[斜体]「はじめましての方ははじめまして! るみねーじゅと申します₍ᐢ - ̫ - ᐢ₎🎀」[/斜体]
……なんて、SNSのタイムラインに流れてくる私は、キラキラした魔法の粉でも浴びているように見えるかもしれない。
でも、画面の向こう側の現実はこうだ。
「……ゔっ、ごほっ」
私は今、もそもそと食パンを食べている。
どうしてレンジで温めた食パンの耳というのは、こんなにも強情で硬いのだろうか。
どうしてこんなに、ゴムのようにびよんと伸びるんだ。
おまけに、口の中の水分を容赦なく奪い去っていく。
牛乳がなければ、私の喉は今ごろ砂漠化していただろう。
丁寧な暮らし? 焼きたてのクロワッサン?
そんなものは、異世界のファンタジーだ。
さて、腹ごしらえが済んだら次は着替えである。
私は、部屋の隅にそびえ立つ「洗濯済みの布の山」の前に立った。
…誤解しないでほしい。
私は毎日洗濯機を回しているし、一般人並みの生活水準は維持している。
ただ、それを「畳んでタンスにしまう」という工程が、人類にはまだ早すぎる高難易度タスクなだけだ。
「今日は……これだ」
山の中から、比較的シワの少ない服を一本釣りする。
もちろん、美容DAYだってある。
プチプラコスメを塗りたくり、鏡の前で1時間を費やして「るみねーじゅ」という虚像を作り上げる日もある。
だが今の私は、牛乳でパンの耳と格闘する、ただのホモ・サピエンスだ。
ここで私は、ふと思うのだ。
世の中の「綺麗」とか「正解」とされるものは、このパンの耳に似ている。
外側から見れば形を整えるために必要不可欠なフレームだが、いざ向き合ってみれば硬くて、無骨で、飲み込むのに苦労する。
[漢字]キラキラした理想[/漢字][ふりがな]パンの白い部分[/ふりがな]だけを食べて生きていければいいけれど、現実はいつだって、硬い「耳」の部分がセットでついてくる。
私たちは、その硬さに文句を言い、[漢字]牛乳[/漢字][ふりがな]妥協や癒し[/ふりがな]で流し込みながら、なんとか今日という日を飲み込んでいく。
「……よし、メイクするか」
推しのテレビ番組が始まるまで、あと3時間。
町中に轟くほどの歓喜の声を上げる準備のために、私はようやく、布の山から這い出した。