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グロ描写があるかもしれません。少し重めの内容です。
[太字]「僕だけのお姫様にするね」[/太字]
蓮の低音で囁かれた私は顔を真っ赤に染め、目をそらした。
その時、他のホストが来た。
「はじめまして、美香のお友達?」
私が振り返るとそこには金髪のホストがいた。THE・チャラ男のようなイケメン。ツリ眉ツリ目。肩まで髪の毛があって、後ろでハーフアップしている。
「私の担当!3年連続No.1ホストなんだよね〜」
美香が誇らしげに言う。それを見てホストは美香の腰に手を回した。
「エースは美香じゃん。美香のおかげだよ。去年の俺の生誕祭には総額1億円のシャンパンタワーを1人で建ててさ...俺がホストやってて一番の感動だよ」
美香が夜職をやっていて、実家がかなりの資産家なため金銭面の余裕があるのはわかっていたが、自分磨きにも、担当にもそこまで使っているなんて思っていなかった。
「あの...お名前...。」
美香の腰から手を外し、上着から名刺を取り出しす。
「昌磨〜」
美香の友達、という認識なため優しいのかわからないが、見た目と違ってお兄さんっぽくて優しい。治安悪いオラオラ系だと思っていた。
「上野里愛です!」
歌舞伎町でいろいろな人と関わってきたため、病むことはあっても人見知りなどはない。
「里愛ちゃん?可愛い」
蓮の冷たい視線に気付いていたが、昌磨は気にせず里愛を褒めた。
蓮は少し間をあけて言った。
「俺も昌磨さんみたいに、りあちゃんと一緒に頂点見たいな……」
本人は聞こえるように言ったのか。シャンパンのほうを眺めて言った。
「[小文字]シャンパンって高いんじゃ...[/小文字]」
そう呟くと美香は肩をトンと叩き、
「どうする?安いやつもあるけど」
「りあちゃん、今日来てくれて本当に嬉しい。でも、周りの席みんなシャンパン鳴ってて、俺、りあちゃんの前でカッコ悪い姿見せたくないな……。一番安いやつでいいから、俺たちの『お祝い』として入れてくれない?」
やはりホストなだけあって誘い方がうますぎる。蓮の綺麗でクールな眼差しで見られると弱くなってしまう。
そんなことを考えているとフロアに声が響き渡った。
『――本日のラストソング! 300万の高級シャンパン、アルマンド3本入りました! 輝いたのは、当店の絶対王者、昌磨代表! そしてお姫様、美香様です!』
「300万っ...?」
お姫様というより女王のほうが合っているだろう。美香は昌磨と腕を組み、黒服や他のホストと話している。
「……すごい」
圧倒されている私。一番安いのは5万円。躊躇している。
蓮は悲しそうに私のことを見る。
「あ...里愛ちゃん、無理しなくて.....」
「シャンパン入れます、10万円」
思わず言ってしまった。やってやろう。
「里愛ちゃん本当に?流石、大好きだよ.」
その瞬間、卓の空気が一変した。
黒服がインカムで「蓮、10本入りまーす!」と叫ぶ。10万円のシャンパン。
バイト2ヶ月分の給料が、一瞬で消える。でも、蓮が私を強く抱きしめてくれた瞬間、その罪悪感はすべて快感に変わった。
「失礼します! 蓮、シャンパンいただきましたー!」
周りのホストたちが一斉に集まり、私のためだけのシャンパンコールが始まる。手拍子と怒涛の掛け声。ハヤトの現場では味わえなかった、「私が主役」という全能感が脳をバグらせていく。
――その時だった。
「昌磨〜、なんかお酒足りなくない? 観覧車回しちゃおっか!」
フロアの反対側から、聞き覚えのある高い声が響いた。
親友の美香だ。次の瞬間、店内の照明がバッと落ちた。暗闇の中、LEDライトでギラギラに光るネオンピンクの「観覧車」が、お神輿のように担がれて美香の席へと運ばれていく。並べられた24本の光るショットグラス。総額、30万円以上の追加注文。
「昌磨、観覧車入りましたーー!!」
フロア中のホストが美香の席へ大移動し、私のシャンパンコールをかき消すほどの地鳴りのような大コールが始まった。美香は、店で一番売れている昌磨の隣で、女王のように気だるげに微笑んでいる。私の10万円のシャンパンが、一瞬で霞んでいく。
「……すご、いね」
親友の初めて見る姿だった。
ポツリと呟いた私に、蓮は私の手を握り直し、少し寂しそうな、でも私を試すような目で微笑んだ。「美香ちゃん、さすが昌磨のエースだね。……でも、俺はりあちゃんがくれた10万のシャンパンの方が、何百倍も嬉しいよ? いつか、俺たちも、あの観覧車、一緒に回そうね」蓮さんの優しい言葉が、今の私には呪いのように聞こえた。美香みたいになりたい。蓮を、昌磨さんよりも上の男にしたい。
[太字]そのためには、もっと、もっとお金が必要だ――。[/太字]