休み時間の教室は、暖房のついたエアコンのせいで少し埃っぽくて、外の寒さを忘れるくらいには暖かい。
でも私の心の中には、ずっと冷たい隙間風が吹き抜けている。
視線の先には、ジンくんの席。
そこには、当然のように椅子の背もたれに手をかけ、彼に身を乗り出して笑うサヤの姿があった。
「ねえジン、さっきの先生の言い方、超ウケなかった?」
サヤの明るい声が、教室の喧騒を突き抜けて届いてくる。
彼女は別に、ジンくんが好きなわけじゃない。
それは見ていればわかる。
誰に対してもあんなふうに距離が近くて、無邪気に笑う。
男子たちがみんな、彼女のその「特別扱い」を期待して彼女の周りに集まってくることも、私は知っている。
「ああ、あれか。俺も寝そうになったわ」
ジンくんも、楽しそうに応じている。
私に向ける「お疲れさま」とは違う、肩の力の抜けた、等身大の笑顔。
……胸の奥が、ぎゅっと締め付けられた。
サヤのことは、嫌いじゃない。
でも、苦手だ。
彼女が持つ、誰にでも愛される自信と、狙っていないのに人を惹きつけてしまうあの空気が。
私が必死で隠している「ジンくんへの気持ち」なんて、彼女にとってはきっと、想像もつかないくらい小さなことに見えるんだろう。
「〇〇さん、どうかした?」
隣の席の子に声をかけられ、ハッとして視線を落とした。
手に持っていたシャーペンを、いつの間にか強く握りすぎていた。
「ううん、なんでもない。ちょっと考え事してただけ」
適当に笑って、開いたままの教科書に目をやる。
文字が滑って、全然頭に入ってこない。
ふと顔を上げると、サヤがジンくんの肩を軽く叩いて、そのまま彼と何事かを楽しそうに内緒話をしている。
ジンくんが、彼女の言葉に楽しそうに眉を下げて笑う。
その瞬間、心の中の「やめる」という決意が、どす黒い嫉妬に塗りつぶされていくのがわかった。
サヤになりたいわけじゃない。
あんなふうに、無邪気に彼と笑い合える関係になりたいだけなのに。
サヤにとっては「ただの日常」であるその場所が、私にとっては、どれだけ願っても届かない場所。
「……バカみたい」
視界の端で揺れるサヤの髪が、あまりにも綺麗で。
その隣で楽しそうに笑う彼の横顔が、あまりにも遠くて。
私は逃げるように、机に深く顔を伏せた。