悪魔の悪魔
#1
1話 悪魔と人間 上
―――「おい、悪魔。いるんだろ? 出てこいよ。」
誰かの呼ぶ声がした。
男だ。男の声が間違いなく呼んでいる。
僕を、悪魔を。
鏡を見ると、はっきり映っている。
丸っこい顔。
頭には何千もの黒い髪。
黒い眼差し。
やや赤い口。
なんと言ってもその肌色で美しい体。
そして、
それに似合わない気怠げなオーラと貧相な服。
間違いない。人間だ。僕の欲した人間だ。
こいつは知っている。
確か,,,セイジ。
そうだ。セイジという名の人間。
僕はずっとずっとこの鏡で待っていたのだ。
ようやくそれを思い出し、僕は鏡を出た。
―――
「人間、ヨクゾボクヲ,,,呼ンデクレタナ。」
悪魔が本当に出てくるのは予想外だった。
鏡に映る自分が突然笑ったり、動いたりする。
それはよくある話だ。
だけど悪魔が出てくるなんてことは、
クラスの誰も言ってなかったはずだ。
腕時計をチラ見。
きっちり午前2時。
母ちゃんはまだノンレム睡眠から目覚めない時間だ。
起きてこない。
悪魔を見やる。
黒くモヤモヤしていて、
霧とは間違えたくない容姿をしている。
気持ち悪い。
真ん中よりちょい上くらいにある、
白い2つの瞳が俺を睨む。
「オ前ノ、イノチヲヨコセ。」
低く抑揚もない声に、
全身の肌がざわつく。
「ソノ変ワリ二,,,,オ前ノ望ミヲ、一ツ叶エテヤル。」
その言葉で正気を取り戻す。
そうだ。俺は悪魔に会いに来たのだ。
せっかく時間ぴったりに来てくれたのに、
これじゃ示しがつかない。
「お、お、俺の名前は[漢字]星司[/漢字][ふりがな]せいじ[/ふりがな]。こ、高校い、1年だ,,,。」
絞って出した声はカラ雑巾のように、
カサカサと空気を揺らす。
「,,,,ソウカ,,,。」
そんな相槌が来るまで時間がかかった。
何を考えていたんだ,,,?
「お、お前の名前はなんだ。」
「,,,,ナイ。」
「え?」
「ナイ。イノチヲヨコセ。望ミハ何ダ。」
「わ、分かった。でも、も、もうちょっと話そうぜ?」
「,,,何ヲ,,,?」
「お、俺こんなん初めてでよぉ。もうちょっと噛み締めたい、と、いうか,,,へへ。」
ヤバい。トイレ,,,。漏れそうだ。
―――
「クラスの皆がお前のこと教えてくれたんだよ。」
セイジはそう言った。
なぜ僕を呼んだのか。
それを聞いただけなのに、何か親しげだ。
僕が怖くないのか?
わざわざ黒くモヤがかった姿で出てきたのに、
こいつは怖がりもせず、泣きもせず。
淡々とという感じだ。
もしやこいつは,,,,
いや、それよりも、
セイジのクラスの皆が僕を知っている。
確かにセイジはそう言った。
学校というのは知っている。
セイジが今までずっと通ってきた建物。
ただ、いい思い出は無さそうだ。
セイジは生まれてから一度も、
笑顔を見せたことがない。
少なくとも鏡の前では。
そのクラスの皆が悪魔の存在を認知しているとなると、
とても危ない。
「,,,何処マデ知ッテルンダ。」
「え?」
「私ノコトヲ。」
セイジは微かに目を見開いた。
そして、笑った。
「教えてほしいか。」
今のは笑顔ではない。
最近セイジはよくするようになった、
相手を小馬鹿にするような嘲笑。
「もっとこっちこいよ。耳元で教えてやる。」
セイジの態度がどこか変わった。
そんなに教えたいのか。
まぁいい。
こんなことを話していても[漢字]埒[/漢字][ふりがな]らち[/ふりがな]が明かない。
終わりにしよう。
口元から取り憑いて、憑依してやる。
そうすれば全て解決する。
悪いな。セイジ。
でもそれが悪魔だ。
セイジと間近に接近し、
開く口に準備をする。
その美しい肌が、僕のものになるのだ。
「早ク言エ。セイジ。」
その時セイジは、笑った。
初めて笑った。
まるで悪魔のように。
全身が震え上がる。
瞬時、セイジの手から何かが飛んだ。
バリィンッッ!!!
―――
モヤがかった悪魔がこっちに近づいてくる。
鼓動が早くなる。
モヤモヤが体を覆う。
どうしよう。
あまりの寒気に我を忘れそうになる。
ふと鏡を見る。
俺と俺を覆うモヤモヤ。
そして、モヤモヤの[漢字]出所[/漢字][ふりがな]でどころ[/ふりがな]があった。
モヤモヤは鏡から出ていた。
俺は確信し、ポケットを探る。
小さなナイフを取り出し握りしめると、
不思議な感覚が湧いてきた。
耳が聞こえなくなって、鼓動だけが木霊する。
目と頭がチカチカしだす。
なんだ、これ。
口元が勝手にニヤける。
手が勝手に動き、ナイフを投げた。
ナイフは驚くほど真っ直ぐ飛んでいき、
目の前の鏡を、綺麗に割った。
誰かの呼ぶ声がした。
男だ。男の声が間違いなく呼んでいる。
僕を、悪魔を。
鏡を見ると、はっきり映っている。
丸っこい顔。
頭には何千もの黒い髪。
黒い眼差し。
やや赤い口。
なんと言ってもその肌色で美しい体。
そして、
それに似合わない気怠げなオーラと貧相な服。
間違いない。人間だ。僕の欲した人間だ。
こいつは知っている。
確か,,,セイジ。
そうだ。セイジという名の人間。
僕はずっとずっとこの鏡で待っていたのだ。
ようやくそれを思い出し、僕は鏡を出た。
―――
「人間、ヨクゾボクヲ,,,呼ンデクレタナ。」
悪魔が本当に出てくるのは予想外だった。
鏡に映る自分が突然笑ったり、動いたりする。
それはよくある話だ。
だけど悪魔が出てくるなんてことは、
クラスの誰も言ってなかったはずだ。
腕時計をチラ見。
きっちり午前2時。
母ちゃんはまだノンレム睡眠から目覚めない時間だ。
起きてこない。
悪魔を見やる。
黒くモヤモヤしていて、
霧とは間違えたくない容姿をしている。
気持ち悪い。
真ん中よりちょい上くらいにある、
白い2つの瞳が俺を睨む。
「オ前ノ、イノチヲヨコセ。」
低く抑揚もない声に、
全身の肌がざわつく。
「ソノ変ワリ二,,,,オ前ノ望ミヲ、一ツ叶エテヤル。」
その言葉で正気を取り戻す。
そうだ。俺は悪魔に会いに来たのだ。
せっかく時間ぴったりに来てくれたのに、
これじゃ示しがつかない。
「お、お、俺の名前は[漢字]星司[/漢字][ふりがな]せいじ[/ふりがな]。こ、高校い、1年だ,,,。」
絞って出した声はカラ雑巾のように、
カサカサと空気を揺らす。
「,,,,ソウカ,,,。」
そんな相槌が来るまで時間がかかった。
何を考えていたんだ,,,?
「お、お前の名前はなんだ。」
「,,,,ナイ。」
「え?」
「ナイ。イノチヲヨコセ。望ミハ何ダ。」
「わ、分かった。でも、も、もうちょっと話そうぜ?」
「,,,何ヲ,,,?」
「お、俺こんなん初めてでよぉ。もうちょっと噛み締めたい、と、いうか,,,へへ。」
ヤバい。トイレ,,,。漏れそうだ。
―――
「クラスの皆がお前のこと教えてくれたんだよ。」
セイジはそう言った。
なぜ僕を呼んだのか。
それを聞いただけなのに、何か親しげだ。
僕が怖くないのか?
わざわざ黒くモヤがかった姿で出てきたのに、
こいつは怖がりもせず、泣きもせず。
淡々とという感じだ。
もしやこいつは,,,,
いや、それよりも、
セイジのクラスの皆が僕を知っている。
確かにセイジはそう言った。
学校というのは知っている。
セイジが今までずっと通ってきた建物。
ただ、いい思い出は無さそうだ。
セイジは生まれてから一度も、
笑顔を見せたことがない。
少なくとも鏡の前では。
そのクラスの皆が悪魔の存在を認知しているとなると、
とても危ない。
「,,,何処マデ知ッテルンダ。」
「え?」
「私ノコトヲ。」
セイジは微かに目を見開いた。
そして、笑った。
「教えてほしいか。」
今のは笑顔ではない。
最近セイジはよくするようになった、
相手を小馬鹿にするような嘲笑。
「もっとこっちこいよ。耳元で教えてやる。」
セイジの態度がどこか変わった。
そんなに教えたいのか。
まぁいい。
こんなことを話していても[漢字]埒[/漢字][ふりがな]らち[/ふりがな]が明かない。
終わりにしよう。
口元から取り憑いて、憑依してやる。
そうすれば全て解決する。
悪いな。セイジ。
でもそれが悪魔だ。
セイジと間近に接近し、
開く口に準備をする。
その美しい肌が、僕のものになるのだ。
「早ク言エ。セイジ。」
その時セイジは、笑った。
初めて笑った。
まるで悪魔のように。
全身が震え上がる。
瞬時、セイジの手から何かが飛んだ。
バリィンッッ!!!
―――
モヤがかった悪魔がこっちに近づいてくる。
鼓動が早くなる。
モヤモヤが体を覆う。
どうしよう。
あまりの寒気に我を忘れそうになる。
ふと鏡を見る。
俺と俺を覆うモヤモヤ。
そして、モヤモヤの[漢字]出所[/漢字][ふりがな]でどころ[/ふりがな]があった。
モヤモヤは鏡から出ていた。
俺は確信し、ポケットを探る。
小さなナイフを取り出し握りしめると、
不思議な感覚が湧いてきた。
耳が聞こえなくなって、鼓動だけが木霊する。
目と頭がチカチカしだす。
なんだ、これ。
口元が勝手にニヤける。
手が勝手に動き、ナイフを投げた。
ナイフは驚くほど真っ直ぐ飛んでいき、
目の前の鏡を、綺麗に割った。