優雅に、そして豪快に大口を開けるクレハに、僕は閉口するしかなかった。
「え…と…?」
「うふふ。ボクが分類を支配?それはボクの役目じゃないよ~…ネラがやってることだよ」
クレハの琥珀色の目が、幾分か柔らかくなった。そして、愉快で仕方がないとでも言うように、カチャカチャと石を鳴らす。
その姿を目で追うたびに、僕は、自分の過ちがありありと、手に取るように分かった。クレハは、『支配』する役割を”ネラが”担っているといった。つまり、これは僕の勘違いである。――そう思えた。
「なんか、その…ごめんなさい。疑ってしまったこと」
「そうだね。慎重なのはいいけれど、時に信じることが、この先大事になってくるだろうね。だってここは、到底人間が受け入れることのできるものなんて、何もないんだからね』
淡い唇を弓の形に吊り上げ、クレハは笑った。
その時。
ドドドドドドドドドーーッ‼
禍々しいほどの足音が、こちらへと向かってきた。
* * *
「な、何でしょうか⁉」
「いいから。…ほら。穏やかにほほ笑んで」
僕はクレハの指摘通りに、歪な笑みを作った。しかし、それでも恐ろしいほどの鬼迫感は途絶えない。
ドドドドドドドドーーガチャッ
扉が開き、そして。
「0番‼クレハを[漢字]絆[/漢字][ふりがな]ほだ[/ふりがな]しているのは、お前かぁぁぁ‼」
「ひぃぃっ」
なんと、ネラ=大図書館が、まさに『鬼の形相』で僕の眼前に迫ってきたのだ。純白の髪を振り乱し、クレハに異常はないかと、目を急速に動かしている。
その様子を、クレハがニコニコと見つめていた。
「お帰り、ネラ」
「クレハ。…クレハ、何もされていないか?ほら、クレハの雰囲気が急に明るくなったから、何かされていないかと思って…来たんだ」
僕は、どれほど離れていても愛する人の気配を敏感に察知するネラの異常さに、いい意味でため息を吐いた。何も言わないのが、見守る側の鉄則である。
「うふふ。ネラ、ボクがこんな若造に一喜一憂するとでも思うの?……それに、ボクが話したいといったからというのもあるけど、引き合わせてくれたのは、キミだよね」
「ぐっ…」
言葉に詰まったネラは、しばらく僕とクレハの顔を見比べていた。もしかしたら彼は執務中だったのだろうか。手には羽ペンが握られていた。
クレハの意思を弄ぶ音と、僕の唾を飲み込む音が響く。
「……はあ。どうにも俺様の情緒は不安定なようだ。だから俺様は休息を欲している。クレハの、休息をな。……そういう訳で、0番には退場してもらおう。じゃあな」
口早にそう言うと、ネラは、僕の首根っこを掴んで扉から放り投げた。
「うわあっ?」
「呆けた声を出すな。今は夜だぞ。……部屋は階段を上ってすぐ手前、銀の装飾が施してある部屋だ。さっさと行ってしまえ」
僕は無理につかまれた襟を整えて、閉じられた扉を見つめた。
…目上の存在と話すのは、これほどに驚くものなのか。もしかしたら、僕は就職活動が苦手なのかもしれない。
深夜の対談は、僕に変な気付きを与えてくれたのだった。
「え…と…?」
「うふふ。ボクが分類を支配?それはボクの役目じゃないよ~…ネラがやってることだよ」
クレハの琥珀色の目が、幾分か柔らかくなった。そして、愉快で仕方がないとでも言うように、カチャカチャと石を鳴らす。
その姿を目で追うたびに、僕は、自分の過ちがありありと、手に取るように分かった。クレハは、『支配』する役割を”ネラが”担っているといった。つまり、これは僕の勘違いである。――そう思えた。
「なんか、その…ごめんなさい。疑ってしまったこと」
「そうだね。慎重なのはいいけれど、時に信じることが、この先大事になってくるだろうね。だってここは、到底人間が受け入れることのできるものなんて、何もないんだからね』
淡い唇を弓の形に吊り上げ、クレハは笑った。
その時。
ドドドドドドドドドーーッ‼
禍々しいほどの足音が、こちらへと向かってきた。
* * *
「な、何でしょうか⁉」
「いいから。…ほら。穏やかにほほ笑んで」
僕はクレハの指摘通りに、歪な笑みを作った。しかし、それでも恐ろしいほどの鬼迫感は途絶えない。
ドドドドドドドドーーガチャッ
扉が開き、そして。
「0番‼クレハを[漢字]絆[/漢字][ふりがな]ほだ[/ふりがな]しているのは、お前かぁぁぁ‼」
「ひぃぃっ」
なんと、ネラ=大図書館が、まさに『鬼の形相』で僕の眼前に迫ってきたのだ。純白の髪を振り乱し、クレハに異常はないかと、目を急速に動かしている。
その様子を、クレハがニコニコと見つめていた。
「お帰り、ネラ」
「クレハ。…クレハ、何もされていないか?ほら、クレハの雰囲気が急に明るくなったから、何かされていないかと思って…来たんだ」
僕は、どれほど離れていても愛する人の気配を敏感に察知するネラの異常さに、いい意味でため息を吐いた。何も言わないのが、見守る側の鉄則である。
「うふふ。ネラ、ボクがこんな若造に一喜一憂するとでも思うの?……それに、ボクが話したいといったからというのもあるけど、引き合わせてくれたのは、キミだよね」
「ぐっ…」
言葉に詰まったネラは、しばらく僕とクレハの顔を見比べていた。もしかしたら彼は執務中だったのだろうか。手には羽ペンが握られていた。
クレハの意思を弄ぶ音と、僕の唾を飲み込む音が響く。
「……はあ。どうにも俺様の情緒は不安定なようだ。だから俺様は休息を欲している。クレハの、休息をな。……そういう訳で、0番には退場してもらおう。じゃあな」
口早にそう言うと、ネラは、僕の首根っこを掴んで扉から放り投げた。
「うわあっ?」
「呆けた声を出すな。今は夜だぞ。……部屋は階段を上ってすぐ手前、銀の装飾が施してある部屋だ。さっさと行ってしまえ」
僕は無理につかまれた襟を整えて、閉じられた扉を見つめた。
…目上の存在と話すのは、これほどに驚くものなのか。もしかしたら、僕は就職活動が苦手なのかもしれない。
深夜の対談は、僕に変な気付きを与えてくれたのだった。