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ライブラリーズ ~新たな柱となれ~  

#13

石上 宅嗣→0番

 読書サークルの室内にて。

 鏡に映る僕の頭には、はっきりと「0番」という数字が浮かんでいた。
 慌てて千冬に問いかける。
 「ねえ、僕の頭、何かついてるよね?」
 「…何もないけれど?」
 千冬の怪訝そうな顔を見て、僕は少し俯きながら「なんでもない」と答えた。
 もしかすると、これが見えているのは僕だけかもしれない。
 肩を落として、部屋を出た。
 「…おー、もう帰るのか、[漢字]宅嗣[/漢字][ふりがな]やかづく[/ふりがな]」
 「うん、そうする…」
 大学の中を歩いていると、サークルへ向かおうとしていた琥珀に呼び止められる。
 「転ばないようにな」
 「うん…」
 曖昧に返事をして、僕は帰路についた。はずだった。

 『我が来たぞ!』
 突然、視界が桜色でおおわれる。それと同時に、よく通る声が僕を貫いた。
 目の前には、再び薄桃色の髪をたなびかせる美妖女――桜狐こと9番――が立っていた。
 「久しいの、童よ」
 数時間前の出来事なのに、彼女が言うと本当に久しぶりに感じられる。
 「きゅ、9番…?」
 「ほう。やはり0番の名をウヌに預けてよかったと思うぞ。その頭にあるもの、よく似合っておるではないか」
 9番は、僕の頭にあるこの数字が見えているようだった。
 「あ、その、この数字のことなんだけど――」
 「そんなこと、今は気にしなくてもよいぞ。…こちらの世界にお迎えする時が来た故、ウヌを呼びに来たのじゃ」
 夜遅いのも気にせず朗々と声を響かせ、周囲の学生たちの視線を一身に集める。
 「…何あれ、コスプレ?」「美人だな~」
 桜色の華やかな和服、頭には隠すことのない狐耳――9番の姿は一際目立っていた。
 「ちょ、ちょっと9番、別のところに行こう」
 「むぅ?童は積極的じゃな。されど、我は駆け引きには乗らぬ」
 ぶつぶつ言う9番の手を引き、僕は人の少ない場所へ向かった。

 そこは樹海を思わせる暗い森。9番は手を振り払い、満足げに頷く。
 「流石じゃな」
 「何が…?」
 「人が多ければ、向こうの世界への入り口は作れぬ故」
 訳が分からぬまま首をかしげる僕をよそに、9番は静かに言の葉を紡ぎ始めた。
 
 [太字][斜体]繫ぎたまえ 繋ぎたまえ――。 [/斜体][/太字]
 
 威厳と神聖さが彼女に漂う。
 やがて、暗い森の中に怪しげな穴が現れた。虹を歪めたようないびつな形――。
 「そ、それは?」
 「ウヌもしばしあちらに慣れれば作れるじゃろう。…これが入り口、行くぞ」
 9番は僕の手を掴み、一気に穴へ飛び込んだ。あの時と同じ、眩暈が僕を襲う――。

2026/02/16 19:31

hosiko
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