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#4

ロスティング・ミュージカル 第二話 淀んだ夜の帷

 愛。
 いや、おそらくないのだろう。私も、子を授かったとして愛す方法がわからない。私だって人形のように育ててしまうだろう。それ以外の教育方を知らないもの。
 愛。
 だって私も、愛がなにかわからないから。
 愛。
 ……どこで知ったのかしら。


 ──思い出せない。

 気がつけば辺りは真っ暗になっていた。雨はやみ、分厚い雲が夜空を覆い隠している。びしょ濡れだったはずのボロの服はパリパリに乾き切り、肌にくっついている。
「……やだな」
 今日声を上げたのはこの一言が始めてだ。だけど、私は〈人形〉。誰かに聞かれなかっただろうか。
 ……耳を澄ます。誰もかも寝静まっているようだ。

 私はこの町で最も失敗作な〈人形〉だった。使い物にならないと、実の両親からたらい回しにされてきた。今〈父〉と呼んでいる〈父〉は私を押し付けられただけの、いわば被害者。
 だから誰も私を必要としていない。しつけのために仕方なく〈父〉は私を飼っている。

 この町から、いなくなれば。少なくともここよりいい場所があると旅の人たちが教えてくれた。そこに行きたい。
 〈普通〉を知りたい。

 こんな時間なら、とっくに人形用のオリの中にしまわれる。小鳥が逃げないようにケージに入れるように。犬が逃げないようにリードを付けるように。
 私は今、夜皆が寝ていると言うのに外にいる。とうとう〈父〉は私を見放したのか。
 好都合だ。

 〈父〉の住む家は小高い丘の上にある。そこまで大きいわけでもないこの町の、出入り口が見えるくらいには見晴らしがいい。

 ──行こう。
 そう思った途端風の音が聞こえるようになった。

 ……そう言えば、ずっと雨に打たれて体が冷えている。街の外に出たら暖を取りたいな……。

作者メッセージ

ちなみに〈父〉の住んでる家は木造ですね。丘下の町はレンガのお家ですが。
さて、この〈父〉。
愛はあるのでしょうか?

2026/05/02 15:14

紅月麻実
ID:≫ 64arcCWCK.3.6
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