「覚えてない」
そう言った恋は、本当に覚えていないようだった。
「本当に?」
ううん、と、恋はもう一度否定した。
「次は?弾ける?」
むり、と小さく声が返ってくる。
弾けないんだ...。
ピアノの前にちょこんと座った恋は、ピアノが弾けなくなっていた。
「ドレミは?ほら、ここ。ど、れ...」
「分からないよっ」
恋は吐き捨てるように言った。そして、自分の部屋に戻ろうと走って行った。
「待って」
私は恋の腕を掴んだ。振り払おうとする我が子を、無理矢理ピアノの丸椅子に座らせる。
「や!やだぁ」
「何度も言いましたね、あなたは記憶喪失なの。いい?きっと思い出す。だから、だから、それまでやめないで」
自分の願望が見え見えだと気付いた。「やめないで」――。訴えるように叫んでしまった自分に腹が立った。
謝ろうとした。
で恋は、そんな私の気持ちに気付いているようだった。
「おばさんは」
オバサン。
それが、私に与えられた称号。
「ピアノ、好きなの?」
どっしりと、体が重くなった。
ぴあの、すきなの?
いいえ、ちがうの。ピアノが好きなわけじゃない。ただ。
あなたの音色が好きなの。
「弾いてほしい?」
まだ弾けるのかと、少し期待してしまった。
でも、もちろんそんなはずはなかった。
「弾けなくて、ごめんね」
恋はすっかり変わってしまったのだと、痛感した。
そう言った恋は、本当に覚えていないようだった。
「本当に?」
ううん、と、恋はもう一度否定した。
「次は?弾ける?」
むり、と小さく声が返ってくる。
弾けないんだ...。
ピアノの前にちょこんと座った恋は、ピアノが弾けなくなっていた。
「ドレミは?ほら、ここ。ど、れ...」
「分からないよっ」
恋は吐き捨てるように言った。そして、自分の部屋に戻ろうと走って行った。
「待って」
私は恋の腕を掴んだ。振り払おうとする我が子を、無理矢理ピアノの丸椅子に座らせる。
「や!やだぁ」
「何度も言いましたね、あなたは記憶喪失なの。いい?きっと思い出す。だから、だから、それまでやめないで」
自分の願望が見え見えだと気付いた。「やめないで」――。訴えるように叫んでしまった自分に腹が立った。
謝ろうとした。
で恋は、そんな私の気持ちに気付いているようだった。
「おばさんは」
オバサン。
それが、私に与えられた称号。
「ピアノ、好きなの?」
どっしりと、体が重くなった。
ぴあの、すきなの?
いいえ、ちがうの。ピアノが好きなわけじゃない。ただ。
あなたの音色が好きなの。
「弾いてほしい?」
まだ弾けるのかと、少し期待してしまった。
でも、もちろんそんなはずはなかった。
「弾けなくて、ごめんね」
恋はすっかり変わってしまったのだと、痛感した。