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境界線の向こう側



私たちを隔てるものは何もないはずだった。
いつも隣に座り、同じ音楽を聴き、同じ未来を無邪気に語り合った。
あなたにとって私は「親友」。
けれど、私にとってあなたはいつの間にか世界の中心になっていた。
あなたが笑うたび、胸の奥がきゅうっとなる。
あなたが少し悲しそうな顔をするたび、
私がその悲しみを全部引き受けたくなった。
それはもう、「友達」という言葉では収まらない、
熱くて、苦しくて、甘い感情だった。
ある日のバーで、誰もいないカウンターで、
あなたが窓の外を見つめながら、ぽつりと言った。

「私、隣の席の男性に告白されたんだ」

その瞬間、世界から音が消えた。
心臓が止まったように、息が詰まった。
あなたの言葉を処理するのにほんの数秒かかった。
「そっか、すごいね」
精一杯の笑顔を作ったけれど声が震えていたかもしれない。
「どうしようかな、いい人だし」
楽しそうに悩むあなたの横顔を見て、
私は自分がどれほど愚かだったかを思い知らされた。
あなたは私を見ていない。
私が見ている熱量と同じだけの熱量で、
私のことを見てはいない。
友情と愛情の境界線。
それは目に見えないけれど、確かに存在する壁だった。
私はその壁のこちら側で、
あなたという光を、ただ見つめることしかできない。
あなたの手が私の頬に触れる。
「顔色悪いよ、大丈夫?」
その優しさが、今は一番の凶器になる。
「大丈夫、ちょっと飲みすぎかも」
嘘をつくのが上手になったのは、あなたのせいだ。
この想いを言葉にしてしまったら、
きっと今の、この穏やかな日々も壊れてしまう。
あなたの隣にいる資格さえ、失ってしまうかもしれない。
だから、私は今日も「親友」の仮面を被る。
あなたの幸せを、心から願うふりをする。
本当は、私の隣で笑っていてほしいのに。
夜、ベッドの中で、私は何度も言葉を反芻する。
「好きだよ、あなたが」
この想いは、墓場まで持っていく秘密。
あなたにとって私は、数ある大切な友達の一人。
私にとってあなたは、唯一無二の、恋焦がれた人。
境界線の向こう側へは、
永遠に足を踏み入れることができない。
それでも私は、明日もあなたの隣を歩く。
この切ない痛みを、抱きしめながら。


作者メッセージ

『親友』に恋愛感情を抱いてしまった女の子のお話です.

2025/11/27 20:06

NAL⁵
ID:≫ 1pds2a9oCl4mk
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