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魔法少女なんて

魔法少女。
それは例えどんなに苦しくなっても。
諦めては、やめてはいけない仕事。
少なくとも私はそう思っていた。
杖を構える。
…近くに敵がいる。
そう察知した私は決めポーズを取り、下から出てきた光に包まれた。
この世界では、邪悪な敵に立ち向かう職業の人は多くいる。
騎士、狩人、ドワーフ、単なる魔法使い。
…そう、魔法少女は絶対的必要な存在ではなくなってしまったのだ。
私の契約者である猫の使い魔が、訝しげに私を
見た。
「君、分かってるんでしょう?
世間に*いらない*って言われてるの。」
私は無視して装備を身に着け始める。
戦闘服、ブローチ、ブーツ、ステッキ…。
「着替えも遅くなってるよ。
変身、初めは速かったのに。」
…チョーカー…ヘアチェンジ…。
「他に戦う人たちもいるわけだしさ。
それに、君はやっぱりもう…」
「うっさい!」
怒鳴ってしまった瞬間、包んでいたはずの光は消え、元の姿に戻った私と、使い魔のパンサーだけがその場に取り残された。
パンサーは、キッと鋭く睨みつけた私のことを、呆れた眼差しで見ていた。
「…見なよ。」
彼の指す方向には、さっきまで敵がいたはずの所には、騎士たちの討伐した痕跡が残っているだけだった。
「契約してる僕から言えることではないけれどさ。もうやめたほうが君のためじゃない?」
 「やめて」
自分でもこんなに冷たい声がでたのは初めてだった。
「私は魔法少女なの。
皆を救いたい気持ちを魔法に変えて…戦ってるの。
それが、私の生きがいなの…!」
グッと拳を丸めた。
行き場のない怒りと、敵でないはずの彼にさえ理解してもらえない悲しさをどうにかしたかった。
「…なんで君がそんなに魔法少女にこだわるのか、僕には分からないよ。」
パンサーは苦笑いし、ゆらゆらとしっぽを揺らした。
「私は…」
「本当に皆のためなの?
君の…ただの自己満足じゃなくて?」
上から被せられ、更に追い打ちを食らう。
「…!」
自暴自棄のようになって、無理やりもう一度の変身を試みる。すると、下からさっきよりも弱々しくなった光が出てきて、そのまま包みこまれた。
…確かにそうなのかもしれない。
パンサーに言われたことは、今まで私が目を逸らしてきたことだった。
彼の言うとおり、身勝手なのは大人でも、メディアでも、敵でも、子供でもなく、私自身なのかもしれない。
それでも私は、魔法少女として皆のために戦いたかった。自分のやったことで喜んでくれる人がいる。私を応援してくれる人がいる。
魔法少女は、私の存在意義のようなものだったから。

さっきの敵は、騎士達に倒されてもういない。
それでも、私は変身をやめない。
どれだけ遅くても…ゆっくりと変身を続ける。
どんなに必要ないと言われようと。
どんなにメディアに最後の魔法少女とバカにされても。

直接的には言われずとも、呼ばれる機会は減って。
変身姿も遅くなって手間取るようになってからは誰にも観てもらえなくなって。
結局、どんな役柄でもどうでもいいと、思われればすぐに捨てられてしまうのだ。

でも、私は辞め方なんて知らない。
魔法少女になる方法は星の数ほどあっても、普通の人間に戻ってどう生活すればいいのか。どう切り替えればいいのかなんて。
誰も教えてくれない。
だから、私は最後の一人になっても魔法少女を続けるしかないんだ。

始めたての頃より、ずっと遅くなった変身。
やっと服だけ着替え終わり、ステッキを握りしめる。
私は…私のやりたいように戦いたい。
そうして未完成のまま、私は光の中から出た。
この状態で一体でも敵を倒せば…皆見直してくれるのかな。
ここら辺の敵は騎士団が狩り尽くしているだろう。
そう高をくくっていたのがよくなかった。
「おい!後ろ!」
「…えっ」
うまく受け身を取れずに転んでしまった。
その上から怪獣に右腕を踏み潰される。
「っ…!」
幸い、武器であるステッキを使える利き手はやられなかった。
激痛を堪え、よろつきながら立ち上がる。
「…アンタのせいだ。」
目の前の大きな怪獣の影に、飲み込まれそうになった自分が。
周りに流されやめてしまった仲間たちが。
役立たずだ、と嘲笑してきた騎士団が。
情けなくて、悔しくて、どうしようもない後悔が心を占める。
何度も魔法少女を諦めかけてきたのも。
仲間を止められなかったのも。
バカにしてきた奴らに何も言い返せなかったのも。
全部全部、目の前の怪獣のせいにしたかった。
「そうすれば…アンタを倒せば…」
腕や足など体の部位は、やられてもすぐ治るようなものじゃない。私だって人間だから。
「ゼロに戻せるってことだよね…?」
ステッキを構える。もはや敵にさえ八つ当たりして、一番ダサいのは私だ。
分かってるけど。
今だけは、どうしても私以外のせいにしたかった。
「なら、アンタを塵にするだけ…!」
魔法弾を何度も撃つ。怪獣は暴れて、肩の部分の服が焦げてしまった。
でもそんなのはもうどうでもいい。
怪獣はまるでもう一人の自分のようで。
どちらかが気を抜けば、倒されるような、そんな接戦だった。
一人になった私を、今となっては誰も必要としていない。時々毒のあることを言って何人もの人を敵に回してきた私の異名。
*孤高の薔薇*。
それならば、その名にふさわしく。
私は散りたかった。
もし、この戦いに勝ったとしたら…
奴らには到底及ばないくらい、強く一人でも美しく花開いてやろう。
怪獣の炎と私のステッキから出た魔法弾が同時に出た。威力が全く同じなんてことはないだろう。お互いかなり体力も削られていて、当たれば死んでしまうだろう。
私が死ぬか、怪獣が死ぬか。
どっちに転んでも、もう…私は満足だ。
魔法少女。
それは例え、どんなに苦しくなっても。
諦めては、やめてはいけない仕事。
少なくとも私はそう思っていた。

作者メッセージ

魔法少女を題材に書いている方々の作品に影響を受けて書いてみました。
魔法少女は単に明るい世界だけじゃないと思ったのでダークめの路線で行きました。
ああいう希望を与える側が逆に堕ちてしまうのが、個人的には結構好きです。

最後魔法少女はどうなったのか。読者の皆様の考えをコメントで教えていただけると嬉しいです!書く側としてニヤニヤ読ませていただきます。

2025/12/20 20:42

日村紡音
ID:≫ 0pm1lJ9rkqZW.
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魔法少女自己満役立たず無能代わりはいる

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