文字サイズ変更

砂時計

#5

第四話 ステージ1

教室のドアが、ギィ……と軋む音を立てて開いた。
 
何かが這うような音。ザリ……ザリ……とチョークを引きずるような不快な音。
 奥から、黒くて巨大な“何か”が入ってくる。
 
その顔は、いや“頭部”は、真っ黒な黒板で構成されていた。
 
チョークのようなものでびっしりと名前が書き殴られている。
 
その中には、**「佐伯太星」**の文字もあった。

【ENEMY IDENTIFIED:ウワサノケイ】

【形態:記憶構成型エネミー】

【性質:言葉に反応し、実体化させる】

「……なんだよ、あれ……」

 太星は一歩、後ずさる。
 その瞬間、空気が震えた。

 どこからともなく、声が聞こえる。
「佐伯ってさ、親も弟も死んでんのに、よく普通に学校来れるよな」
「強がってるだけじゃね? アイツ、壊れてんだよ」
「かわいそうぶってるだけ。俺らのせいじゃねえし」

 ――ズルッ!
 床から“手”が生える。
 机の間から、腐った指が無数に這い出してくる。

「ッ……!」
 
太星の膝が震える。逃げたい。けど、足が動かない。


 そのとき、コルノが前に出た。
「君の過去が、君自身を襲ってくる」

「彼は“ウワサノケイ”。名前の通り、“噂”を実体化して攻撃してくる存在だ」

「……チートすぎだろ……!」
 
コルノは構わず続ける。
「だが、君にはそれに対抗する力がある。“プレイヤー”としての権利だ」


 太星の視界に再び文字が浮かぶ。
【インナープレイ起動可能】

【念じて、行動を選択してください】

「コントローラーなんて、ねえよ……!」

「あるさ」
 
コルノは仮面の奥で微笑んだ。
「君の指先と、思考回路が作り上げた、最強の“戦術”がね」

 太星の脳裏に浮かぶ。何百、何千回と繰り返したゲームの操作。

 コンボ。タイミング。予測回避。照準合わせ。
 
すべてが、頭の中でカチリと噛み合った。

「よし……やってやるよ」
 太星が目を閉じて“選択”した瞬間――

【SKILL UNLOCKED:SIDE DASH FOCUS AIM】

【アクションスキル:ピンポイント・インパクト Lv1】

「——行くぞ!」

 目の前の怪物に向かって、一歩踏み込む。
 その動きはもはや人間のものではなかった。
 スライドし、回り込み、腕を振りかざし——

 ピシィィィィッ!!!

 黒板の表面に、太星の拳がぶち込まれた。
 
そこに刻まれていた「佐伯太星」という文字が、粉々に砕け散る。
 ウワサノケイが叫び声のようなノイズを上げてのけぞった。

「……ちゃんと、見てろよ、コルノ。俺、こういうの、得意だから」
「それは頼もしい。……少しだけ、期待してもいいかな」

2026/02/26 12:25

日間暮
ID:≫ 6yTgHEMno8sog
コメント

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権は日間暮さんに帰属します

TOP