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砂時計

#2

第一話 次のプレイヤー

 余命が、見えるようになった。
 人の頭の上に、数字が浮かんでいるわけじゃない。心臓の音がカウントダウンになるわけでもない。ただ、分かるんだ。

 これは直感なんかじゃない。

 “あいつ”が砂時計をひっくり返してから、俺はずっと感じてる。自分の命が、どんどん目減りしていくのを。
 学校では、何も変わらない顔をしてる。

 教師の声も、昼休みの喧騒も、全部遠くに聞こえる。

 あの日から、俺の中で「死」が生活の一部になった。

「佐伯、お前んちマジやばくね?なんか呪われてんじゃね?」

 休み時間、後ろの席のやつが笑いながら言った。

 笑ってるけど目は笑ってない。ざわめく教室、数人の“聞いてた”顔。

 俺はただ、ペンを握ったままノートを埋め続けた。

——[小文字]バカだな。俺の家は、もう呪いどころか、壊れてるんだよ。[/小文字]

 父さんが死んだとき、母さんは泣く暇もなかった。

 年金、保険、支払い、手続き。机の上は書類の山。

 真人は小さかったし、俺がなんとかするしかなかった。
 だから、俺は金を稼ぐ方法を探した。
「高校生 稼ぐ」「未成年 バイト以外」とか検索しまくって、出てきたのが“ゲームで稼ぐ”ってやつだった。
 最初は軽い気持ちだった。

 でも、勝てた。配信して、代行して、上手く回れば一晩で一万、二万。

 人より少しだけ指が速くて、反射神経が良くて、読みが冴えてる。それだけで金になるって知った。
 それが、俺の武器だった。

 ゲームで稼いで、勉強して、奨学金でこの学校に入って——

 毎日バイトと家事とゲーム。体はギリギリだったけど、それで家族を支えてた。
 なのに、母さんも、真人も、守れなかった。
 ……死ぬなら、せめて意味のある死に方がしたい。
 そう思ったから、今日は久しぶりに、あの場所に足を運んだ。

『GAME BASE ZONE』

 何年も通っていたゲーセン。真人とよく来ていた場所。

 この店の格ゲー台は反応が早くて、音ゲーは筐体メンテが神がかってた。

 ここでは勝ち負けがすべてだったし、それが心地よかった。
 店内に入ると、相変わらず薄暗くて、空気が少しだけタバコ臭い。

 数人のプレイヤーが黙々とゲームに集中してる。
 その奥に——見慣れない筐体があった。
 黒い筐体。モニターのフレームに装飾もタイトルもない。ただ、中央に白く光る一文字があった。

《[下線]R E S O L V E[/下線]》

 ……リゾルブ。解決せよ、か。
 でもこんなゲーム、見たことない。新作?筐体ごと持ってくるなんて、普通はありえない。
 近づくと、筐体の前には誰もいなかった。
 なのに、画面がピクリと動いた。


【PLAYER DETECTED——】
【PLAYER NAME:SAEKI TAISEI】

 
瞬間、全身に寒気が走った。

「……なんで、俺の名前を……」

 思わず後ずさったが、画面の下から何かがせり出してきた。


 ——コントローラーじゃない。
 それは[太字]砂時計[/太字]だった。

 さっき部屋に現れた男の、あの砂時計と同じ。
 小さく、けれど明らかにそれと分かる形状。
 それが、ゴトン、と筐体のくぼみにハマる。

【STAGE 1:BEGIN】
【TIME LIMIT:24:00:00】

 俺の指が、無意識にスタートボタンを押していた。

2026/02/26 10:31

日間暮
ID:≫ 6yTgHEMno8sog
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