文字サイズ変更

アイドルそっくりだからって、センターになっちゃった……!?

[大文字]「お前、あいつにそっくりだからステージに立て!」[/大文字]

そう言われたのは、大きなライブ会場のド真ん中だった。

客席で?

違う、違う。

スポットライトを浴びながら、

ステージの真ん中で、

目の前の、どこかで見たことがあるイケメンが言ったの。

「ワタシが……?なんで???」

でも、イケメンはワタシを助けてなんてくれなかった。

「今からレッスンする。ひとつでも覚えろ。三時間後には、ライブがはじまるぞ」

何を言っているか、ぜんぜんわかんない。

ワタシ、悪い夢でもみてるのかな?

ほんの少し前まで、トモダチと買い物してただけなのに――。

[水平線]

今日の朝から、思い出してみる。

トモダチと、ちょっと遠くのショッピングセンターまででかけたんだ。

映画を見て、カフェでフラペチーノを飲んだ後、そろそろ帰ろうとしてたんだ。

「ね、ちょっとトイレ行きたい」

友達が言って、じゃあワタシもって行ったんだよね。

それから、ワタシが先に出たっぽくて、トイレの前で待ってた。

「お前、こんなとこにいたのかよ」

「え……?」

だれ?

びっくりしちゃった。

急に声かけらたのもだけど。

きれいな顔の男のひとだから。

「みんな待ってる。来い」

「な、なんですか……!」

腕を引っ張られて、ワタシは店の外に出ちゃった。

「乗って。はやく」

車に乗せられて、ドアを閉められて。

車はすごいスピードで走る。

「なんですか?ゆーかいですよ!?」

「うるさい、お前ずっといなくなって。みんな迷惑かけてんだぞ」

怖くて、びっくりして、男の人から叱られるなんてないから、涙が出てきた。

「……ごめん。ホント。ぜんぜんいないから、ずっと探してた。大きな声出してごめん」

頭をなでて、ワタシが泣き止むまでずっと、優しかった。

[水平線]

「ついたぞ」

と言われて車から降りた。

「……どこですか、ここ」

「忘れたのか?ま、いいや。ついてきて」

今度は優しく手を引く。

車は、ワタシたちが降りたら、どこかに行っちゃった。

重いトビラを開けて、その先は長い通路。

「おつかれさまです」

通りすがる大人が言う。

「おつかれさまです」

男の人も言う。

「お前もあいさつするんだよ。失礼だろ」

っていわれたから、マネをする。

「お、おつかれさまです……」

「おつかれさま。……ってみゆちゃん、体調だいじょうぶなの?」

「え、みゆ……?ワタシ――」

人違いですって言おうとしたら、

「あ、すみません!まだ調子悪いみたいで」

と男の人がかばった。

それで、どんどん歩いていって、ドアを開けた。

「ここ、座って」

男の人がいって、私はイスに座った。

「あんた、桜川みゆだよな?」

「あの、ワタシ、人違いです……」

申し訳なくて、小さな声で答えた。

「はあ……マジかよ。あんた、名前は?」

「ワタシは本田まゆみ、です」

「マジで?記憶喪失とか、事故にあったとかもナシ?」

「ナシです。ぜんぜん。……ごめんなさい。普通の中学生です……」

「オレ、勘違いして誘拐したってこと?」

「……です」

男の人は、大きなため息をついて、地面に座り込んだ。

「ワタシ、帰ってもいいですか?」

だって人違いだし、誘拐されちゃったし。

トモダチだって、待ってるし。

でも、男の人は、ワタシを見上げてニコッと笑った。

「あんた、ちょっと来て」

「え……」

また腕を引かれて、歩く。

どんどん歩く先に、暗い道があって、その先はまぶしかった。

「どこですか、ここ」

「ここ?知らないの?アイドルになったら、ここに立ちたいって夢の場所」

まぶしいのは、天井から何個もライトが照らすから。

ステージの真ん中にいるって気が付いたのは、男の人が手を離した時。

「あっちを見ろ」

指を差した先をみたら、観客席があった。

ぜんぜん人はいないけど、どこまでも広くて、ステージの上からどこまでも見えるの。

「お前はセンターだ。桜川みゆになるんだ」

「急すぎる……」

答えはくれなかった。

「お前、あいつにそっくりだからステージに立て!」
「今からレッスンする。ひとつでも覚えろ。三時間後には、ライブがはじまるぞ」

「あなた、誰なの?」

「俺?俺はミチヒロ」

「ミチヒロって、テレビで聞いたことある……」

「この間、海外公演やってきたからな」

ママが言ってた。

ミチヒロのファンだって。

それで、すごいダンサーだって。

「ここ、立って」

「はい……」

「鏡の中の俺の動き、真似して」

「わ、わかった……」

左右にステップして、右手と左手を動かして……ああ、ちょっと早すぎる…………バタッ

「何してんだよ」

「そんなこと言っても、ダンスなんて初めてで」

「センスあるよ。大丈夫」

と言って、またレッスンを続ける。

わかんないけど、体は動けたし、うまくできたら褒めてくれるし。

「ちょっと休憩する。なんか飲む?おごるよ」

って、好きなジュース買ってくれた。

「あ……あの、もうママが心配するから……」

壁の時計はもう5時になってた。

「ああ、そっか。じゃ、送る」

って言った。

やっと帰れるの?

ホッとしたら、急に力が抜けちゃった。

「おい、大丈夫か?」

ミチヒロが手を伸ばした時――。

[水平線]

「えっ、みゆ!?」

女の子の声がした。

「帰ってきたの?……みんな!ちょっときて」

もう一人の声がした。

レッスン室のドアが開いて、4人の女の子が来た。

「えっ、あの……」

「ちょっと、どこいってたの。心配したんだからね」

「まって!私も話したい~」

わーわー話しかけられて、困る。

するとミチヒロさんが、女の子たちを止めた。

「話があるから、集合!」

「……はーい」

みんながミチヒロさんのまわりに集まった。

「この子は、代理だ。みゆじゃない」

「えーーー!?」

「静かに。ここからは俺たちのシークレットだ。みゆはまだ見つかってない。こいつ、似てるだろ?」

みんながコクコクうなずく。

「ダンス教えて、ライブ当日、とりあえず立ってもらう。それしかない」

ロングヘアの女の子が、前に出た。

「みゆじゃないのに、いいんですか?」

「とりあえず、だ。みゆは探してる」

ショートカットのつり目の子が、ワタシをみながら言った。

「ダンスできるの?」

「センスはある。けど、今までのパフォーマンスは難しい。フォーメーションを変える」

「でも、ライブで失敗しない?」

「お前たちがカバーしろ。今までだってやってきただろ」

「……」

つり目の子は、ワタシをにらんだ。

「失敗したらゆるさないんだから。みゆを返して」

「……みゆがいないのは、この子のせいじゃない。とりあえず、今日はもう終わり。明日また同じ時間に集合な!」

解散!といったら、女の子たちはどこかに行ってしまった。

[水平線]

おうちに帰ってくる。

ママは心配してて、家の前で待ってた。

「どこにいってたの。心配してたのよ」

「ごめんなさい」

「もう!……って、ミチヒロさん!?」

「こんばんは。お嬢さんを勝手に連れ出してしまい、すみません」

「えっ、何があったの?」

びっくりして目をパチパチさせたママは、とりあえずといってミチヒロさんも家に入れた。

「――ということがあって、本田まゆみさんの力を借りたいんです」

「そんなことがあったんですね。まゆみはどうするの?」

「ワタシ……!?え、と、」

ミチヒロさんはワタシに頭を下げて、

「ライブまででいいから、力を貸してくれ」

って言う。

「ママは反対しないの?」

って聞いたら、ママは

「わたしは、せっかくだからいいんじゃないかなって。ミチヒロさんのファンだし」

って、味方でもない。

「う、うう……」

しばらく悩んで、ワタシは二人に言った。

「わかりました!ワタシ、やります。がんばります!」

大人ふたりとで、ニッコニコして笑って。

ミチヒロさんは契約書を出して、ママはすぐにサインしちゃった。

どうしよう。

アイドルの代理になっちゃった……!?

[水平線]

レッスンは、ミチヒロさんから教えてもらっていた。

「わたしたちも一緒にやりた~い!」

って飛び込んできたのは、ことり。

みゆと一番なかよしなんだって。

「みゆにみえるように、メイクしてあげる」

ロングヘアのリツが、メイクをしてくれた。

「あんたが下手だったら、ぜんぶだめになるんだから」

怒ってるみたいに聞こえるけど、ヒナはけっこういいひと。

「だーいじょうぶ!なんとかなる」

ってゆったり話すのはノドカ。みんなをまとめてくれるお姉ちゃんみたい。

「ごめんね、ちゃんとやるから」

ワタシがいうと、

「ワタシじゃなくて、みゆは~っていうんだよ」

「み、みゆ、ちゃんとやるから」

「そーそー」

そんな感じで、なんとなく仲良くなれたみたい。

「休憩したら、リハするぞ」

ミチヒロさんがいった。

つまり、ステージで練習するってこと。

ちょっとドキッとする。

できるかな、だいじょうぶかな。

みんなをみたら、「だいじょうぶ!」ってニコニコ笑ってる。

リハーサルのために、ステージに行く。

衣装とメイクもして。

衣装はみゆのだけど、サイズもぴったりだった。

「――じゃあ、音流すぞ」

合図があって、曲が始まる。

最初はみんな横一列で、順番にソロダンスをするんだ。

ワタシは最後。

みんなのダンスを横目で見ながら、心臓はバクバクしてる。

(ワタシの番だ――)

ジャンプしてから、くるんと回転する。

ステップを踏んで……みゆが得意なやつ。

最後にジャンプして、決めポーズ……あっ。

足首が変な風に曲がっって、転ぶ。

「大丈夫!?」

みんながやってくる。音が止まる。

「だ、だいじょう――痛っ」

立てないくらい痛い。

「そっちに行く」

ステージの下にいたミチヒロさんがきて、ワタシの足首を見た。

「ねんざしてるな。病院に行くぞ」

「えっ、あの――」

抱きかかえられる。

みんなが「きゃー!」っていう。

ちょっとはずかしい。

「暴れるなよ。首、つかまってろ」

ミチヒロさんの首に、両腕をまわす。ぎゅって抱きつく。

ミチヒロさんが歩くと、ドキドキがとまらない。

心臓がうるさいくらい。

車の後ろの席に座らされる。

運転するのはミチヒロさん。

病院についたら、また抱っこされて、受付のとこのイスに座る。

「よかったら、使ってください」

って看護師さんが車いすを出してくれなかったら、ずっとお姫様抱っこだったかも……。

お医者さんは、ワタシの足をみて、

「ねんざですね。治療します」

って湿布と包帯をしてくれて、一応の薬もくれた。

「ごめん、無理させたかも」

ミチヒロさんが言った。

「ワタシ……じゃなくて!みゆ、できると思ったもん。だいじょうぶ」

「ごめん。立てないし、ダンスできないから、ちょっと考えよう」

「ライブまで治らないの?」

「たぶん」

リハに戻ってから、ワタシはイスに座ることになっちゃった。

せっかくダンス教えてくれたのに、ごめん。

みんなに謝った。

みんなは、責めたりしなくて、

「前にけがしたときも、こうしてたし、ファンのみんなもわかってくれるよ」

「みゆがいるってだけで、きっとだいじょうぶ」

それで、ライブ当日までは安静にしつつ、座って歌うことになった。

[水平線]

ライブ当日。

衣装を着て、メイクをして、本番まで待つ。

みんなはお弁当食べたり、SNS更新したり。

「みゆも更新する?」

ワタシは首を振った。

「本物じゃないって言われたら、困るから」

リツがワタシの顔をのぞきこんだ。

「みゆだって思うメイクしてるから大丈夫」

ことりがワタシにぎゅっと抱きついた。

「わたしと並んで撮らない?だいじょうぶでしょ」

ヒナが反対側に抱きついた。

「ヒナだって……!」

ノドカがスマホを持ってきた。

「だったら、みんなでやろうよ。みゆちゃん真ん中んして、みんなで座って」

「は~い!」

サビの部分を手だけで踊る。

あんまり動かないから、これは平気。

動画を何回か撮り直して。

「じゃあ、あげるね~」

動画のアップが終わった瞬間、ノドカのスマホが何度も鳴る。

「わ、早い。みんな待ってたんだ」

「ほんとだ。メンション来てる」

「みゆも、ほら見て」

ことりがスマホをみせてくれた。

「みんな、かわいいいいいいいい」
「マジすこ」
「みゆちゃんありがと」
「ちょ、そこ入らせて」

次々に出てくるコメント。

「すごい、みんなみてる」

感動して言ったら。

「今度はわたしたちの番だよ。がんばろうね!」

ことりが言った。

「みゆはスマホ壊れたことになってるから。わたしたちで返事するね?」

ノドカが言う。

「お願いします……」

ライブまであと少し。

[水平線]

「じゃあ、そろそろバックステージ行くぞ」

ミチヒロさんが呼ぶ。

「みゆ、こっち」

で、ミチヒロさんが運ぼうとする。

「いや、大丈夫で――」

断ろうとしたけど、やっぱりお姫様抱っこされる。

それで、カーテンがまだ開いてないステージの真ん中のイスに座る。

「――ご来場のみなさまに、ご案内いたします」

ノドカの声だ。

「本日はわたしたちの公演に来てくださいって、ありがとうございます」

「公演にさきだちまして、お願いがあります」

「公演中は所定の時間以外の撮影と録画は禁止しています。わたしたちがいいよっていうまで、スマホは電源を切るか、マナーモードにしてください」

みんなで順番に、ナレーションをしている。

「じゃあ、みゆ、合図をしてね!」

え、ええっ。

びっくりしてたら、ことりがマイクを持ってきた。

「3,2,1って言って」

「わかった。――さん、にー、いちっ」

「「「「スタート!」」」」

四人の声と同時に、カーテンが開く。

カーテンの向こうから、わーわーと声がする。

その中でも「みゆちゃーん」って呼ぶ声が、たくさん聞えた。

ワタシは、せいいっぱい歌った。

[水平線]

「ライブ、大成功だったね」

「だよね。みゆも見てたかな?」

「みてたよ。LINE返ってきたし」

みゆの返事は、スタンプ一つだった。

「ごめん、だって」

楽屋で着替え終わったら、ミチヒロさんがやってきた。

「みゆ、みつかった」

「ほんと?」

「ちょっと嫌になってたんだって。明日会う」

そっか、いたんだ。

ちょっと胸が苦しい。

「じゃあ、この子はどうするの?」

「それは、保留。とりあえず帰ろう」

ミチヒロさんの車で、ワタシは帰った。

ママは待っててくれた。

「今日は本当にありがとうございました」

「いえいえ、娘もすてきな思い出になったと思います」

「で、すみませんが、明日も迎えに来ていいですか?」

「ええ、いいですよ」

ママ、軽っ。

次の日。

本物のみゆは、事務所にやってきた。

「あなたが代理の?」 

可愛い声。

ワタシと同じなんて思えない。

「はい。そーです」

「ありがとう。みゆの代わりをしてくれて。ライブ、たのしかった?」

「……はい。ぜんぜん、できてなかったかもだけど。たのしかったです」

「そっか。……ミチヒロさん、みゆ、お願いあるんだけど」

「なに?」

「この子、これからもみゆの代理にしてもいい?」

にっこり笑う。アイドルスマイル。

「え……それって」

「みゆ、持病があって治療があるから。たまにいなくなるかもだし」

「詳しく聞かせてくれる?」

ミチヒロさんが言って、詳しい話を聞いた。

緊張でどこかに行きたくなるんだって。よくわかんないけど。

それで、たまにワタシがいたらいいなあって……。

「それは、今日は決められない。本田さんの保護者の許可がないと」

「ちぇー。わかったー」

それで、とりあえず話はもちこし。

「でもさ、内緒でアイドルやれたら楽しいと思わない?」

ってみゆに誘われたけど。

「期間限定だったからできただけで、むずかしーよ」

って言っちゃった。

結局、ミチヒロさんはママに言わなくて。

ワタシのとこに、ミチヒロさんはもう来なくなって。

みんなどうしてるんだろうって思ったら、

今年、紅白に出るってきいて、びっくりしちゃった。

みゆが、紅白のインタビューで言ったんだ。

「みゆが困ってた時に助けてくれた女の子に、また会いたいです」

って。

まさか、紅白に来てってことじゃないよね……?

2025/11/25 16:42

OWL
ID:≫ 3071v3KdY/.fw
コメント

クリップボードにコピーしました

この小説につけられたタグ

アイドル代理中学生オリジナルセンター

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はOWLさんに帰属します

TOP