
美香みたいになりたいわけじゃない。
ただ、大好きな蓮さんに、私だけを見てほしかった。
蓮さんの特別になりたいのに、私のお金じゃ、蓮さんを一番にしてあげられない。
私がもっと、もっと稼げればいいんだ。でも、これ以上どうすればいいの……?)
焦りと、不安と、どうしようもない自己嫌悪が胸の奥からせり上がってきて、息がうまくできなくなる。
心臓が嫌な音を立ててバクバクと暴れる。脳が真っ黒なモヤで満たされていくような、強烈な恐怖感。
気づけば、私は机の引き出しからカッターナイフを取り出していた。
カチ、カチ、と静かな部屋に刃を押し出す音が響く。
冷たい刃先を、コンカフェのお客さんに「細いね」と褒められた左の手首にあてる。
ホストにこんな早く依存するなんて思わなかった。
力を込めて、横に一文字に引いた。
一瞬の鋭い痛みのあと、白い肌にスーッと赤い線が浮かび上がり、ぷつぷつと血が溢れて滴り落ちる。
不思議と、怖さはなかった。
むしろ、流れる赤い血を見ていると、頭の中のモヤがすうっと引いていくような気がした。生きている実感が、痛みの感覚と一緒に身体に戻ってくる。
この痛みだけが、蓮さんのためにボロボロになっている私の、本当の証明な気がした。
手首の傷をティッシュで強く押さえつける。
来月は、コンカフェのシフトを今の倍に増やそう。
それでも足りなければ、もっと別のお店を探せばいい。
[下線]手首の痛みが、私に新しい覚悟を刻みつけていた。[/下線]
「りあちゃん、今日なんか元気ない? ちゃんとご飯食べてる?」
締め日から数日後、コンカフェのバイト終わりに駆けつけたホストクラブ。
いつものように優しく微笑む蓮さんの隣に座ると、張り詰めていた緊張が一気に解けていく。コンカフェのシフトを無理に増やしたせいで、身体はもうボロボロだった。
「大丈夫……ちょっと寝不足なだけ」
「そっか。無理しちゃダメだよ? はい、お疲れ様」
蓮さんが私を労うように、そっと左手を取った。
その瞬間、私はビクッと身体を強張らせた。
私の左手首には、コンカフェの衣装である長袖のフリルで隠した、あの夜の傷跡が残っている。
「……あれ?」
蓮さんの指先が、長袖の袖口から覗く白い包帯に触れた。
「これ、どうしたの?」
「あ、なんでもない! ちょっと、転んで怪我しちゃって……」
焦って腕を引こうとしたけれど、蓮さんの力は思いのほか強かった。彼は何も言わずに、私の袖を静かにめくり上げた。
白い肌に刻まれた、生々しいカッターの傷跡。
(あ、終わった。引かれた。メンヘラだって思われて、嫌われちゃう――)
絶望で頭が真っ白になり、涙が溢れそうになったその時。
蓮さんは、私の傷跡をひどく愛おしそうな、悲しそうな目で見つめた。
「……これ、俺のせいでしょ」
「え……?」
「美香さんの卓を見て、悩んじゃったんだよね。俺が余計なこと言ったから。……ごめんね、りあちゃん。俺を勝たせるために、こんなになるまで追い詰めちゃって」
蓮さんは私を壊れ物を扱うように、ぎゅっと優しく抱きしめた。
彼の体温と、タバコと香水の匂いが鼻腔を満たす。
「怒るわけないじゃん。むしろ……俺のためにそこまでボロボロになってくれる女の子なんて、今までいなかったよ。りあちゃんが、俺のこと世界で一番愛してくれてるって分かって、すごく嬉しい」
耳元で囁かれる甘い声。
普通の男の人なら、きっと気味が悪いと逃げ出してしまうはずの傷。それを、蓮さんは「嬉しい」と受け入れ、私の存在すべてを肯定してくれた。
「だからさ、もう一人で悩まないで? 」
蓮さんの腕の中で、私は激しい安堵感とともに、強烈な快感に震えていた。
やっぱり、私の居場所はここしかない。この人を幸せにできるのは、世界中で私だけなんだ。
「うん……私、もっと頑張るね。蓮さんを絶対にナンバーワンにするからね」
私のその言葉を聞いた瞬間、蓮さんの顔に、一瞬だけ、冷徹で計算高い「夜の男」の笑みが浮かんだことに、恋に狂った里愛は気づく由もなかった。
手首の傷すらも、女の子を縛り付けるための道具にする。
それこそが、歌舞伎町のトップホストが持つ本物の闇だった。
締め日の夜が終わり、静まり返ったワンルームの自室。
コンカフェの衣装からスウェットに着替えた私は、ベッドの上に膝を抱えて座っていた。
頭の中をぐるぐると回るのは、美香の悪気のない笑顔と、彼女の卓に並んでいた3本もの100万円のシャンパン。
そして、蓮さんの『俺もあのお酒、飲んでみたいな……』という寂しそうな声。
「足りない……全然足りないよ……」
コンカフェで毎日オタクの男性に笑顔を振り撒き、やっと稼いだ30万円。それは私にとって命を削るような大金だったのに、ホストクラブという街では、一瞬で消えていくただの泡でしかなかった。
美香みたいになりたいわけじゃない。
ただ、大好きな蓮さんに、私だけを見てほしかった。
蓮さんの特別になりたいのに、私のお金じゃ、蓮さんを一番にしてあげられない。
私がもっと、もっと稼げればいいんだ。でも、これ以上どうすればいいの……?)
焦りと、不安と、どうしようもない自己嫌悪が胸の奥からせり上がってきて、息がうまくできなくなる。
心臓が嫌な音を立ててバクバクと暴れる。脳が真っ黒なモヤで満たされていくような、強烈な恐怖感。
気づけば、私は机の引き出しからカッターナイフを取り出していた。
カチ、カチ、と静かな部屋に刃を押し出す音が響く。
冷たい刃先を、コンカフェのお客さんに「細いね」と褒められた左の手首にあてる。
ホストにこんな早く依存するなんて思わなかった。
力を込めて、横に一文字に引いた。
一瞬の鋭い痛みのあと、白い肌にスーッと赤い線が浮かび上がり、ぷつぷつと血が溢れて滴り落ちる。
不思議と、怖さはなかった。
むしろ、流れる赤い血を見ていると、頭の中のモヤがすうっと引いていくような気がした。生きている実感が、痛みの感覚と一緒に身体に戻ってくる。
この痛みだけが、蓮さんのためにボロボロになっている私の、本当の証明な気がした。
手首の傷をティッシュで強く押さえつける。
来月は、コンカフェのシフトを今の倍に増やそう。
それでも足りなければ、もっと別のお店を探せばいい。
[下線]手首の痛みが、私に新しい覚悟を刻みつけていた。[/下線]
「りあちゃん、今日なんか元気ない? ちゃんとご飯食べてる?」
締め日から数日後、コンカフェのバイト終わりに駆けつけたホストクラブ。
いつものように優しく微笑む蓮さんの隣に座ると、張り詰めていた緊張が一気に解けていく。コンカフェのシフトを無理に増やしたせいで、身体はもうボロボロだった。
「大丈夫……ちょっと寝不足なだけ」
「そっか。無理しちゃダメだよ? はい、お疲れ様」
蓮さんが私を労うように、そっと左手を取った。
その瞬間、私はビクッと身体を強張らせた。
私の左手首には、コンカフェの衣装である長袖のフリルで隠した、あの夜の傷跡が残っている。
「……あれ?」
蓮さんの指先が、長袖の袖口から覗く白い包帯に触れた。
「これ、どうしたの?」
「あ、なんでもない! ちょっと、転んで怪我しちゃって……」
焦って腕を引こうとしたけれど、蓮さんの力は思いのほか強かった。彼は何も言わずに、私の袖を静かにめくり上げた。
白い肌に刻まれた、生々しいカッターの傷跡。
(あ、終わった。引かれた。メンヘラだって思われて、嫌われちゃう――)
絶望で頭が真っ白になり、涙が溢れそうになったその時。
蓮さんは、私の傷跡をひどく愛おしそうな、悲しそうな目で見つめた。
「……これ、俺のせいでしょ」
「え……?」
「美香さんの卓を見て、悩んじゃったんだよね。俺が余計なこと言ったから。……ごめんね、りあちゃん。俺を勝たせるために、こんなになるまで追い詰めちゃって」
蓮さんは私を壊れ物を扱うように、ぎゅっと優しく抱きしめた。
彼の体温と、タバコと香水の匂いが鼻腔を満たす。
「怒るわけないじゃん。むしろ……俺のためにそこまでボロボロになってくれる女の子なんて、今までいなかったよ。りあちゃんが、俺のこと世界で一番愛してくれてるって分かって、すごく嬉しい」
耳元で囁かれる甘い声。
普通の男の人なら、きっと気味が悪いと逃げ出してしまうはずの傷。それを、蓮さんは「嬉しい」と受け入れ、私の存在すべてを肯定してくれた。
「だからさ、もう一人で悩まないで? 」
蓮さんの腕の中で、私は激しい安堵感とともに、強烈な快感に震えていた。
やっぱり、私の居場所はここしかない。この人を幸せにできるのは、世界中で私だけなんだ。
「うん……私、もっと頑張るね。蓮さんを絶対にナンバーワンにするからね」
私のその言葉を聞いた瞬間、蓮さんの顔に、一瞬だけ、冷徹で計算高い「夜の男」の笑みが浮かんだことに、恋に狂った里愛は気づく由もなかった。
手首の傷すらも、女の子を縛り付けるための道具にする。
それこそが、歌舞伎町のトップホストが持つ本物の闇だった。