桜色の狐の後を、半ば走るようにして追う。
狐は僕が走れば走るほどグングンと速度を上げていき、徒競走のような状況を作っていく。初めはアスファルトに覆われた道であったのが、走れば走るほど塗装がはがれた道になり、砂利道に転じ、やがて樹海の奥深くへと吸い込まれていった。
どこを走っているのか分からない。ただ、前を駆ける狐の桜色の毛並みだけを追う。無我夢中で樹海を駆け抜ける僕は、肩で息をしながら視界を広げた。そこは森の中とは思えないほど広く、明るく拓けた空間だった。
* * *
そよそよと温かな風が身体を抜け、柔らかな日差しが僕を迎える。近くで水のせせらぎが聞こえ、頭上の樹木は若葉をはためかせている。その中心には蔦や花が絡んだ、中世の洋館のような建築物がそびえ立つ。狐は迷うことなくその前に歩み、木製の看板の下で再び毛づくろいを始めた。僕も呼吸を整え、看板に目を止める。
『A treasure trove of knowledge』
「なんだろう…?」
携帯端末をかざすと、途切れ途切れに文字が翻訳される。
『知識の宝庫』
「知識の宝庫って…図書館…?」
僕が驚きに口元を押さえる傍らで、足元で毛並みを整えていた狐が、突然前足を上げて僕の手から携帯端末を叩き落した。
「わっ…⁉」
なるほど、電子機器の持ち込みは禁止らしい。
「うん、わかったよ」
僕は端末をポケットにしまい、狐の先に顕在する門に手をかけた。すると――
「わぁっ…‼」
門が突如煌々と光を放ち、狐と僕を包み込む。世界がぐるぐる回り、重力の定まらない小舟に揺られているような感覚に襲われた。
カッ――――。
くらくらとする頭を押さえ、目を開けると、眼前には緑の森は消え、無数の光を反射する高層ビルが立ち並ぶ都市の景色が広がっていた。
狐は僕が走れば走るほどグングンと速度を上げていき、徒競走のような状況を作っていく。初めはアスファルトに覆われた道であったのが、走れば走るほど塗装がはがれた道になり、砂利道に転じ、やがて樹海の奥深くへと吸い込まれていった。
どこを走っているのか分からない。ただ、前を駆ける狐の桜色の毛並みだけを追う。無我夢中で樹海を駆け抜ける僕は、肩で息をしながら視界を広げた。そこは森の中とは思えないほど広く、明るく拓けた空間だった。
* * *
そよそよと温かな風が身体を抜け、柔らかな日差しが僕を迎える。近くで水のせせらぎが聞こえ、頭上の樹木は若葉をはためかせている。その中心には蔦や花が絡んだ、中世の洋館のような建築物がそびえ立つ。狐は迷うことなくその前に歩み、木製の看板の下で再び毛づくろいを始めた。僕も呼吸を整え、看板に目を止める。
『A treasure trove of knowledge』
「なんだろう…?」
携帯端末をかざすと、途切れ途切れに文字が翻訳される。
『知識の宝庫』
「知識の宝庫って…図書館…?」
僕が驚きに口元を押さえる傍らで、足元で毛並みを整えていた狐が、突然前足を上げて僕の手から携帯端末を叩き落した。
「わっ…⁉」
なるほど、電子機器の持ち込みは禁止らしい。
「うん、わかったよ」
僕は端末をポケットにしまい、狐の先に顕在する門に手をかけた。すると――
「わぁっ…‼」
門が突如煌々と光を放ち、狐と僕を包み込む。世界がぐるぐる回り、重力の定まらない小舟に揺られているような感覚に襲われた。
カッ――――。
くらくらとする頭を押さえ、目を開けると、眼前には緑の森は消え、無数の光を反射する高層ビルが立ち並ぶ都市の景色が広がっていた。