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【読み得】消えた隣人

#7

記憶の曲とアパートの謎、闇

「斉藤ハ、鍵。彼ヲ通シテ、我々ノ罪、ソシテ、屋敷ノ主人ノ秘密ガ明カサレル。」
私は、その言葉を読んだ瞬間、背筋が凍りついた。
田中さん、そして前の住人たち、さらには「屋敷の主人」と呼ばれる人物まで、皆が斉藤という男に繋がっていた。
彼らは、斉藤のピアノの音色を通じて、自分たちの過去の「罪」を思い出していたのか?
翌日、私は約束通り夕方に斉藤の部屋を訪ねた。
彼は昨日よりも少し落ち着いているように見えた。
部屋は驚くほど殺風景で、大きなピアノ以外には最低限の家具しかなかった。
「昨日は、突然すみませんでした」
と私は頭を下げた。
「いえ、こちらこそ」
と斉藤は微笑んだ。
「どうぞ、入ってください。」
私は部屋に入り、ピアノの横にある椅子に腰掛けた。
「あの、斉藤さんが弾くピアノの音色、本当に心に響くんです。楽譜を読めないなんて信じられません。」
斉藤は少しはにかんだ。
「ありがとうございます。実は、子供の頃からずっと、この音色が頭の中に響いていて、それを鍵盤で再現しようとしているだけなんです。自分でも、この曲が何なのか、どこから来たのか分からないんですけど。」
「その曲、いつも同じですか?」
「いえ、日によって違います。その時々の気分というか、頭の中のイメージというか…」
私は日記に書かれていた言葉を思い出した。
「彼ノ音色ハ、我々ノ記憶ヲ蘇ラセル。」
斉藤の弾く曲は、その時々で、このアパートに宿る異なる魂の記憶を呼び起こしていたのかもしれない。
私は意を決して、日記帳の話を切り出した。
「実は私、この部屋に引っ越してくる前に、前の住人から一冊の日記帳を受け継いだんです。そこには、このアパートの様々な住人たちの記録が綴られていて…」
斉藤は興味深そうに話を聞いていた。
「面白いですね。このアパート、結構古いから、いろんな歴史があるんでしょうね。」
「その日記に、あなたのことが書かれていたんです。あなたが夜中にピアノを弾いていること、そしてその音色に皆が何かを感じていることが。」
斉藤の表情が少し曇った。
「そうなんですか…」
私は続けた。
「もしかして、あなたが弾いている曲って、このアパート、あるいはこのアパートが建つ前からの記憶と繋がっているのかもしれません。」
斉藤は驚いたように目を見開いた。
「記憶と? そんな非科学的な…」
「私もそう思っていました。でも、日記を読んだり、あなたと話したりしているうちに、どうしてもそうとしか思えなくなってきたんです。」
私は、昨日日記に書かれていた最後の言葉を斉藤に伝えた。
「『斉藤ハ、鍵。彼ヲ通シテ、我々ノ罪、ソシテ、屋敷ノ主人ノ秘密ガ明カサレル』って。」
斉藤は絶句した。顔色がさっと青ざめた。
「屋敷の主人…?」
「何か知っていますか?」
斉藤は、震える声で話し始めた。
「僕、実はこのアパートに引っ越してくる前に、ずっと悪夢を見ていたんです。古い屋敷のような場所で、一人の男がピアノを弾いている夢。その音色が、いつも僕の頭の中に響いていて…」
私は鳥肌が立った。
「その男が弾いていた曲は、あなたが今弾いている曲と同じですか?」
斉藤は黙って頷いた。
「ええ。僕はこのアパートを見つけた時、何か運命的なものを感じて引っ越してきたんです。この場所に来れば、何かが分かるんじゃないかって。」
私たちは、斉藤の夢に出てくる屋敷の主人こそが、この一連の謎の核心人物だと確信した。
彼は何者で、どんな罪を犯し、なぜ斉藤の夢に現れ、そしてこの日記に影響を与えているのか。
「この謎を解き明かしましょう、一緒に」
と私は斉藤に提案した。
斉藤は私の目を見つめ、決意に満ちた表情で頷いた。
「はい。僕も、もうこの悪夢と謎から解放されたい。」
私たちは、まずはこのアパート、そしてかつてここに建っていたかもしれない屋敷の歴史を調べることから始めることにした。
この街の図書館や役所に行けば、何か手がかりが見つかるかもしれない。
外はもう真っ暗だった。
月明かりが窓から差し込み、ピアノの鍵盤を照らしていた。
今夜は、どんな曲が奏でられ、どんな記憶が呼び起こされるのだろうか。

作者メッセージ

1話1話長く書いてるの誰か褒めて〜!

2025/11/04 15:58

多分大丈夫
ID:≫ 9eiVh9KZuSBsU
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