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ファンタジー?日常的?な物語集

#7

これぐらいの幸運

期末テストの最終日、教室は熱を持った水槽みたいだった。扇風機は回っているのに、空気はぬるい。最後の英語は手応えが微妙で、「まあ赤点ではないだろ」と自分に言い聞かせるしかなかった。
チャイムが鳴った瞬間、教室が一斉にざわめく。友だちは「海行こうぜ」と騒いでいるけれど、今日はそんな気分でもなくて、僕は一人で校舎を出た。
外は真昼の光。アスファルトが白く光っている。コンビニでアイスでも買おうか迷っていると、後ろから名前を呼ばれた。
振り向くと、クラスの佐藤が立っていた。文化祭の準備で少し話したことがあるくらいの距離感だ。
「さっきの英語さ、最後の問題って三番だよね?」
「たぶん。俺も三番にした」
 それだけの会話なのに、なぜか少し安心する。間違っていても、道連れがいる安心感だ。
 せっかくだからと二人でコンビニに入り、同じソーダ味のアイスを買った。外に出ると、ちょうど入道雲がもくもくと膨らんでいる。溶ける前に急いでかじると、しゃり、と音がして、頭がきんとした。
「夏って感じだね」と佐藤が笑う。
 その横顔が、思っていたよりずっと柔らかいことに気づく。特別な約束はない。連絡先を交換するわけでもない。ただ、テスト終わりの帰り道を少しだけ一緒に歩く。
 駅前で手を振って別れたあと、ポケットの中のレシートが汗でくしゃくしゃになっているのに気づいた。
 テストの出来は相変わらず分からない。将来も、たぶんまだぼんやりしている。でも、今日の午後には、同じ答えを選んだ誰かと、同じアイスをかじった時間がある。
 入道雲を見上げながら、僕は少しだけ笑った。
 これぐらいの幸運でいいんだ。

作者メッセージ

本当にこの作品を好きな方、申し訳ございません。誠に残念ながらこの小説はこの話で完結させますm(_ _)m ここまで見てくれた方、ありがとうございました。

2026/02/28 01:57

猫山 未来
ID:≫ 648bEJZTmQU2o
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