文字サイズ変更

【実話】ちいさな恋ものがたり。- いのち短し恋せよ少女!♡ -

#7

鉄の味と、君の声



冷たい風が吹き抜ける校庭で、体育の授業として駅伝が行われた。

自分の出番を終えた私は、震える手で厚手のジャージを羽織った。

元々運動は苦手としていたため、膝はガクガクと笑い、喉の奥からは鉄の味がする。
呼吸をするたびに肺がヒリついて、立っているだけでも精一杯だった。


数分後、コースの向こうからジンくんが走ってくるのが見えた。
私は隣にいた親友のマヤのジャージを引っ張り、私たちは何気ないふりをしてコース沿いの柵に近寄る。
本当は胸がどきどきして、走った後とは違う意味で息が苦しい。

彼が目の前を通り過ぎる瞬間、私は勇気を振り絞って声をかけた。


「ジンくん、頑張れ〜!」


走っている彼に、返事をする余裕なんてあるはずがない。
彼はまっすぐ前を見据えたまま、風のように私の前を駆け抜けていった。

その背中を見送りながら、私は「声、届かなかったかな」と少しだけ寂しくなった。


大会が終わり、教室に戻ると、熱気と埃っぽさが混じった独特の空気が漂っていた。
ジンくんは自分の席で友達と話している。

私は火照った頬を隠すようにして、冗談めかした口調で彼に話しかけてみた。


「さっきの応援、聞こえた?笑」


正直、期待はしていなかった。
大勢の声援の中の一つでしかないと思っていたから。
けれど、彼はパッとこちらを向いて、迷いのない声で言った。


「聞こえた!ありがとう」


その瞬間、思考が止まった。

すれ違いざまだったから、それ以上言葉を交わすことはできなかったし、彼の表情をまともに見る余裕もなかった。

でも、その一言だけで、喉の痛みも体の疲れも、全部どこかへ飛んでいってしまった。


「……ちょろいなあ、私」


心の中で自分に呆れる。

あんなに「もうやめる」と決めたはずなのに。
彼が私の声に気づいてくれた、ただそれだけのことで、胸の奥がじんわりと温かくなっていく。

冬の午後の光が差し込む教室で、私は自分にしか聞こえない溜息をついた。

結局、私は彼の引力から、まだ逃げられそうにない。

作者メッセージ

久しぶりの更新となります .

喉の奥に残る鉄の味や、膝の震え。
そんな痛みさえも一瞬で忘れてしまうほどの「恋のちから」の純粋さを
この物語に込めました♩

2026/01/15 18:46

るみねーじゅ
ID:≫ .1CEc41J8TDWw
コメント

この小説につけられたタグ

短編集恋愛実話

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はるみねーじゅさんに帰属します

TOP