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私が描く作品はシリアスな場面が多く、読んでいて心が重くなるような描写が含まれていることがあります。
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ペタペタペタ。
私はレンガの石畳をひたすら歩き続けた。もちろん、〈人形〉に靴なんて与えられるわけもない。
雷の轟く暗雲の下で、町の出入り口を目指してひたすら歩き続けた。風が冷たい音を立てて頬に当たる。雨が降ったばかりなのにその風は生ぬるく、冷たいのは音だけだった。雨で冷え切った体も、多少は温まるだろうか。
〈父〉のすんでいた丘より下の町は基本レンガでできている。ステンドグラスでできた凝った窓が唯一の個性とまで言えるだろう。とはいえ、ここはあまり都会の方ではない。遠くの街にはガイトウという明かりがあるらしいが、もちろん見たことはない。家の中に、明かりが灯ることもない。どこまで行っても真っ暗で、先なんて無いんじゃないかという不安にかられる。
それでも歩いた。ある地点から草の香りがし始めた。嗅覚は生きていたようだ。
ドンッ!
「イタッ……壁?」
あまりに前が見えないために壁にぶつかってしまった。幸か不幸か、それは旅人を歓迎する入り口のアーチだった。
「聞かれてない、わよね……」
壁にぶつかった音はそれなりに大きかった。誰かに聞かれているかも知れない。耳を澄ます。耳を澄まして、そこでようやく気がついた。今朝耳が聞こえなくなったばかりだ。風の音が聞こえるようになったとはいえ、人の声が聞こえるとは限らない。
「……」
さっさと出よう。それがいい。出ていってしまえば誰も追いかけたりはしない。自分は失敗作なのだ。
草を踏みしめた感覚がした。真っ暗で何も見えないが外に出たのだろう。手探りで周りになにか無いか調べる。だめだ、暗すぎて何もわからない。
明るくなるまで待とうか。いや、ここは町からかなり近い場所のはず。そんなの連れ戻されて終わりだ。
……遠くで何かが光った気がした。その光を頼りに進むと、いつの間にか鬱蒼とした森の中に入っていたようだ。落ち葉を踏みしめ、木々に手をついてたどり着いた先に落ちていたのは、表面にヒビが入った大きな鏡だ。
いや、鱗に見える。だが鱗の鏡など、龍でしか作らない。まさか龍鱗鏡?
……まさかね、そんな高価なものがこんな街のそばににおちているはずがないわ。
手にとってよく見ると、鏡面はとても美しかった。ヒビは入っているものの、それでも十分使える鏡だろう。
あの町においてはただの鏡でも高価なものとして扱われる。何の鱗だろうとコレは十分な価値があるのは間違いない。龍は危険で討伐難易度も高いと旅人の噂で聞いた。
何であろうと、街から遠く自分を導いてくれたのはこの鏡だ。
……大事にしよう。毎日鏡面を拭って手入れをしよう。写すべきものなんて無いけれど、それでもコレはまだ捨てられるべきじゃないもの。
胸の中が温かい気がした。何の気のせいか、それはとても優しく感じる。
いつの間にか、私にとって一抱えもある龍の鏡を抱いて、朝になるまで横になっていた。
私はレンガの石畳をひたすら歩き続けた。もちろん、〈人形〉に靴なんて与えられるわけもない。
雷の轟く暗雲の下で、町の出入り口を目指してひたすら歩き続けた。風が冷たい音を立てて頬に当たる。雨が降ったばかりなのにその風は生ぬるく、冷たいのは音だけだった。雨で冷え切った体も、多少は温まるだろうか。
〈父〉のすんでいた丘より下の町は基本レンガでできている。ステンドグラスでできた凝った窓が唯一の個性とまで言えるだろう。とはいえ、ここはあまり都会の方ではない。遠くの街にはガイトウという明かりがあるらしいが、もちろん見たことはない。家の中に、明かりが灯ることもない。どこまで行っても真っ暗で、先なんて無いんじゃないかという不安にかられる。
それでも歩いた。ある地点から草の香りがし始めた。嗅覚は生きていたようだ。
ドンッ!
「イタッ……壁?」
あまりに前が見えないために壁にぶつかってしまった。幸か不幸か、それは旅人を歓迎する入り口のアーチだった。
「聞かれてない、わよね……」
壁にぶつかった音はそれなりに大きかった。誰かに聞かれているかも知れない。耳を澄ます。耳を澄まして、そこでようやく気がついた。今朝耳が聞こえなくなったばかりだ。風の音が聞こえるようになったとはいえ、人の声が聞こえるとは限らない。
「……」
さっさと出よう。それがいい。出ていってしまえば誰も追いかけたりはしない。自分は失敗作なのだ。
草を踏みしめた感覚がした。真っ暗で何も見えないが外に出たのだろう。手探りで周りになにか無いか調べる。だめだ、暗すぎて何もわからない。
明るくなるまで待とうか。いや、ここは町からかなり近い場所のはず。そんなの連れ戻されて終わりだ。
……遠くで何かが光った気がした。その光を頼りに進むと、いつの間にか鬱蒼とした森の中に入っていたようだ。落ち葉を踏みしめ、木々に手をついてたどり着いた先に落ちていたのは、表面にヒビが入った大きな鏡だ。
いや、鱗に見える。だが鱗の鏡など、龍でしか作らない。まさか龍鱗鏡?
……まさかね、そんな高価なものがこんな街のそばににおちているはずがないわ。
手にとってよく見ると、鏡面はとても美しかった。ヒビは入っているものの、それでも十分使える鏡だろう。
あの町においてはただの鏡でも高価なものとして扱われる。何の鱗だろうとコレは十分な価値があるのは間違いない。龍は危険で討伐難易度も高いと旅人の噂で聞いた。
何であろうと、街から遠く自分を導いてくれたのはこの鏡だ。
……大事にしよう。毎日鏡面を拭って手入れをしよう。写すべきものなんて無いけれど、それでもコレはまだ捨てられるべきじゃないもの。
胸の中が温かい気がした。何の気のせいか、それはとても優しく感じる。
いつの間にか、私にとって一抱えもある龍の鏡を抱いて、朝になるまで横になっていた。