ネラ=大図書館が、口元をいびつに歪めて僕を見る。
「9番…が何を意味するか、お前には分かるか?」
問われた僕は、9番、9番…と連想ゲームでもするかのように頭を働かせる。その時、パッと無数の本と古びた看板に記されていた『A treasure trove of knowledge』…という、知識の宝庫という意味の言葉が思い浮かんだ。
僕は、ほんの少しの自信と共にネラへ進言する。
「9番は、図書館十進分類法の『文学』…でしょうか…」
「流石だな。…[小文字]やはり前世の生き様が濃く影響されているようだ[/小文字]」
僕はその時、彼の人柄からは考えられないような誉め言葉と、ありえないような小さい声に、耳を通しきれなかった。けれど、この答えに結び付いたのは大学で文系を専攻していたからというのも大きいのだ。
「石上 宅嗣、俺様…この図書館では0から9番までの分類が俺の部下であり、手足であり、そして仲間として動いてもらっている。あの狐も、”9番”であることから、おおよその察しはつくだろう?」
「は、はぁ…」
「ただ、ここ117年間、その10の柱のうち1柱が欠けている。それは何か、だと?…[太字]0番・総記[/太字]だ」
0番…大学の小模試にて、完答で答えなさい…という問題を過去に解いたことがある。
”特定の分野…1~9番に分類できないもの全般を指し、主に図鑑やエッセイ、新聞や雑誌、郷土資料などが挙げられる”と、僕がいつか読んだ文章には記されていた。
「それが、僕に何か…?」
関係のある話であるのだろうか。
「お前があの狐とここまで来たとき、ある事に気が付かなかったか?」
「え…と、人がいなかった…ということなどでしょうか」
「その通り。この都市には[太字]人間がいない[/太字]。いるのは、俺様のような擬人化した存在や、俗にいう『付喪神』…のようなやつばかりだ。人の世で意思を持たないような奴らが、この世界では命を宿している。そのような世界は、ここの他にもたくさん存在しているのだが、な」
ネラは、人間がいないところを都市といった。確かに、桜狐のように人語を操る生き物もいるし、今目の前で話す彼も一目で見れば羽の生えたエンジェル、天使のようなものである。
しかし、それでも疑問は残るのだ。だって、僕は途中、不可抗力ながら女の子と正面衝突をするという出来事に遭っている。あの女の子は、きっと僕と同じ人間であるはずなのだ。
僕がそのことをネラにいうと、ネラは肩をすくめて見せた。
「きっとそいつは、[漢字]9番[/漢字][ふりがな]きつね[/ふりがな]と同じ分類だろう」
「……」
[漢字]曰[/漢字][ふりがな]いわ[/ふりがな]く、ネラが抱える分類たちのほとんどは、元々が人間であるという。そういえば、キリスト教の聖書の中では『人が生まれ変わるには100~500年の時を要する』とされていた気がする。否、こちらの世界では50~100年周期程度の時間で転生が可能なのだという。僕はもともとが人間であるという事実に少し親近感を覚えた。
僕が頭の中で交差する様々な情報をまとめていると、話が少々ずれたらしく、ネラがコンコンと椅子の手すりを叩いた。
「石上 宅嗣。俺様が言いたいのはそこではない。本題は、なぜ俺様がお前を誘ったか、ということであろうが」
「はいっ…」
ネラがフンとふんぞり返って僕を見下ろした。
「お前には、足りない分類…分類の一柱である[太字]0番・総記を担当[/太字]してもらおうと思っている」
「⁉」
僕は頭が真っ白になった。
「9番…が何を意味するか、お前には分かるか?」
問われた僕は、9番、9番…と連想ゲームでもするかのように頭を働かせる。その時、パッと無数の本と古びた看板に記されていた『A treasure trove of knowledge』…という、知識の宝庫という意味の言葉が思い浮かんだ。
僕は、ほんの少しの自信と共にネラへ進言する。
「9番は、図書館十進分類法の『文学』…でしょうか…」
「流石だな。…[小文字]やはり前世の生き様が濃く影響されているようだ[/小文字]」
僕はその時、彼の人柄からは考えられないような誉め言葉と、ありえないような小さい声に、耳を通しきれなかった。けれど、この答えに結び付いたのは大学で文系を専攻していたからというのも大きいのだ。
「石上 宅嗣、俺様…この図書館では0から9番までの分類が俺の部下であり、手足であり、そして仲間として動いてもらっている。あの狐も、”9番”であることから、おおよその察しはつくだろう?」
「は、はぁ…」
「ただ、ここ117年間、その10の柱のうち1柱が欠けている。それは何か、だと?…[太字]0番・総記[/太字]だ」
0番…大学の小模試にて、完答で答えなさい…という問題を過去に解いたことがある。
”特定の分野…1~9番に分類できないもの全般を指し、主に図鑑やエッセイ、新聞や雑誌、郷土資料などが挙げられる”と、僕がいつか読んだ文章には記されていた。
「それが、僕に何か…?」
関係のある話であるのだろうか。
「お前があの狐とここまで来たとき、ある事に気が付かなかったか?」
「え…と、人がいなかった…ということなどでしょうか」
「その通り。この都市には[太字]人間がいない[/太字]。いるのは、俺様のような擬人化した存在や、俗にいう『付喪神』…のようなやつばかりだ。人の世で意思を持たないような奴らが、この世界では命を宿している。そのような世界は、ここの他にもたくさん存在しているのだが、な」
ネラは、人間がいないところを都市といった。確かに、桜狐のように人語を操る生き物もいるし、今目の前で話す彼も一目で見れば羽の生えたエンジェル、天使のようなものである。
しかし、それでも疑問は残るのだ。だって、僕は途中、不可抗力ながら女の子と正面衝突をするという出来事に遭っている。あの女の子は、きっと僕と同じ人間であるはずなのだ。
僕がそのことをネラにいうと、ネラは肩をすくめて見せた。
「きっとそいつは、[漢字]9番[/漢字][ふりがな]きつね[/ふりがな]と同じ分類だろう」
「……」
[漢字]曰[/漢字][ふりがな]いわ[/ふりがな]く、ネラが抱える分類たちのほとんどは、元々が人間であるという。そういえば、キリスト教の聖書の中では『人が生まれ変わるには100~500年の時を要する』とされていた気がする。否、こちらの世界では50~100年周期程度の時間で転生が可能なのだという。僕はもともとが人間であるという事実に少し親近感を覚えた。
僕が頭の中で交差する様々な情報をまとめていると、話が少々ずれたらしく、ネラがコンコンと椅子の手すりを叩いた。
「石上 宅嗣。俺様が言いたいのはそこではない。本題は、なぜ俺様がお前を誘ったか、ということであろうが」
「はいっ…」
ネラがフンとふんぞり返って僕を見下ろした。
「お前には、足りない分類…分類の一柱である[太字]0番・総記を担当[/太字]してもらおうと思っている」
「⁉」
僕は頭が真っ白になった。