僕はネラの背に生えるその純白の翼に目を止めたまま、彼の差し出された手をそっと握り返す。人生で初めて握手をした。しかしその瞬間、グイィッと手をつかまれたまま引き寄せられる。間近に彼の瞳のすべてが見えるほど、近く寄せられる。
「え?」
「俺様が今話せることはすべて話した。あとはもう帰れ」
「え?…えっ?」
さっそく0番として動くのでは、と聞きかけた僕の口は、半開きで止まる。なぜなら、ネラが機関銃のように言葉を投げつけ始めたからだ。
「俺様がそこまで早くお前を動かすとでも思うのか?いや、それもそうだが俺には用事ができた。そろそろ[太字]アイツ[/太字]が起きる頃なんだ。それに、お前には向こうの世界があるだろうが。こちらと向こうとの行き来に偏りがあるのは、俺が許さん。まず、お前がするべきことは他の仲間に顔を覚えてもらい、同時にお前も仲間を覚えることだ」
「は、はぃ…」
僕は次から次へと流れ出る言葉の数々を頭に押し込めながら、弱々しい返事を返した。そして、今度はこちらから…とネラに聞いてみた。
「あの、アイツ…とは何でしょうか?」
すると、ネラはピクリと眉根を寄せ、不快極まりないとでも言わんばかりに僕を睨みつけた。まるで血の気が引いていくような、般若の顔となっていく。そして、僕の腕をガシッとさらに強く引き掴むと、バルコニーの端へと引きずっていく。段々と広がる青空の視界を前に、僕の顔は恐怖に染まった。
「え⁉ちょ、ちょっと…僕を突き落とす気ですか⁉」
「アイツのことは近々紹介するから、とにかく今は気にするな。アイツは顔がいいからな、一目惚れでもされたら困る」
僕はその意味深な言葉に頭をひねりつつ、その話題を頭から消し去った。これ以上話しかけたら、何か嫌な予感がする。
すると。
「今度も9番が迎えに行くだろう。それまでこちらに干渉するな」
ネラの口が「じゃあな」と動く。
僕は思い切りふるいを振られ、ネラの手から澄んだ青空へ放り投げられた。
「うわぁぁぁあああ‼」
同時に僕の意識もぷっつりと途切れた。
* * *
黒い視界が色を取り戻した。パチパチと[漢字]瞼[/漢字][ふりがな]まぶた[/ふりがな]が[漢字]瞬[/漢字][ふりがな]またた[/ふりがな]く。どうやら僕は気絶していたようだった。周りの景色に目をやると、なんとそこは大学の敷地内…中庭である。僕はそこに、ごろりと転がされていた。
「……」
映画などの世界ではこの後しばらく記憶があやふやであるはずなのだろうが、僕の意識はすぐに覚醒して、記憶もパッと取り戻した。
あの桜色の狐、傲慢なネラ=大図書館――全ての記憶が鮮明に残っている。
きっと、この先一生消えないほどの記憶だ。
「夢じゃないんだ…」
僕の口は呆けているものの、心はなんだかキラキラとしていた。
「え?」
「俺様が今話せることはすべて話した。あとはもう帰れ」
「え?…えっ?」
さっそく0番として動くのでは、と聞きかけた僕の口は、半開きで止まる。なぜなら、ネラが機関銃のように言葉を投げつけ始めたからだ。
「俺様がそこまで早くお前を動かすとでも思うのか?いや、それもそうだが俺には用事ができた。そろそろ[太字]アイツ[/太字]が起きる頃なんだ。それに、お前には向こうの世界があるだろうが。こちらと向こうとの行き来に偏りがあるのは、俺が許さん。まず、お前がするべきことは他の仲間に顔を覚えてもらい、同時にお前も仲間を覚えることだ」
「は、はぃ…」
僕は次から次へと流れ出る言葉の数々を頭に押し込めながら、弱々しい返事を返した。そして、今度はこちらから…とネラに聞いてみた。
「あの、アイツ…とは何でしょうか?」
すると、ネラはピクリと眉根を寄せ、不快極まりないとでも言わんばかりに僕を睨みつけた。まるで血の気が引いていくような、般若の顔となっていく。そして、僕の腕をガシッとさらに強く引き掴むと、バルコニーの端へと引きずっていく。段々と広がる青空の視界を前に、僕の顔は恐怖に染まった。
「え⁉ちょ、ちょっと…僕を突き落とす気ですか⁉」
「アイツのことは近々紹介するから、とにかく今は気にするな。アイツは顔がいいからな、一目惚れでもされたら困る」
僕はその意味深な言葉に頭をひねりつつ、その話題を頭から消し去った。これ以上話しかけたら、何か嫌な予感がする。
すると。
「今度も9番が迎えに行くだろう。それまでこちらに干渉するな」
ネラの口が「じゃあな」と動く。
僕は思い切りふるいを振られ、ネラの手から澄んだ青空へ放り投げられた。
「うわぁぁぁあああ‼」
同時に僕の意識もぷっつりと途切れた。
* * *
黒い視界が色を取り戻した。パチパチと[漢字]瞼[/漢字][ふりがな]まぶた[/ふりがな]が[漢字]瞬[/漢字][ふりがな]またた[/ふりがな]く。どうやら僕は気絶していたようだった。周りの景色に目をやると、なんとそこは大学の敷地内…中庭である。僕はそこに、ごろりと転がされていた。
「……」
映画などの世界ではこの後しばらく記憶があやふやであるはずなのだろうが、僕の意識はすぐに覚醒して、記憶もパッと取り戻した。
あの桜色の狐、傲慢なネラ=大図書館――全ての記憶が鮮明に残っている。
きっと、この先一生消えないほどの記憶だ。
「夢じゃないんだ…」
僕の口は呆けているものの、心はなんだかキラキラとしていた。