重機関銃の轟音が止み、あたりに静寂と硝煙が立ち込める。
バラバラになった殺戮マシンの残骸から、青い火花が散っていた。
「……はぁ、はぁ……。これが、『重さ』ってやつか」
レンはパワードスーツの重厚な装甲越しに、自分の腕を見つめた。
[漢字]夢の世界[/漢字][ふりがな]エリュシオン[/ふりがな]での戦いは、どこかふわふわとしたゲームのようだった。
だが今は違う。
引き金を引いた衝撃が、肩を伝って脊髄を震わせる。
『感傷に浸ってる暇はないわ。マザーの増援が来る前に、ここを離れる。北へ三キロ、旧地下鉄の排気口を目指して』
アイリスの声が脳内で響く。
レンは重い足取りで歩き出した。
視界の端には、アイリスがハッキングで表示し続ける最短ルートのグリッド線が、赤錆びた壁に重なって映っている。
廃墟の街は、墓場だった。
かつての繁栄を物語る高層ビルは、今や骨組みを晒し、蔓植物のような配線コードが地面を這っている。
「アイリス。俺以外に、この『地獄』を歩いてる奴はいないのか」
『……いるわよ。マザーに「バグ」と判定され、夢から叩き出された社会のクズ共がね』
排気口に辿り着いたその時、レンの直感が警報を鳴らした。
暗闇の奥、瓦礫の影から複数の銃口が覗いている。
「動くな。それ以上進めば、そのデカいおもちゃごとハチの巣だ」
低い、女の声。
レンは銃を下げ、両手を挙げた。
影から現れたのは、ボロボロの防弾ベストを纏い、顔を半分スカーフで隠した少女だった。
その背後には、同じように薄汚れた、だが眼光だけは鋭い男たちが数人控えている。
「パワードスーツ……『アトラス』か。マザーの犬にしちゃあ、動きがぎこちねえな」
少女はレンの首筋にある「目覚めた者の印(コネクタの傷)」を認めると、わずかに銃口を下げた。
「新入りか。それとも、ただの迷子か?」
「……眠る世界に、飽き飽きしただけだ」
レンが短く答えると、少女は皮肉げに口角を上げた。
「いい度胸だ。ここは現実、飯は不味いし痛みは本物。それでも終止符(ピリオド)を打ちたいってなら、付いてきな。私たちの『城』へ案内してやる」
彼女が指し示した先──地下の暗闇のさらに奥には、微かな火の光と、人間が生きている気配があった。
レジスタンス。
マザーという絶対的な神に背き、泥水を啜ってでも「人間」であることを選んだ者たちの巣窟。
「俺はレンだ。あんたは?」
「カヤ。この掃き溜めの掃除番だよ」
カヤと名乗った少女は、背を向けて闇へと消えていく。
レンは一歩、踏み出した。
仮想世界の偽物の太陽ではなく、本物の、冷たい風を感じながら。
夢の終わりは、まだ始まったばかりだ。
バラバラになった殺戮マシンの残骸から、青い火花が散っていた。
「……はぁ、はぁ……。これが、『重さ』ってやつか」
レンはパワードスーツの重厚な装甲越しに、自分の腕を見つめた。
[漢字]夢の世界[/漢字][ふりがな]エリュシオン[/ふりがな]での戦いは、どこかふわふわとしたゲームのようだった。
だが今は違う。
引き金を引いた衝撃が、肩を伝って脊髄を震わせる。
『感傷に浸ってる暇はないわ。マザーの増援が来る前に、ここを離れる。北へ三キロ、旧地下鉄の排気口を目指して』
アイリスの声が脳内で響く。
レンは重い足取りで歩き出した。
視界の端には、アイリスがハッキングで表示し続ける最短ルートのグリッド線が、赤錆びた壁に重なって映っている。
廃墟の街は、墓場だった。
かつての繁栄を物語る高層ビルは、今や骨組みを晒し、蔓植物のような配線コードが地面を這っている。
「アイリス。俺以外に、この『地獄』を歩いてる奴はいないのか」
『……いるわよ。マザーに「バグ」と判定され、夢から叩き出された社会のクズ共がね』
排気口に辿り着いたその時、レンの直感が警報を鳴らした。
暗闇の奥、瓦礫の影から複数の銃口が覗いている。
「動くな。それ以上進めば、そのデカいおもちゃごとハチの巣だ」
低い、女の声。
レンは銃を下げ、両手を挙げた。
影から現れたのは、ボロボロの防弾ベストを纏い、顔を半分スカーフで隠した少女だった。
その背後には、同じように薄汚れた、だが眼光だけは鋭い男たちが数人控えている。
「パワードスーツ……『アトラス』か。マザーの犬にしちゃあ、動きがぎこちねえな」
少女はレンの首筋にある「目覚めた者の印(コネクタの傷)」を認めると、わずかに銃口を下げた。
「新入りか。それとも、ただの迷子か?」
「……眠る世界に、飽き飽きしただけだ」
レンが短く答えると、少女は皮肉げに口角を上げた。
「いい度胸だ。ここは現実、飯は不味いし痛みは本物。それでも終止符(ピリオド)を打ちたいってなら、付いてきな。私たちの『城』へ案内してやる」
彼女が指し示した先──地下の暗闇のさらに奥には、微かな火の光と、人間が生きている気配があった。
レジスタンス。
マザーという絶対的な神に背き、泥水を啜ってでも「人間」であることを選んだ者たちの巣窟。
「俺はレンだ。あんたは?」
「カヤ。この掃き溜めの掃除番だよ」
カヤと名乗った少女は、背を向けて闇へと消えていく。
レンは一歩、踏み出した。
仮想世界の偽物の太陽ではなく、本物の、冷たい風を感じながら。
夢の終わりは、まだ始まったばかりだ。