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同級生は婚約者

#3

2 橘清司

 入学式が終わり、校門へ目を向けると、人ごみの中を走り抜ける人の姿があった。
 目を凝らしてみると、神崎凛だった。
 突然告げられた婚約に、戸惑うしかなかった。まさか、同じ学校だったとは。
 家に帰ると、思いがけず神崎凛がいた。
 正座して、上品に座る彼女の横顔には緊張が浮かんでいた。
 「清司に話があってきたそうですよ」
 小声で母はそう告げた。
 話とは、なんだ?
 これまで、同じ年頃の女性とはあまりかかわってきていない。
 街を歩けば、幾つもの視線。こちらを見て顔を赤くする人。
 従姉に容姿を褒められるまで気が付かなかった。
 それが嫌で、中学は告白もすべて断った。彼女らが、外側だけしか見ていないことはわかっていた。
 だから、こうして、神崎凛とのかかわり方さえも分からない。どうすればいいのか、分からない。
 彼女の目の前に座る。
 「今日は、僕に話があっていらっしゃったと聞いたのですが」
 制服のズボンで手汗を拭った。緊張で、手汗がひどい。
 ようやく、彼女が口を開いた。
 「その…。同じ学校だったのですね…」
 「あ…。そのようですね」
 彼女の意図が全く読み取れない。
 「今日は…学校でのことを話しておきたいと思いまして」
 「ああ、学校でのことですか」
 学校でのこと、それは、婚約関係についてだろう。やっと、彼女の言いたいことがわかった。
 「学校では婚約については隠しておくのですよね?」
 彼女の問いに、「そうですね」と答える。
 「厄介でしょう。高校生で婚約など」
 彼女はほっとしたように、微笑んだ。
 「そうですよね。よかったです」
彼女は立ち上がった。
「それでは、ありがとうございました」
「え?」
帰ろうとする彼女に視線を向ける。
「それだけですか?」
彼女の家はここから遠い。そのことを話すためだけに、家に来たとは思っていなかった。しかも、本題はたったの10分ほどで終わってしまった。
彼女は驚いたように固まった。
「はい…。そうですが…」
まさか。本当にそれだけだというのか。
「送ります」
 外はもう暗かった。女性を一人で帰らせるわけにはいかない。
 ふと、彼女のほうを見る。顔が赤い。
 「ありがとうございます…」
 照れたように俯き、つぶやいた。
「いえ…」
なんだかこちらも恥ずかしくなって、顔をそむけた。

彼女を送り届けてから、自分の部屋に向かう。
溜息をつき、天井を見た。

作者メッセージ

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2026/03/15 16:50

雪野さち
ID:≫ 2iHBHQtGWUOII
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婚約恋愛高校同級生

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