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【実話】ちいさな恋ものがたり。- いのち短し恋せよ少女!♡ -

#1

冬の雪と消えない名前




人が少ない、放課後の玄関。
冷え切った空気の中で、自分の吐き出した息が白くにごっては消えていく。


「もう、やめるって決めたんだから」


私はマフラーに顔を埋め、自分に言い聞かせた。
ジンくんへの気持ちを「おしまい」にすると決めたのは、ちょうど一週間前。
彼にとって私は、クラスメイトのその他大勢でしかないと悟ったからだ。


「……あ、お疲れさま。〇〇さん」


背後から聞こえた声に、心臓が跳ねた。
振り返ると、そこにはマフラーもせずに首をすくめたジンくんが立っていた。
部活帰りなのか、少しだけ紅潮した頬が冬の夕暮れに溶けている。


「……あ、ジンくん。お疲れさま」


心臓の音がうるさい。
目を合わせないように、必死で靴箱の隅を見つめた。

やめるって決めたのに。
名前を呼ばれただけなのに。
心の中の「諦める」という文字が足元の雪みたいに脆く崩れていくのがわかった。


「今日、数学の時助けてくれてありがと。〇〇さんがプリントまとめてくれたから、早く終われたわ」


「……ううん。別に、ついでだったから」


ほんの数秒のやり取り。

彼は「じゃあ、また明日。風邪ひくなよ〜」と軽く手を振って、自転車置き場の方へ走っていった。

一人残された階段で、私はしばらく動けなかった。
彼が去った後の冷たい空気の中に、まだ彼の呼んだ「私の名前」が残っているような気がして。


全然ダメだ。
ちっともやめられてない。
「〇〇さん」なんて、誰にでも使うよそよそしい呼び方なのに。
ただの挨拶なのに。


…それでも。

彼と話せた瞬間の温度が、凍えそうな指先までじわじわと温めていく。

私はマフラーに深く顔を沈めた。



「……ばかだなぁ、私」




冬の空は、泣きたくなるほど高くて青かった。

作者メッセージ

風が冷たく凍える冬ですが
心のあたたかさが身に染みる季節ですね♩

2025/12/21 11:09

るみねーじゅ
ID:≫ .1CEc41J8TDWw
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短編集恋愛実話

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