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私が描く作品はシリアスな場面が多く、読んでいて心が重くなるような描写が含まれていることがあります。
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「──き! 咲! 起きなってば!!」
「……はっ!?」
咲は突っ伏して寝ていたのを思いきし顔を上げた。挙げた頭が勢いよく梨花の顔面に衝突しそうになったのを反射で回避しつつ、梨花が心配そうに咲に話しかけた。
「ちょっ、あぶないなぁ……っていうか、だいじょぶそ? めっちゃ居眠りしてたじゃん」
「あはは……ごめんごめん。なんか、夢を見たんだよね」
「夢?」と聞き返す梨花を見ながら咲は説明した。
砂っぽい、月面みたいな銀色の地面と真っ暗な空。いや、空と言えたのかもわからないが見上げてそこにあったのはただ真っ黒な空間。壁は普通の岩に見えたが、むしろ神聖な雰囲気の地面と合っていなかった。
「へー、変な夢だね。でもそんなきれいなとこなら行ってみたいな〜」
「そう? ……私ね、なんだかあの場所悲しいなって思ったんだ。だけど、その裏に優しさもあるような気がして」
「悲しさと優しさ〜? なんか一時間目の神話みたいなこと言うね」
「たしかに……。なんだろ、神話の授業で妄想でもし始めたのかな」
「それだったらチャイムで流石に起きるでしょ」と梨花に茶々を入れられる。それもそうかも知れない。休み時間は10分で、残り2分しかない。咲は急いで次の授業の用意を済ませ、数学の要点をノートに写させてもらいながら前の席の梨花と会話を続ける。
「そうだ、夢の最後にきれいな銀色の花が見えたんだよね」
「銀色の花〜? あ、そこx=じゃなくてy=ね」
「あ、ありがと。そうそう、銀色! 見たことがない花だったんだけど、最初見渡したとき生えてなかったんだよね〜……。ねぇ、これどの公式使うの?」
「それはこっちのページのこれだね〜。それにしても目覚める瞬間に花かぁ〜……夢占いで検索してみる?」
「なるほど、それでこの解になるのか……。って夢占いってそんなのでも出てくるの?」
「そだよ〜、検索っと……えーっと、『夢に出てくる花は一般的に「才能の開花」「願いが叶う」「愛情の芽生え」などを象徴します』だってさ。まさにうちらのことじゃん!」
「いやまっさか〜」
[太字][大文字][中央寄せ]キーンコーンカーンコーン[/中央寄せ][/大文字][/太字]
そんな会話をしつつ、あっという間に2分なんて過ぎ去り3時間目、生物基礎の授業が始まった。
……が、先生が来るのがやたら遅い。廊下がバタバタしている。
「どうしたんだろ……今のうちに数学のここだけ教えてっ!!」
「はいはい、それは『x y = Aとする』って注意文があるから、それは一旦ひとかたまりに考えて──」
そのとき、バタバタしていた廊下が静まり、普段開きっぱなしの教卓側のドアが一旦しまった。しまったあと生物基礎の先生とともに担任の先生がはいってきた。
「「なんで?」」
わざわざ締める必要は合ったのだろうか。はいってきた担任の先生は、廊下に向けて待っててのハンドサインをして教卓に立った。
「えー、遅れてきた転校生を紹介する。はいってきなさい」
瞬間教室がざわつく。
「誰だろ!? 女? 女? 美女かな!?」
「イケメンだったらいいな〜」
静かにドアが開く。
「失礼します」
はいってきた瞬間、大きかったざわめき声は小さい嫌悪の声に変わった。そこらじゅうから「ねぇ、あの銀髪何? やばくない?」「うち染めるの禁止だったよな……」「地毛? ガチ?」と聞こえない程度の野次が飛んでいる。
(かわいそう……そんな目で見なくっても……)
担任の先生が一つ咳払いをし、その場が完全に静まった。
「えー、自己紹介を頼む。授業があるから終わったらすぐ席につくように。君の席は咲の隣だよ」
担任は指を指して、咲の右隣を指した。銀髪の転校生は静かにコクリと頷き、授業があるのか担任は小走りに出ていった。
「九条玲生です。よろしく」
そう淡々に告げ、さっさと席についてしまう。ただでさえ髪の印象でいいイメージがないのに流石にどうなのだろうか。
「あ……あの、九条くん。私、咲って言います。これから……よろしく、ね?」
咲は恐る恐る話しかけてみた。だが帰ってきた答えはやはり淡々と「そう、よろしく」の一言だけだった。
「植物は、クロロフィルやミトコンドリアという緑色の色素を含む葉緑体を持っています。これらを使って光合成を行うのが通常の植物ですが──」
咲は授業どころではなかった。計算の出てこない生物基礎は得意分野に入れているがどうも隣の転校生が気になって仕方がない。銀色の地面、銀色の花、そして銀髪の転校生。すべてが銀。さすがに夢との関係性を疑わざるをえない。
「一方、葉緑体を持たない植物があります。それらは主に菌類から栄養を奪うのですが、ここでさらに特殊な植物があります。一般的には深淵植物と呼ばれている『アビス性嫌光植物』と言うものです。嫌悪な光と書いて『けんこう』と読みます。これらは日光に触れるととたんに色を失い銀色になるという特徴があります。テストに出るのでしっかり覚えるように」
『アビス性嫌光植物』とノートに書いて少し思いふけった。陽の光に触れると銀色になる深淵植物。もしや、夢で見たあの場所はアビスの底だったのだろうか。
学校から数キロ離れたところに『アビス』と呼ばれる大きな竪穴がある。アビス研究のための施設が立ち並び、アビス性地質学なんて学問も出来上がっていると聞いたことがある。
(どんな、ところなんだろう)
咲は考えながら、授業の内容を書き写すのだった。
「……はっ!?」
咲は突っ伏して寝ていたのを思いきし顔を上げた。挙げた頭が勢いよく梨花の顔面に衝突しそうになったのを反射で回避しつつ、梨花が心配そうに咲に話しかけた。
「ちょっ、あぶないなぁ……っていうか、だいじょぶそ? めっちゃ居眠りしてたじゃん」
「あはは……ごめんごめん。なんか、夢を見たんだよね」
「夢?」と聞き返す梨花を見ながら咲は説明した。
砂っぽい、月面みたいな銀色の地面と真っ暗な空。いや、空と言えたのかもわからないが見上げてそこにあったのはただ真っ黒な空間。壁は普通の岩に見えたが、むしろ神聖な雰囲気の地面と合っていなかった。
「へー、変な夢だね。でもそんなきれいなとこなら行ってみたいな〜」
「そう? ……私ね、なんだかあの場所悲しいなって思ったんだ。だけど、その裏に優しさもあるような気がして」
「悲しさと優しさ〜? なんか一時間目の神話みたいなこと言うね」
「たしかに……。なんだろ、神話の授業で妄想でもし始めたのかな」
「それだったらチャイムで流石に起きるでしょ」と梨花に茶々を入れられる。それもそうかも知れない。休み時間は10分で、残り2分しかない。咲は急いで次の授業の用意を済ませ、数学の要点をノートに写させてもらいながら前の席の梨花と会話を続ける。
「そうだ、夢の最後にきれいな銀色の花が見えたんだよね」
「銀色の花〜? あ、そこx=じゃなくてy=ね」
「あ、ありがと。そうそう、銀色! 見たことがない花だったんだけど、最初見渡したとき生えてなかったんだよね〜……。ねぇ、これどの公式使うの?」
「それはこっちのページのこれだね〜。それにしても目覚める瞬間に花かぁ〜……夢占いで検索してみる?」
「なるほど、それでこの解になるのか……。って夢占いってそんなのでも出てくるの?」
「そだよ〜、検索っと……えーっと、『夢に出てくる花は一般的に「才能の開花」「願いが叶う」「愛情の芽生え」などを象徴します』だってさ。まさにうちらのことじゃん!」
「いやまっさか〜」
[太字][大文字][中央寄せ]キーンコーンカーンコーン[/中央寄せ][/大文字][/太字]
そんな会話をしつつ、あっという間に2分なんて過ぎ去り3時間目、生物基礎の授業が始まった。
……が、先生が来るのがやたら遅い。廊下がバタバタしている。
「どうしたんだろ……今のうちに数学のここだけ教えてっ!!」
「はいはい、それは『x y = Aとする』って注意文があるから、それは一旦ひとかたまりに考えて──」
そのとき、バタバタしていた廊下が静まり、普段開きっぱなしの教卓側のドアが一旦しまった。しまったあと生物基礎の先生とともに担任の先生がはいってきた。
「「なんで?」」
わざわざ締める必要は合ったのだろうか。はいってきた担任の先生は、廊下に向けて待っててのハンドサインをして教卓に立った。
「えー、遅れてきた転校生を紹介する。はいってきなさい」
瞬間教室がざわつく。
「誰だろ!? 女? 女? 美女かな!?」
「イケメンだったらいいな〜」
静かにドアが開く。
「失礼します」
はいってきた瞬間、大きかったざわめき声は小さい嫌悪の声に変わった。そこらじゅうから「ねぇ、あの銀髪何? やばくない?」「うち染めるの禁止だったよな……」「地毛? ガチ?」と聞こえない程度の野次が飛んでいる。
(かわいそう……そんな目で見なくっても……)
担任の先生が一つ咳払いをし、その場が完全に静まった。
「えー、自己紹介を頼む。授業があるから終わったらすぐ席につくように。君の席は咲の隣だよ」
担任は指を指して、咲の右隣を指した。銀髪の転校生は静かにコクリと頷き、授業があるのか担任は小走りに出ていった。
「九条玲生です。よろしく」
そう淡々に告げ、さっさと席についてしまう。ただでさえ髪の印象でいいイメージがないのに流石にどうなのだろうか。
「あ……あの、九条くん。私、咲って言います。これから……よろしく、ね?」
咲は恐る恐る話しかけてみた。だが帰ってきた答えはやはり淡々と「そう、よろしく」の一言だけだった。
「植物は、クロロフィルやミトコンドリアという緑色の色素を含む葉緑体を持っています。これらを使って光合成を行うのが通常の植物ですが──」
咲は授業どころではなかった。計算の出てこない生物基礎は得意分野に入れているがどうも隣の転校生が気になって仕方がない。銀色の地面、銀色の花、そして銀髪の転校生。すべてが銀。さすがに夢との関係性を疑わざるをえない。
「一方、葉緑体を持たない植物があります。それらは主に菌類から栄養を奪うのですが、ここでさらに特殊な植物があります。一般的には深淵植物と呼ばれている『アビス性嫌光植物』と言うものです。嫌悪な光と書いて『けんこう』と読みます。これらは日光に触れるととたんに色を失い銀色になるという特徴があります。テストに出るのでしっかり覚えるように」
『アビス性嫌光植物』とノートに書いて少し思いふけった。陽の光に触れると銀色になる深淵植物。もしや、夢で見たあの場所はアビスの底だったのだろうか。
学校から数キロ離れたところに『アビス』と呼ばれる大きな竪穴がある。アビス研究のための施設が立ち並び、アビス性地質学なんて学問も出来上がっていると聞いたことがある。
(どんな、ところなんだろう)
咲は考えながら、授業の内容を書き写すのだった。