居た堪れなくなって電車を飛び出した直後。僕は少しだけ後悔した。
電車に乗っていたのは数分どころではなく数十分であったようで、全く知らない土地に降り立ってしまったからだ。
そこは都市の空気を微塵も感じさせない緑の駅。都内にこんな場所があったのかというほど、空気が澄んでいて、それでいて静かである。
事実、電車から降りたのは、例のおばあちゃん――電車の中で僕に『呪われている』といった人――と僕しかいない。もしかしたら、僕は迷ったのではないだろうか。
段々と膨らむ不安から目をそらすようにして、僕はあたりを見回した。寂れたホーム、簡易的な改札、傍で毛づくろいをする狐。…あれ、狐?
鋭利な耳、柔らかな毛並み、細い目…。それは、僕が知っている『狐』で間違いなかった。一つ違うのは、その毛皮が淡い桜色であることくらいだ。
しばらくその狐を見つめていると、狐も僕に気づいたのか、足元まで歩みを寄せる。近くで見ると、より桜色の毛並みが美しく映えている。
狐はしばらく僕の足元をくるくると回り、フイと体を逸らして去ってしまったように思えた。
狐は、まるでついて来いと言わんばかりにチラチラと僕の様子をうかがっている。少し歩いては見て、また少し歩いては見て…。
僕はこんな、物語の中でしか起こりえない出来事に少しワクワクして、初めの一歩を踏み出した。狐はそれに合わせるように先を進む。
この時の僕はきっと、さっき、あっけなく終わってしまった「冒険」の続きを作りたかっただけなのかもしない。
その狐が、あのおばあちゃんの言う“導き”かどうかは分からない。
ただ、胸が高鳴り、足が自然と前へ出るのを感じた。
電車に乗っていたのは数分どころではなく数十分であったようで、全く知らない土地に降り立ってしまったからだ。
そこは都市の空気を微塵も感じさせない緑の駅。都内にこんな場所があったのかというほど、空気が澄んでいて、それでいて静かである。
事実、電車から降りたのは、例のおばあちゃん――電車の中で僕に『呪われている』といった人――と僕しかいない。もしかしたら、僕は迷ったのではないだろうか。
段々と膨らむ不安から目をそらすようにして、僕はあたりを見回した。寂れたホーム、簡易的な改札、傍で毛づくろいをする狐。…あれ、狐?
鋭利な耳、柔らかな毛並み、細い目…。それは、僕が知っている『狐』で間違いなかった。一つ違うのは、その毛皮が淡い桜色であることくらいだ。
しばらくその狐を見つめていると、狐も僕に気づいたのか、足元まで歩みを寄せる。近くで見ると、より桜色の毛並みが美しく映えている。
狐はしばらく僕の足元をくるくると回り、フイと体を逸らして去ってしまったように思えた。
狐は、まるでついて来いと言わんばかりにチラチラと僕の様子をうかがっている。少し歩いては見て、また少し歩いては見て…。
僕はこんな、物語の中でしか起こりえない出来事に少しワクワクして、初めの一歩を踏み出した。狐はそれに合わせるように先を進む。
この時の僕はきっと、さっき、あっけなく終わってしまった「冒険」の続きを作りたかっただけなのかもしない。
その狐が、あのおばあちゃんの言う“導き”かどうかは分からない。
ただ、胸が高鳴り、足が自然と前へ出るのを感じた。