月灯を探す君へ
街は、いつでも同じリズムで呼吸をしていた。
アスファルトの隙間から生える雑草、古びた街灯、夜空に浮かぶ無数の星。
どれもが、いつもと変わらない姿で存在していた。
ただ一つ、僕の隣にいる君の笑顔だけが、少しずつ形を変えていく。
君はいつも、月を探していた。
「ねえ、ヨア。今日の月は、どんな形をしているかな?」
そう言って、夜空を見上げる君の瞳には、まだ見えない月が映っているようだった。
君は、生まれてから一度も月を見たことがない。
生まれたときから目が見えないわけではなかった。
ただ、ある日を境に、夜空の月だけが君の視界から消えた。
理由は誰も知らない。
医者も首をかしげるばかり。
それでも君は、毎晩、夜空に手を伸ばした。
僕が君の瞳の代わりになろうと、月の形を言葉で伝えた。
「今日は、細い三日月だよ。まるで、君が描いた絵みたいに、すっとした形をしている」
「今日は、満月だよ。まんまるくて、やさしい光を放っている」
僕の言葉を、君は嬉しそうに聞いてくれた。
でも、いつからか、君の瞳の奥に、少しずつ寂しさが宿るようになった。
僕が伝える月の姿は、君が想像する月とは違うらしい。
ある夜、僕は君の手を引いて、街の明かりが届かない丘の上に連れて行った。
そこには、満月が煌々と輝いていた。
僕は君に言った。
「今日は、とてもきれいな満月だよ。見てごらん」
君は、ゆっくりと夜空を見上げた。
その瞳に、ほんのわずかだが、月の光が反射した。
「ああ……」
君は、静かに呟いた。
「これが、月…」
その声は、震えていた。
その瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
僕は、君が泣いている理由がわからなかった。
「どうして、泣いているの?」
僕が尋ねると、君は首を振った。
「違うの。これは、うれしい涙」
君は僕に顔を向けて、微笑んだ。
「ねえ、ヨア。本当は、僕の目には、月なんて映ってなかった。でも、あなたが教えてくれたから、きっと、僕の中には月が満ちていたんだ」
その瞬間、僕の隣にいる君の姿が、ほんの少し、光を放ったように見えた。
アスファルトの隙間から生える雑草、古びた街灯、夜空に浮かぶ無数の星。
どれもが、いつもと変わらない姿で存在していた。
ただ一つ、僕の隣にいる君の笑顔だけが、少しずつ形を変えていく。
君はいつも、月を探していた。
「ねえ、ヨア。今日の月は、どんな形をしているかな?」
そう言って、夜空を見上げる君の瞳には、まだ見えない月が映っているようだった。
君は、生まれてから一度も月を見たことがない。
生まれたときから目が見えないわけではなかった。
ただ、ある日を境に、夜空の月だけが君の視界から消えた。
理由は誰も知らない。
医者も首をかしげるばかり。
それでも君は、毎晩、夜空に手を伸ばした。
僕が君の瞳の代わりになろうと、月の形を言葉で伝えた。
「今日は、細い三日月だよ。まるで、君が描いた絵みたいに、すっとした形をしている」
「今日は、満月だよ。まんまるくて、やさしい光を放っている」
僕の言葉を、君は嬉しそうに聞いてくれた。
でも、いつからか、君の瞳の奥に、少しずつ寂しさが宿るようになった。
僕が伝える月の姿は、君が想像する月とは違うらしい。
ある夜、僕は君の手を引いて、街の明かりが届かない丘の上に連れて行った。
そこには、満月が煌々と輝いていた。
僕は君に言った。
「今日は、とてもきれいな満月だよ。見てごらん」
君は、ゆっくりと夜空を見上げた。
その瞳に、ほんのわずかだが、月の光が反射した。
「ああ……」
君は、静かに呟いた。
「これが、月…」
その声は、震えていた。
その瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
僕は、君が泣いている理由がわからなかった。
「どうして、泣いているの?」
僕が尋ねると、君は首を振った。
「違うの。これは、うれしい涙」
君は僕に顔を向けて、微笑んだ。
「ねえ、ヨア。本当は、僕の目には、月なんて映ってなかった。でも、あなたが教えてくれたから、きっと、僕の中には月が満ちていたんだ」
その瞬間、僕の隣にいる君の姿が、ほんの少し、光を放ったように見えた。
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