[中央寄せ]🥄[/中央寄せ]
むつは、食べ終わってからも、あのピノの箱は自分の部屋においている。
なんだか、箱を見るだけであったかい気持ちになる。
あのときから、学生には会っていない。
きっと、家に帰ったのだろう。
もう一度会えたら。
そういう思いで、むつは散歩に行くことにした。
夏祭りからもう二週間が過ぎ、ちょっと寒い時期になっていた。
ヒュウううううううううううううう.............
風を切る音がする。
もう木枯らしかな..........
むつが思い始めたそのとき。
「おい、女」
聞き覚えのある声が、背後で、した。
むつは振り向く。
後ろには..............誰もいなかった。
ただ、ずっと向こうに、人がいて、こちらを見ていただけだった。
その人は、くるりと向きを変えて、遠くに歩いていった。
「まって!」
むつは走り出した。
顔も見えなかったけど。
もしあの学生なら。
お礼を言いたい。会いたい...........。
[水平線]
[明朝体]どれくらい時間が経っただろう。[/明朝体]
[水平線]
会えなかった。
人は、そのまま行ってしまった。
なんだか、消えていくようにも見えた。
はかない存在のように思えた。
再びあの学生に会うことは、できないのかもしれない。