[斜体][太字]2022年 夏:港区・オフィスビル[/太字][/斜体]
都内のビルの一室。窓の外には夏の強い日差しが照りつけている。
あなた こと ユウは、デスクを挟んでエージェントと向き合っている。
手元には、これまでの経歴をまとめた履歴書がある。
エージェントが資料に目を落としながら口を開く。
「いくつか候補がありますが、大手レーベルの制作デスクか、あるいはマネジメントの現場。どちらに興味がありますか?」
あなたは少し考え、マネジメントの方を選ぶ。
「そうですか。実は今、テイルズ…Project-mgaで欠員が出る予定がありまして。正式名称、Mrs. GREEN APPLEですね。知っていますか?」
「名前と、有名な曲をいくつか知っている程度です」
あなたは正直に答える。
フェーズ2が始まり、ちょうど「ダンスホール」が街中で流れ始めている時期だ。
テレビで見かける彼らは華やかだが、自分にとっては数あるアーティストの中の一組、という認識でしかない。
「今は非常に忙しい現場だと聞いています。まずはアシスタント・マネージャーとしての採用になりますが、面接へ進みますか?」
「お願いします」
あなたは短く答え、ペンを動かした。
[太字][斜体]2022年 秋:都内・リハーサルスタジオ[/斜体][/太字]
書類選考と数回の面接を経て、採用が決まった。
初出勤の日。あなたは現場チーフマネージャーの車に同乗し、都内にあるリハーサルスタジオへと向かっている。
「今日は新曲のバンドリハだ。メンバーはもう入っている。まずは挨拶だけ済ませ、基本は後ろで見学していること」
チーフの言葉に頷き、重い防音扉を開ける。
スタジオ内には、大音量のドラムとギターの音が充満している。
楽器の配線が床を這い、アンプの熱気がこもっている。
センターのホワイトボードには「ケセラセラ」という仮タイトルが書かれている。
マイクの前に立つ大森元貴、ギターを調整する若井滉斗、キーボードの前に座る藤澤涼架。
彼らはまだ、入り口に立ったあなたに気づいていない。
「休憩!」
チーフが声をかけると、音が止まり、三人が一斉にこちらを振り返る。
「あ、新しく入った……」
若井がタオルで汗を拭きながらこちらを見る。
「今日からアシスタントとして入る、新人マネージャーです」
チーフの紹介を受け、あなたは一歩前に出て、深く頭を下げた。
「ユウと申します。よろしくお願いします」
三人は「よろしくお願いします!」と口々に返し、すぐにまた楽譜の相談に戻っていく。
あなたは壁際のパイプ椅子に座り、ノートを取り出した。
これが、後の「Mrs. GREEN APPLE マネージャー」としての、最初の記録となった。