余命が、見えるようになった。
人の頭の上に、数字が浮かんでいるわけじゃない。心臓の音がカウントダウンになるわけでもない。ただ、分かるんだ。
これは直感なんかじゃない。
“あいつ”が砂時計をひっくり返してから、俺はずっと感じてる。自分の命が、どんどん目減りしていくのを。
学校では、何も変わらない顔をしてる。
教師の声も、昼休みの喧騒も、全部遠くに聞こえる。
あの日から、俺の中で「死」が生活の一部になった。
「佐伯、お前んちマジやばくね?なんか呪われてんじゃね?」
休み時間、後ろの席のやつが笑いながら言った。
笑ってるけど目は笑ってない。ざわめく教室、数人の“聞いてた”顔。
俺はただ、ペンを握ったままノートを埋め続けた。
——[小文字]バカだな。俺の家は、もう呪いどころか、壊れてるんだよ。[/小文字]
父さんが死んだとき、母さんは泣く暇もなかった。
年金、保険、支払い、手続き。机の上は書類の山。
真人は小さかったし、俺がなんとかするしかなかった。
だから、俺は金を稼ぐ方法を探した。 「高校生 稼ぐ」「未成年 バイト以外」とか検索しまくって、出てきたのが“ゲームで稼ぐ”ってやつだった。
最初は軽い気持ちだった。
でも、勝てた。配信して、代行して、上手く回れば一晩で一万、二万。
人より少しだけ指が速くて、反射神経が良くて、読みが冴えてる。それだけで金になるって知った。
それが、俺の武器だった。
ゲームで稼いで、勉強して、奨学金でこの学校に入って——
毎日バイトと家事とゲーム。体はギリギリだったけど、それで家族を支えてた。
なのに、母さんも、真人も、守れなかった。
……死ぬなら、せめて意味のある死に方がしたい。
そう思ったから、今日は久しぶりに、あの場所に足を運んだ。
『GAME BASE ZONE』
何年も通っていたゲーセン。真人とよく来ていた場所。
この店の格ゲー台は反応が早くて、音ゲーは筐体メンテが神がかってた。
ここでは勝ち負けがすべてだったし、それが心地よかった。
店内に入ると、相変わらず薄暗くて、空気が少しだけタバコ臭い。
数人のプレイヤーが黙々とゲームに集中してる。
その奥に——見慣れない筐体があった。
黒い筐体。モニターのフレームに装飾もタイトルもない。ただ、中央に白く光る一文字があった。
《[下線]R E S O L V E[/下線]》
……リゾルブ。解決せよ、か。 でもこんなゲーム、見たことない。新作?筐体ごと持ってくるなんて、普通はありえない。
近づくと、筐体の前には誰もいなかった。 なのに、画面がピクリと動いた。
【PLAYER DETECTED——】
【PLAYER NAME:SAEKI TAISEI】
瞬間、全身に寒気が走った。
「……なんで、俺の名前を……」
思わず後ずさったが、画面の下から何かがせり出してきた。
——コントローラーじゃない。 それは[太字]砂時計[/太字]だった。
さっき部屋に現れた男の、あの砂時計と同じ。 小さく、けれど明らかにそれと分かる形状。 それが、ゴトン、と筐体のくぼみにハマる。
【STAGE 1:BEGIN】
【TIME LIMIT:24:00:00】
俺の指が、無意識にスタートボタンを押していた。
人の頭の上に、数字が浮かんでいるわけじゃない。心臓の音がカウントダウンになるわけでもない。ただ、分かるんだ。
これは直感なんかじゃない。
“あいつ”が砂時計をひっくり返してから、俺はずっと感じてる。自分の命が、どんどん目減りしていくのを。
学校では、何も変わらない顔をしてる。
教師の声も、昼休みの喧騒も、全部遠くに聞こえる。
あの日から、俺の中で「死」が生活の一部になった。
「佐伯、お前んちマジやばくね?なんか呪われてんじゃね?」
休み時間、後ろの席のやつが笑いながら言った。
笑ってるけど目は笑ってない。ざわめく教室、数人の“聞いてた”顔。
俺はただ、ペンを握ったままノートを埋め続けた。
——[小文字]バカだな。俺の家は、もう呪いどころか、壊れてるんだよ。[/小文字]
父さんが死んだとき、母さんは泣く暇もなかった。
年金、保険、支払い、手続き。机の上は書類の山。
真人は小さかったし、俺がなんとかするしかなかった。
だから、俺は金を稼ぐ方法を探した。 「高校生 稼ぐ」「未成年 バイト以外」とか検索しまくって、出てきたのが“ゲームで稼ぐ”ってやつだった。
最初は軽い気持ちだった。
でも、勝てた。配信して、代行して、上手く回れば一晩で一万、二万。
人より少しだけ指が速くて、反射神経が良くて、読みが冴えてる。それだけで金になるって知った。
それが、俺の武器だった。
ゲームで稼いで、勉強して、奨学金でこの学校に入って——
毎日バイトと家事とゲーム。体はギリギリだったけど、それで家族を支えてた。
なのに、母さんも、真人も、守れなかった。
……死ぬなら、せめて意味のある死に方がしたい。
そう思ったから、今日は久しぶりに、あの場所に足を運んだ。
『GAME BASE ZONE』
何年も通っていたゲーセン。真人とよく来ていた場所。
この店の格ゲー台は反応が早くて、音ゲーは筐体メンテが神がかってた。
ここでは勝ち負けがすべてだったし、それが心地よかった。
店内に入ると、相変わらず薄暗くて、空気が少しだけタバコ臭い。
数人のプレイヤーが黙々とゲームに集中してる。
その奥に——見慣れない筐体があった。
黒い筐体。モニターのフレームに装飾もタイトルもない。ただ、中央に白く光る一文字があった。
《[下線]R E S O L V E[/下線]》
……リゾルブ。解決せよ、か。 でもこんなゲーム、見たことない。新作?筐体ごと持ってくるなんて、普通はありえない。
近づくと、筐体の前には誰もいなかった。 なのに、画面がピクリと動いた。
【PLAYER DETECTED——】
【PLAYER NAME:SAEKI TAISEI】
瞬間、全身に寒気が走った。
「……なんで、俺の名前を……」
思わず後ずさったが、画面の下から何かがせり出してきた。
——コントローラーじゃない。 それは[太字]砂時計[/太字]だった。
さっき部屋に現れた男の、あの砂時計と同じ。 小さく、けれど明らかにそれと分かる形状。 それが、ゴトン、と筐体のくぼみにハマる。
【STAGE 1:BEGIN】
【TIME LIMIT:24:00:00】
俺の指が、無意識にスタートボタンを押していた。