僕は姿の見えない6番を目で探し、記憶を探る。
藤色の髪を二つに分けて、赤い頭巾を目深にかぶった女の子。か細く、弱弱しい声。何かを諦めたような眼差し。僕がこれほどに目で追ってしまうのは、きっと、その姿が僕と色濃く重なってしまうからだろう。
「…9番、あの子はいつもどこにいるの?」
「知らぬ。ざっと花の手入れでもしているのではおらぬか?我は皆の衆に声をかけたのだ。それでも居ぬとというのは、かの子なりの判断であろう?」
「そんな……」
僕はどうしようもないことが分かってしまって、下唇を嚙み締めた。
* * *
しばらく僕に声をかけてくれた分類たちだったが、宵を極め日付が変わったころになると、誰といわず帰っていった。
9番も、のんきな欠伸をふわりと出して、さっさと住処に戻ったようだ。気づかわしげに一瞥した8番を最後に、このセレモニーは解散した。
僕も大広間を出て、ほうと一息つく。
6番の行方を気にしているのは相変わらずだが、さすがに広大な都市を探し回るのは、迷える羊と同じである。
また出会ったら声を掛けようと心に決め、僕は当てもなく歩き出した。
0番、0番と紹介されても、この都市に僕の住むところがあるわけではない。しかし、いつもの世界に戻りたいという言い方も、今の僕には正しいものではない気がした。
巨大な図書館は、きらきらとイルミネーションが鮮やかな光をともしている。あちらこちらにイルミネーションをともす労力も、全部僕を歓迎してくれる分類たちによるものだと思うと、心が温かくなる。
僕は次に分類たちと顔を合わせる日を楽しみにしながら、あてもなく都市の大通りを歩くことにした。
* * *
この都市では分類のような『擬人化』された存在や、付喪神のように僕のいる世界でいう”命が宿っていなかったもの”等が変幻自在・自由自在に活動しているという。だから人間のように四六時中活動しているのかといえばそうではなくて、彼らも夜になれば寝て、朝日と共に起き上がる生活をしているようだった。
つまり、こんな真夜中まで歓迎会を開いていたら、都市のど真ん中に立っていても何も意味をなさないということである。
事実、ほとんどの建物は明かりを消している。あの大広間に戻ったほうが良いことくらい、さすがの僕も察することができた。
もと来た道を戻ろうとしたその時。
『――0番、そんなところで何をしているんだ』
脳みそに直接響くようにして、威圧の混じったような声が響いた。ネラ=大図書館である。
『――お前の寝床は用意してやったぞ。さっさと戻って、寝てしまえ』
僕の応答を待たずに、脳みそに伝わる念はプツリと途切れた。
「……やっぱり、戻るしかないのか」
今度こそ、僕はもと来た道を戻った。
藤色の髪を二つに分けて、赤い頭巾を目深にかぶった女の子。か細く、弱弱しい声。何かを諦めたような眼差し。僕がこれほどに目で追ってしまうのは、きっと、その姿が僕と色濃く重なってしまうからだろう。
「…9番、あの子はいつもどこにいるの?」
「知らぬ。ざっと花の手入れでもしているのではおらぬか?我は皆の衆に声をかけたのだ。それでも居ぬとというのは、かの子なりの判断であろう?」
「そんな……」
僕はどうしようもないことが分かってしまって、下唇を嚙み締めた。
* * *
しばらく僕に声をかけてくれた分類たちだったが、宵を極め日付が変わったころになると、誰といわず帰っていった。
9番も、のんきな欠伸をふわりと出して、さっさと住処に戻ったようだ。気づかわしげに一瞥した8番を最後に、このセレモニーは解散した。
僕も大広間を出て、ほうと一息つく。
6番の行方を気にしているのは相変わらずだが、さすがに広大な都市を探し回るのは、迷える羊と同じである。
また出会ったら声を掛けようと心に決め、僕は当てもなく歩き出した。
0番、0番と紹介されても、この都市に僕の住むところがあるわけではない。しかし、いつもの世界に戻りたいという言い方も、今の僕には正しいものではない気がした。
巨大な図書館は、きらきらとイルミネーションが鮮やかな光をともしている。あちらこちらにイルミネーションをともす労力も、全部僕を歓迎してくれる分類たちによるものだと思うと、心が温かくなる。
僕は次に分類たちと顔を合わせる日を楽しみにしながら、あてもなく都市の大通りを歩くことにした。
* * *
この都市では分類のような『擬人化』された存在や、付喪神のように僕のいる世界でいう”命が宿っていなかったもの”等が変幻自在・自由自在に活動しているという。だから人間のように四六時中活動しているのかといえばそうではなくて、彼らも夜になれば寝て、朝日と共に起き上がる生活をしているようだった。
つまり、こんな真夜中まで歓迎会を開いていたら、都市のど真ん中に立っていても何も意味をなさないということである。
事実、ほとんどの建物は明かりを消している。あの大広間に戻ったほうが良いことくらい、さすがの僕も察することができた。
もと来た道を戻ろうとしたその時。
『――0番、そんなところで何をしているんだ』
脳みそに直接響くようにして、威圧の混じったような声が響いた。ネラ=大図書館である。
『――お前の寝床は用意してやったぞ。さっさと戻って、寝てしまえ』
僕の応答を待たずに、脳みそに伝わる念はプツリと途切れた。
「……やっぱり、戻るしかないのか」
今度こそ、僕はもと来た道を戻った。