僕はしばらく、コロンと空き缶と同じように木陰に転がっていた。常時人が入れ替わる大学では、人がいない時間帯などない。だから、時折中庭を通る学生らが僕を不審者まがいの目で見たり、くすくすと笑ったりしてくるが、結局のところ事実なので気にしない。
すると。
「宅嗣、帰ったんじゃねぇのか?」
西に傾き始めた日を遮るようにして、白銀のシルエットが僕を覆った。
「……琥珀…?」
そう、まさしく彼は僕の友人・[漢字]屠龍 琥珀[/漢字][ふりがな]とりゅう こはく[/ふりがな]であった。いつ見ても美形だな…と僕は心底どうでもよいことを考えた。
「琥珀は…午後も講義を入れてたのかな…?」
「当り前じゃねぇかよ。俺が朝に弱いことを知っていて、それを言うのか?」
「ううん……。ごめんね」
すると琥珀はその場にしゃがみこんで、僕の肩に手をかけた。僕の視界が急上昇する。どうやら僕の身体を起こしてくれたようだった。そのまま僕の背中をさするようにして人工芝の草を払う。
「宅嗣…変な薬でも飲んだのか?今日のお前はよく喋るな」
「そう?…僕、変わったのかもね」
僕はネラの言葉に少しだけ心が救わたこともあるが、個性的すぎる桜狐やネラの性格を見せつけられて少しだけ変わったのかもしれない。
しばらくじっと僕を見つめていた琥珀だったが、僕があまりにも動かないことで諦めがついたらしい。パッパッと手の雑草を払って立ち上がった。
「ま、そんな日もあるだろうよ。…これから俺は講義を受けに行ってくるから、お前はサークルにでも入り浸っていればいいんじゃねぇか?」
「あぁ…。でもあそこ、最近は資料集ばっかりじゃん。前はもうちょっと本のバラエティがあったのに」
「あの[漢字]可愛子[/漢字][ふりがな]かわいこ[/ふりがな]ちゃんのせいだな。俺らの『読書サークル』が、あの子の『小説執筆サークル』になってるようなもんだから」
そう。僕や琥珀、そして[太字]あの子[/太字]の3人は、『読書サークル』に所属している。3人しかいないものの、本を読んで、感想を書いて、魅力を発信する…という活動をしている。いつだったか、琥珀が読書サークルに入ったときは、女の子達が黄色い歓声を上げながらサークルに入部を申し込んだが、最近はパタリと来なくなった。それもそう、事情が変わったから仕方のないことなのだが…。
「僕、今からサークルに行くよ」
「おう。俺も後から行くわ」
僕はよっこらせっ、と声を出して立ち上がり、琥珀に手を振ってサークルのある棟へと歩を進めた。
ネラは言っていた。
『向こうの世界とこちらの世界の行き来を偏らせるのは、俺が許さない』と。
僕は決心する。あの世界にもう一度行くために、そして自分に与えられた『0番・総記』としての役割を果たすために、日常の一歩一歩を大切にしていこう、と。
「ふぅぁぁぁ…」
また、欠伸が出る。しかし、この欠伸は一番初めに出た欠伸とは何かが違う気がした。
すると。
「宅嗣、帰ったんじゃねぇのか?」
西に傾き始めた日を遮るようにして、白銀のシルエットが僕を覆った。
「……琥珀…?」
そう、まさしく彼は僕の友人・[漢字]屠龍 琥珀[/漢字][ふりがな]とりゅう こはく[/ふりがな]であった。いつ見ても美形だな…と僕は心底どうでもよいことを考えた。
「琥珀は…午後も講義を入れてたのかな…?」
「当り前じゃねぇかよ。俺が朝に弱いことを知っていて、それを言うのか?」
「ううん……。ごめんね」
すると琥珀はその場にしゃがみこんで、僕の肩に手をかけた。僕の視界が急上昇する。どうやら僕の身体を起こしてくれたようだった。そのまま僕の背中をさするようにして人工芝の草を払う。
「宅嗣…変な薬でも飲んだのか?今日のお前はよく喋るな」
「そう?…僕、変わったのかもね」
僕はネラの言葉に少しだけ心が救わたこともあるが、個性的すぎる桜狐やネラの性格を見せつけられて少しだけ変わったのかもしれない。
しばらくじっと僕を見つめていた琥珀だったが、僕があまりにも動かないことで諦めがついたらしい。パッパッと手の雑草を払って立ち上がった。
「ま、そんな日もあるだろうよ。…これから俺は講義を受けに行ってくるから、お前はサークルにでも入り浸っていればいいんじゃねぇか?」
「あぁ…。でもあそこ、最近は資料集ばっかりじゃん。前はもうちょっと本のバラエティがあったのに」
「あの[漢字]可愛子[/漢字][ふりがな]かわいこ[/ふりがな]ちゃんのせいだな。俺らの『読書サークル』が、あの子の『小説執筆サークル』になってるようなもんだから」
そう。僕や琥珀、そして[太字]あの子[/太字]の3人は、『読書サークル』に所属している。3人しかいないものの、本を読んで、感想を書いて、魅力を発信する…という活動をしている。いつだったか、琥珀が読書サークルに入ったときは、女の子達が黄色い歓声を上げながらサークルに入部を申し込んだが、最近はパタリと来なくなった。それもそう、事情が変わったから仕方のないことなのだが…。
「僕、今からサークルに行くよ」
「おう。俺も後から行くわ」
僕はよっこらせっ、と声を出して立ち上がり、琥珀に手を振ってサークルのある棟へと歩を進めた。
ネラは言っていた。
『向こうの世界とこちらの世界の行き来を偏らせるのは、俺が許さない』と。
僕は決心する。あの世界にもう一度行くために、そして自分に与えられた『0番・総記』としての役割を果たすために、日常の一歩一歩を大切にしていこう、と。
「ふぅぁぁぁ…」
また、欠伸が出る。しかし、この欠伸は一番初めに出た欠伸とは何かが違う気がした。