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グロ描写があるかもしれません。少し重めの内容です。
「ねぇ、美香。オススメのバイトない?」
ホストクラブに歩いて行く時、2人でこんな話をした。
「んー...。夜職でいいならあるけど...」
夜職は少し嫌だった。大学を卒業したばかりだし、自分のような地雷系が売れると思わないからだ。
「やっぱ...普通のバイト週5で入れたほうがいいのかなあ」
ため息をついた私を見て、美香は提案する。
「[太字]メイド喫茶[/太字]は?たまにとんでもない客来ると思うけど、メイド服可愛いし、接客業に慣れることもできるよ。里愛可愛いし!」
メイド喫茶。優しいメイドの先輩もいるって聞くし、少し惹かれてしまう。
「...ホスクラ直行したいから近いところがいいな」
「いいとこあるよー!」
[太字][/太字]
「受かってしまった.......」
スマートフォンの画面に届いた1通のメール。コンカフェからの「面接合格」の通知を見た瞬間、私は自室のベッドの上で、大きく息を吐き出した。
不安もあるが、やってみよう。やりきってみせる。
________________________
「衣装ふりふり.....あっ!おかえりなさいませ!御主人様っ」
最初は、見ず知らずのオタクの男性たちに「おいしくな〜れ、萌え萌えキュン!」と魔法をかけるのが、死ぬほど恥ずかしかった。
でも、あることに気づいてから、りあの目の色が変わった。
(あ、この人たち、ハヤトを追いかけてた頃の私と同じだ……)
推しに認知されたくて、自分の生活を削って会いに来るお客さんたち。
彼らの心理が、りあには痛いほどよく分かった。
分かってしまうからこそ、どうすれば彼らがお金を使ってくれるかも、自然と理解できた。
「りあちゃん、今日も可愛いね。はい、チェキ5枚追加で」
心の中で「ちょろい」と思っている自分に、時々ゾッとする。
気づけば1ヶ月が経ち、りあの手元には、コンカフェの給料と、チェキやドリンクのバックで稼いだ35万円の現金があった。私にとっては、見たこともない大金。
観覧車が回せる。やっと。
コンカフェの給料袋から取り出した35万円の現金をバッグの底に押し込み、私はお店のドアを開けた。フロアは満席で、いつも以上の熱気に包まれている。
「里愛ちゃん、今日も来てくれたの?」
蓮は微笑む。
「蓮さん、これ……」
私はバッグから、帯のついた現金の束を差し出した。
「えっ、30万……!? すごい、里愛ちゃん、本当に用意してくれたんだ……!」
蓮さんの目がパッと輝き、私を壊れそうなほど強く抱きしめてくれた。
「ありがとう。俺、今夜は絶対に負けたくないんだ。……黒服さん! 蓮、観覧車いただきます!」
すぐに、店内の照明がバッと落ちた。暗闇の中、ネオンピンクにギラギラと光る、24本のショットグラスを乗せた「観覧車」が、私たちの卓へと運ばれてくる。
「蓮、観覧車入りましたーー!!」
ホストたちが一斉に集まり、地鳴りのような大コールが始まった。
私のために、蓮さんのために、店中が盛り上がっている。
慣れないメイド服で、オタクの人たちに頭を下げて必死に稼いだ30万円。その努力が、今この瞬間の最高の快感として報われた気がした。
コールが終わり、息を弾ませていると、すぐ近くのVIP席から「りあーー!」と聞き覚えのある声がした。
美香だ。
「すごーい! りあ、観覧車回したんだね! 蓮くんめちゃくちゃ喜んでるじゃん、よかったね!」
美香は弾けるような笑顔で、純粋に私のことを褒めてくれた。
そこには悪意も、私をバカにするような意図も一切ない。
本当に、親友の頑張りを一緒に喜んでくれている。
「うん……! 美香のアドバイス通り、頑張ってみたんだ」
私が少し得意げに微笑むと、美香は「さすが私の大親友!」と言って、自分の卓を指差した。
「うちの昌磨もさ、今日ナンバーワンかかってるから、私もちょっと奮発しちゃった!」
美香が嬉しそうに笑う。
その視線の先、彼女のテーブルの真ん中には、キラキラと七色に輝く100万円の高級シャンパンが、3本も美しく並んでいた。
「昌磨がね、どうしても今月は勝ちたいって言うし。私も今月はちょっと予算オーバーなんだけど、まあ喜んでくれたからいっか!」
美香は悪気なく、いつもの「ノリ」でそう言った。
総額300万円以上の輝き。
その瞬間、私の頭が冷や水を浴びせられたように冷たくなった。
私が1ヶ月間、プライドを捨てて、オタクの男性たちに媚を売って、身を削るようにしてやっと稼いだ30万。
それが、美香にとっては「ちょっと奮発した」程度の一瞬の予算でしかなくて、彼女が何本も並べている100万のボトルの足元にも及ばない。
「美香、ありがとう。愛してる」
昌磨は美香に笑いかける。
「……ううん、美香、すごいね」
引きつった笑顔を返す私の手を、蓮さんがそっと握り直した。
その目は、美香の卓のアルマンドをじっと見つめたまま、低く呟いた。
「りあちゃん、観覧車本当に嬉しい。……でも、俺、やっぱり昌磨には負けたくないな。来月は、俺もあのお酒、飲んでみたいな……」
蓮さんの言葉が、私の胸に深く突き刺さる。美香には悪気なんてない。
ただ、住む世界が違うだけ。でも、私は蓮さんを裏切りたくない。蓮さんのためなら、私はもっと、もっと別の世界に落ちていけるかもしれない。
そんな黒い覚悟が、心の中に静かに芽生えていくのが分かった。
ホストクラブに歩いて行く時、2人でこんな話をした。
「んー...。夜職でいいならあるけど...」
夜職は少し嫌だった。大学を卒業したばかりだし、自分のような地雷系が売れると思わないからだ。
「やっぱ...普通のバイト週5で入れたほうがいいのかなあ」
ため息をついた私を見て、美香は提案する。
「[太字]メイド喫茶[/太字]は?たまにとんでもない客来ると思うけど、メイド服可愛いし、接客業に慣れることもできるよ。里愛可愛いし!」
メイド喫茶。優しいメイドの先輩もいるって聞くし、少し惹かれてしまう。
「...ホスクラ直行したいから近いところがいいな」
「いいとこあるよー!」
[太字][/太字]
「受かってしまった.......」
スマートフォンの画面に届いた1通のメール。コンカフェからの「面接合格」の通知を見た瞬間、私は自室のベッドの上で、大きく息を吐き出した。
不安もあるが、やってみよう。やりきってみせる。
________________________
「衣装ふりふり.....あっ!おかえりなさいませ!御主人様っ」
最初は、見ず知らずのオタクの男性たちに「おいしくな〜れ、萌え萌えキュン!」と魔法をかけるのが、死ぬほど恥ずかしかった。
でも、あることに気づいてから、りあの目の色が変わった。
(あ、この人たち、ハヤトを追いかけてた頃の私と同じだ……)
推しに認知されたくて、自分の生活を削って会いに来るお客さんたち。
彼らの心理が、りあには痛いほどよく分かった。
分かってしまうからこそ、どうすれば彼らがお金を使ってくれるかも、自然と理解できた。
「りあちゃん、今日も可愛いね。はい、チェキ5枚追加で」
心の中で「ちょろい」と思っている自分に、時々ゾッとする。
気づけば1ヶ月が経ち、りあの手元には、コンカフェの給料と、チェキやドリンクのバックで稼いだ35万円の現金があった。私にとっては、見たこともない大金。
観覧車が回せる。やっと。
コンカフェの給料袋から取り出した35万円の現金をバッグの底に押し込み、私はお店のドアを開けた。フロアは満席で、いつも以上の熱気に包まれている。
「里愛ちゃん、今日も来てくれたの?」
蓮は微笑む。
「蓮さん、これ……」
私はバッグから、帯のついた現金の束を差し出した。
「えっ、30万……!? すごい、里愛ちゃん、本当に用意してくれたんだ……!」
蓮さんの目がパッと輝き、私を壊れそうなほど強く抱きしめてくれた。
「ありがとう。俺、今夜は絶対に負けたくないんだ。……黒服さん! 蓮、観覧車いただきます!」
すぐに、店内の照明がバッと落ちた。暗闇の中、ネオンピンクにギラギラと光る、24本のショットグラスを乗せた「観覧車」が、私たちの卓へと運ばれてくる。
「蓮、観覧車入りましたーー!!」
ホストたちが一斉に集まり、地鳴りのような大コールが始まった。
私のために、蓮さんのために、店中が盛り上がっている。
慣れないメイド服で、オタクの人たちに頭を下げて必死に稼いだ30万円。その努力が、今この瞬間の最高の快感として報われた気がした。
コールが終わり、息を弾ませていると、すぐ近くのVIP席から「りあーー!」と聞き覚えのある声がした。
美香だ。
「すごーい! りあ、観覧車回したんだね! 蓮くんめちゃくちゃ喜んでるじゃん、よかったね!」
美香は弾けるような笑顔で、純粋に私のことを褒めてくれた。
そこには悪意も、私をバカにするような意図も一切ない。
本当に、親友の頑張りを一緒に喜んでくれている。
「うん……! 美香のアドバイス通り、頑張ってみたんだ」
私が少し得意げに微笑むと、美香は「さすが私の大親友!」と言って、自分の卓を指差した。
「うちの昌磨もさ、今日ナンバーワンかかってるから、私もちょっと奮発しちゃった!」
美香が嬉しそうに笑う。
その視線の先、彼女のテーブルの真ん中には、キラキラと七色に輝く100万円の高級シャンパンが、3本も美しく並んでいた。
「昌磨がね、どうしても今月は勝ちたいって言うし。私も今月はちょっと予算オーバーなんだけど、まあ喜んでくれたからいっか!」
美香は悪気なく、いつもの「ノリ」でそう言った。
総額300万円以上の輝き。
その瞬間、私の頭が冷や水を浴びせられたように冷たくなった。
私が1ヶ月間、プライドを捨てて、オタクの男性たちに媚を売って、身を削るようにしてやっと稼いだ30万。
それが、美香にとっては「ちょっと奮発した」程度の一瞬の予算でしかなくて、彼女が何本も並べている100万のボトルの足元にも及ばない。
「美香、ありがとう。愛してる」
昌磨は美香に笑いかける。
「……ううん、美香、すごいね」
引きつった笑顔を返す私の手を、蓮さんがそっと握り直した。
その目は、美香の卓のアルマンドをじっと見つめたまま、低く呟いた。
「りあちゃん、観覧車本当に嬉しい。……でも、俺、やっぱり昌磨には負けたくないな。来月は、俺もあのお酒、飲んでみたいな……」
蓮さんの言葉が、私の胸に深く突き刺さる。美香には悪気なんてない。
ただ、住む世界が違うだけ。でも、私は蓮さんを裏切りたくない。蓮さんのためなら、私はもっと、もっと別の世界に落ちていけるかもしれない。
そんな黒い覚悟が、心の中に静かに芽生えていくのが分かった。