僕は9番の隣に立って、扉に手を掛けていた。この先で、ほかの分類たちが舞っているのだという。
仲良く、できるだろうか。
不安になった僕は、桜色の髪を摘まんでいる9番に聞いた。
「あの、ほかの分類たちは僕を、どう…思っているかな」
「はてさて。それは我も知らぬ。……言うなれば、我以上に個性的な童ばかりよな」
この時、9番は的を得ない答えで応じた。しかし、それ以上に例えようがないほどの集団であると知るのは、もう少し先である。
* * *
扉の先は、大広間のようだった。天井からは水晶のように透き通ったシャンデリアが、煌々とあたりを照らしている。中央には純白のクロスが敷かれたテーブルがいくつもあって、まるで舞踏会のような雰囲気を形作っていた。
「うわあ…」
僕は思わず感嘆のため息を漏らす。しかし、光り輝くシャンデリアよりももっと注目すべき点があったのだ。
「……誰?」
思わずその一点を見つめてしまう、僕。
[太字]そこでは、8人の男女が優雅に談笑していた。[/太字]
すると。
9番が声を張り上げた。
「皆の衆‼今宵、新たな0番のお披露目に[漢字]集[/漢字][ふりがな]つど[/ふりがな]うたこと、感謝する。…そうだ。この者が、我らの仲間として、共に過ごすこととなる‼」
8人の視線が、一斉に僕に突き刺さった。僕は緊張と恐れで喉が引き絞られていった。視界がかすむ。元々、[漢字]歓迎会[/漢字][ふりがな]めだつこと[/ふりがな]は得意じゃないんだ。勘弁してくれ。
僕は色あせた視界を手繰り寄せ、その8人の姿を目に移していく。
姿は女性であったり、男性であったり、屈強な体つきであったり、華奢であったり、又は何か9番のような動物を形どった姿も見える。
「……うっ…」
「ぬ?童よ、どうした」
9番がそっと肩を叩く。僕はハッと強く息を吐き、その後軽くむせた。目がチカチカと瞬く。
僕の心を察したのか、9番が少し真剣味を帯びた顔つきで僕を諭した。
「童よ。ウヌの[漢字]眼[/漢字][ふりがな]まなこ[/ふりがな]に映るは邪悪な存在か?違うだろう?目前に広がるのはあたたかな仲間のみぞ」
僕は俯いてしまった首を上げ、もう一度見る。8人の視線。そこには確かに、『[漢字]邪[/漢字][ふりがな]よこしま[/ふりがな]』な感情は見当たらない。
「…僕、不安なんです。突然望まれたとか、ずっと待っていた、とか言われても。……心の底では、僕は只の埋め合わせなんじゃないかって、思ってしまうんです。」
ネラがいくら僕の疑心を[漢字]雪[/漢字][ふりがな]すす[/ふりがな]ごうと、心の雲は晴れない。。事実、臆病な僕の心は今にも壊れそうなのだ。
「…童……」
9番は、しばらく僕の目を覗き込んで、言った。
「ウヌは、ここに来るとき、どんな心持ちで来た?我に連れられた時、『心が弾んだ』のではなかったか?」
ふっと、僕はその言葉を反芻する。
――確かに、僕は『心が踊った』から、ここへ付いて来たんだ。
「…安心せい。[太字]ここでは、誰もが本当の意味で『生きる』のだ。[/太字]…誰もウヌを否定しないし、拒まない」
瞳の奥で、何かがチリチリとくすんだ。心なしか、目の前の8人と9番が、力強く頷いたように見える。何かが、堰を切って零れそうだった。
9番が、唇を笑みの形に曲げる。
「…ほうら、涙を流してもよいのだ。皆が皆、ウヌを望んでいたのだぞ?」
――ポタ。
頬を、涙が伝う。僕のかすれたように枯れた心を、何かが潤してゆく。
僕は本当の意味で報われた。
「……よろしく、お願いします…‼」
僕は顔を濡らす涙を振り払い、思い切り頭を下げた。こんな、人のために頭を下げたのは、これが本当の『初めて』なのかもしれない。
そして、僕はスッと右手を差し出す。誰かが握ってくれる保証はない。手をつないでくれる確証はない。
けれど。
僕のその、か細い手は力強く握られた。
「よろしくのう。0番よ」
今宵、僕は公式的な『0番』として、皆に迎えられたのだ。
仲良く、できるだろうか。
不安になった僕は、桜色の髪を摘まんでいる9番に聞いた。
「あの、ほかの分類たちは僕を、どう…思っているかな」
「はてさて。それは我も知らぬ。……言うなれば、我以上に個性的な童ばかりよな」
この時、9番は的を得ない答えで応じた。しかし、それ以上に例えようがないほどの集団であると知るのは、もう少し先である。
* * *
扉の先は、大広間のようだった。天井からは水晶のように透き通ったシャンデリアが、煌々とあたりを照らしている。中央には純白のクロスが敷かれたテーブルがいくつもあって、まるで舞踏会のような雰囲気を形作っていた。
「うわあ…」
僕は思わず感嘆のため息を漏らす。しかし、光り輝くシャンデリアよりももっと注目すべき点があったのだ。
「……誰?」
思わずその一点を見つめてしまう、僕。
[太字]そこでは、8人の男女が優雅に談笑していた。[/太字]
すると。
9番が声を張り上げた。
「皆の衆‼今宵、新たな0番のお披露目に[漢字]集[/漢字][ふりがな]つど[/ふりがな]うたこと、感謝する。…そうだ。この者が、我らの仲間として、共に過ごすこととなる‼」
8人の視線が、一斉に僕に突き刺さった。僕は緊張と恐れで喉が引き絞られていった。視界がかすむ。元々、[漢字]歓迎会[/漢字][ふりがな]めだつこと[/ふりがな]は得意じゃないんだ。勘弁してくれ。
僕は色あせた視界を手繰り寄せ、その8人の姿を目に移していく。
姿は女性であったり、男性であったり、屈強な体つきであったり、華奢であったり、又は何か9番のような動物を形どった姿も見える。
「……うっ…」
「ぬ?童よ、どうした」
9番がそっと肩を叩く。僕はハッと強く息を吐き、その後軽くむせた。目がチカチカと瞬く。
僕の心を察したのか、9番が少し真剣味を帯びた顔つきで僕を諭した。
「童よ。ウヌの[漢字]眼[/漢字][ふりがな]まなこ[/ふりがな]に映るは邪悪な存在か?違うだろう?目前に広がるのはあたたかな仲間のみぞ」
僕は俯いてしまった首を上げ、もう一度見る。8人の視線。そこには確かに、『[漢字]邪[/漢字][ふりがな]よこしま[/ふりがな]』な感情は見当たらない。
「…僕、不安なんです。突然望まれたとか、ずっと待っていた、とか言われても。……心の底では、僕は只の埋め合わせなんじゃないかって、思ってしまうんです。」
ネラがいくら僕の疑心を[漢字]雪[/漢字][ふりがな]すす[/ふりがな]ごうと、心の雲は晴れない。。事実、臆病な僕の心は今にも壊れそうなのだ。
「…童……」
9番は、しばらく僕の目を覗き込んで、言った。
「ウヌは、ここに来るとき、どんな心持ちで来た?我に連れられた時、『心が弾んだ』のではなかったか?」
ふっと、僕はその言葉を反芻する。
――確かに、僕は『心が踊った』から、ここへ付いて来たんだ。
「…安心せい。[太字]ここでは、誰もが本当の意味で『生きる』のだ。[/太字]…誰もウヌを否定しないし、拒まない」
瞳の奥で、何かがチリチリとくすんだ。心なしか、目の前の8人と9番が、力強く頷いたように見える。何かが、堰を切って零れそうだった。
9番が、唇を笑みの形に曲げる。
「…ほうら、涙を流してもよいのだ。皆が皆、ウヌを望んでいたのだぞ?」
――ポタ。
頬を、涙が伝う。僕のかすれたように枯れた心を、何かが潤してゆく。
僕は本当の意味で報われた。
「……よろしく、お願いします…‼」
僕は顔を濡らす涙を振り払い、思い切り頭を下げた。こんな、人のために頭を下げたのは、これが本当の『初めて』なのかもしれない。
そして、僕はスッと右手を差し出す。誰かが握ってくれる保証はない。手をつないでくれる確証はない。
けれど。
僕のその、か細い手は力強く握られた。
「よろしくのう。0番よ」
今宵、僕は公式的な『0番』として、皆に迎えられたのだ。