「話…?」
僕は首をかしげながらも、そこにたたずむ天使のもとへ行った。
上の彼方で静止している天使が、端的にいう。
「人間には羽がないから、俺様が特別に力を貸してやろう。感謝しろ…[太字]9番[/太字]、お前には必要ないな」
「我を何だと思っておる。貴様より天高く飛べるゆえ」
桜狐は、天井近くにいる天使に憤慨しながら地面を蹴る。空気の層を、ステップを踏むようにタンッタンッと大きく跳ね上がって飛んだ。
一方で僕は、天使から渡された羽のようなものに手を触れただけで、ぶわぁっ…と自分の身体が上昇していった。
「うわっわっ…⁉」
『やかましい』
天使と桜狐が僕をにらみつけるが、この非常識を受け入れろというほうが心外であるというものだ。僕は天使たちについていきながら、ただひたすらに己の頬をつねっていた。
「[小文字]夢なんじゃないかな…?[/小文字]」
そうして、僕と天使は屋上のバルコニーのようなところへ来た。澄んだ青空を背景に、無数の宝石がはめ込まれた豪奢な椅子が鎮座している。床は大理石で、そこはまるでお城の一部のように壮大さを見せつけていた。
「座れ。石上 宅嗣」
「は、はいっ」
桜狐は途中であくびをしながらどこかへ飛んで行ってしまった。だから、今ここにいるのは僕と天使の二人である。
天使は羽をたたんで豪華絢爛な椅子…玉座と呼ぶにふさわしいそれに背を預け、座れと言われた僕は何もない地面に正座するというカオスな状況が出来上がった。
「石上 宅嗣、お前は、俺様がここへ呼んだわけが分かるか?」
「……いいえ」
「俺様は、お前を[太字]20年前から待っていた[/太字]」
「⁉」
20年前…となると、それは僕がこの世に生まれた頃と等しかった。そのころから、僕の運命は決まっていたと、天使は言う。
「俺様は自分の[漢字]年齢[/漢字][ふりがな]とし[/ふりがな]を数える趣味はないものの、今年で117歳になる。それは、この図書館ができた年数と同義である」
「は、はぁ…」
「つまるところ、俺様は[太字]この図書館と繋がっている[/太字]のだ。…お前に分かるように言えば、俺様の、この姿は図書館の人化けだといえる」
「ど、どういうことです…か…?」
その途端、天使がブリザードのような凍結した視線をぶつけてくる。僕は再び、蛇ににたまれた蛙となる。
「仕方がない。お前のために言い方を変えてやろう。…俺様の名は”ネラ=大図書館”。この都市に[漢字]存[/漢字][ふりがな]そん[/ふりがな]ずる本、そして図書館を統べるものである」
僕はやっと、この天使――ネラ=大図書館――の正体が図書館を『擬人化』した存在であることを知った。
「本題に入るぞ、石上 宅嗣」
「はい」
「俺様はネラ=大図書館。お前を呼んだのは、俺様だ。先ほどの狐は、9番…俺の手足であるから、今は気にするな」
「あの、ネラさん…その、9番って…何でしょうか?9番のほかに、何かいたりとか、その…」
僕は持ち前のコミュニティ障害が発揮され、口ごもるように話してしまった。けれど、十分に伝わったらしい。ネラは、片方の眉を吊り上げて、口元をゆがめた。
「その通り。ほめて遣わそう、石上 宅嗣」
僕は首をかしげながらも、そこにたたずむ天使のもとへ行った。
上の彼方で静止している天使が、端的にいう。
「人間には羽がないから、俺様が特別に力を貸してやろう。感謝しろ…[太字]9番[/太字]、お前には必要ないな」
「我を何だと思っておる。貴様より天高く飛べるゆえ」
桜狐は、天井近くにいる天使に憤慨しながら地面を蹴る。空気の層を、ステップを踏むようにタンッタンッと大きく跳ね上がって飛んだ。
一方で僕は、天使から渡された羽のようなものに手を触れただけで、ぶわぁっ…と自分の身体が上昇していった。
「うわっわっ…⁉」
『やかましい』
天使と桜狐が僕をにらみつけるが、この非常識を受け入れろというほうが心外であるというものだ。僕は天使たちについていきながら、ただひたすらに己の頬をつねっていた。
「[小文字]夢なんじゃないかな…?[/小文字]」
そうして、僕と天使は屋上のバルコニーのようなところへ来た。澄んだ青空を背景に、無数の宝石がはめ込まれた豪奢な椅子が鎮座している。床は大理石で、そこはまるでお城の一部のように壮大さを見せつけていた。
「座れ。石上 宅嗣」
「は、はいっ」
桜狐は途中であくびをしながらどこかへ飛んで行ってしまった。だから、今ここにいるのは僕と天使の二人である。
天使は羽をたたんで豪華絢爛な椅子…玉座と呼ぶにふさわしいそれに背を預け、座れと言われた僕は何もない地面に正座するというカオスな状況が出来上がった。
「石上 宅嗣、お前は、俺様がここへ呼んだわけが分かるか?」
「……いいえ」
「俺様は、お前を[太字]20年前から待っていた[/太字]」
「⁉」
20年前…となると、それは僕がこの世に生まれた頃と等しかった。そのころから、僕の運命は決まっていたと、天使は言う。
「俺様は自分の[漢字]年齢[/漢字][ふりがな]とし[/ふりがな]を数える趣味はないものの、今年で117歳になる。それは、この図書館ができた年数と同義である」
「は、はぁ…」
「つまるところ、俺様は[太字]この図書館と繋がっている[/太字]のだ。…お前に分かるように言えば、俺様の、この姿は図書館の人化けだといえる」
「ど、どういうことです…か…?」
その途端、天使がブリザードのような凍結した視線をぶつけてくる。僕は再び、蛇ににたまれた蛙となる。
「仕方がない。お前のために言い方を変えてやろう。…俺様の名は”ネラ=大図書館”。この都市に[漢字]存[/漢字][ふりがな]そん[/ふりがな]ずる本、そして図書館を統べるものである」
僕はやっと、この天使――ネラ=大図書館――の正体が図書館を『擬人化』した存在であることを知った。
「本題に入るぞ、石上 宅嗣」
「はい」
「俺様はネラ=大図書館。お前を呼んだのは、俺様だ。先ほどの狐は、9番…俺の手足であるから、今は気にするな」
「あの、ネラさん…その、9番って…何でしょうか?9番のほかに、何かいたりとか、その…」
僕は持ち前のコミュニティ障害が発揮され、口ごもるように話してしまった。けれど、十分に伝わったらしい。ネラは、片方の眉を吊り上げて、口元をゆがめた。
「その通り。ほめて遣わそう、石上 宅嗣」