君の恋話と、僕の胸焼け
いつものカフェ、窓の外は夕暮れ時。
頼んだカプチーノの泡はもう消えかけている。
目の前で君が弾けるように笑っている。
その笑顔が僕の胸を締め付けることを、君は知らない。
「ねえ聞いてよ!彼がね、次のデートで水族館に連れてってくれるって!」
君の声は弾んでいて、まるで世界に一つだけ咲いた花のようだ。
僕の心には、君が話すたびに「彼」という名前の小さなトゲが刺さる。
テーブルの下で握りしめた拳が少し痛い。
「それって、どう思う?やっぱり水族館ってベタかな?」
君は無邪気に僕に尋ねる。
僕は努めて冷静に、最適なアドバイスを頭の中で組み立てる。
僕が君に抱いている想いは、決して口に出してはいけない禁じられた色だ。
「彼はきっと、君を喜ばせたいんだよ。ベタだけど、それが嬉しいんじゃないかな」
「そうかな?僕もそう思う!」
相談役としての僕には、これが精一杯の模範解答だ。
本当は言いたい。
その隣で笑って水族館ではしゃぐのは僕であるべきだと。
その悩みを僕に向けられたいと。
君が「彼」との未来を語るたび、
僕の「もしも」の世界は音を立てて崩れていく。
けれど、君の幸せそうな顔を見ていると、
この切ない痛みも、僕だけの特別な感情のような気がしてくる。
僕の片想いは永遠に成就しない運命かもしれない。
それでも、君の一番の理解者として一番近くにいることはできる。
これは僕に課せられた甘くて苦い役割だ。
窓の外はすっかり暗くなった。
カプチーノは完全に冷めきっている。
僕の心の中の淡い期待も少しずつ、少しずつ冷えていく。
それでも僕はまた君の「恋愛相談」に乗るだろう。
だって、君の笑顔が見たいから。
君が幸せならそれでいいと、自分に言い聞かせて。
これは僕だけの、誰にも言えない、
長すぎる片想いの記録。
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