「父さん、遂に見つけたよ。」
[漢字]川野繭[/漢字][ふりがな]かわのまゆ[/ふりがな]は、ポスターを見つめてそう呟いた。
閉店した店ばかりの寂れた商店街に貼られた真新しいポスター。それは、立山傑という研究者が発案した、「人類空上進出プログラム」参加者を募集する内容だった。
(18歳から22歳の方...男女不問...。)
繭は、見つけた、と思った。
私が、空へ行くチャンスが。
知る、チャンスが。
繭の父はパイロットだった。
空に生き、空に生かされ、そして空を愛した男だった。
だが、「初夏の日」以来多発した異常気象が原因で事故に遭い、繭が幼い内に亡くなった。
遺体は焼け焦げた状態で見つかった。死因は感電だった。
母は、繭が18になり病死するまでそれ以来空を恐れ、自身と娘を一歩も外に出さなかった。
繭はひとりだった。
幼いころから空を恐れなければならず、生き方を教わらなかった彼女は、毎日を当てのない道を歩くように生きていた。
そして母を失った2年後、このポスターを見つけたのだ。
空へ行けば、異常気象の原因がわかるかもしれない。本当に地球環境だけが原因なのか、それともほかの何かが影響しているのか。繭は知りたかった。
知れば、父の真相もまた、知ることができるかもしれないと思ったのだ。
(二回の試験を突破した後...6名が選ばれる。特に資格は必要ないようだし、受けてみるしかない。)
突破した6名に任されるのは、雲の上での2週間の生活。
(2週間の間で、私は...見つけなければ。)
顔も知らない父の死の真相を。
母が恐れていたものの姿を。
繭はポスターの内容をメモに取り、歩きだした。