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多少暴力表現があるかも知れません。あと、なろう要素があるかも(チート系などなるべく入れないようにしていますが)。
古本戦記
#1
まだ日常の続いた日
『この本は手に渡れば誰でも魔導術が使えてしまう本です。他人への譲渡・売買はシゼアエイル王国法第五条に反します』
手に取った古本は、そんな一文から始まっていた。一ページ目から文章と魔術陣でぎっしりと埋められたかなり重い本で、ページに触れると微かな風の音と共に勝手に捲れる。魔導術といえば、国王と一部の貴族にしか使えない不思議な術。それが私にも使えるのか、と少し興奮してしまう。
「ベライダ店長。一体どうしたのですか?そんな本を持って私に何…」
「水 それは私に 恵みをもたらすもの この地に降り注ぎ 慈愛の雨とならんことを」
試しに話しかけてきたレイズに向かって手を翳し、本に書いてあった通りに詠唱する。その瞬間、レイズの頭上から滝の如く水が降り注ぎ、服は濡れて透け……て、あられもない姿に。
「店長…?一体何の真似ですか?先日の戴冠式で見た魔導術を再現したとでも?まさか、貴女は国王や貴族の子でもないでしょうに」
私に降ったのは慈愛の雨ではなくレイズの疑問符の雨だった。むしろ、怒りも感じられるような。魔導術が使えると書いてあったから使った、それだけなのに。
「この服はお嬢様が洗ってくださるんですか?責任の取れないことはしないようにとずっと言ってきた私の苦労は…」
「レイズ。あのね」
「何ですか?」
なるべく真面目に見えるように、真剣な眼差しを作って私は言った。
「私はお嬢様じゃなくて店長じゃないの?」
「…店長は今月おやつ抜きです。それから、後でその手に持っている本の話も聞かせてください」
かなり怒らせることに成功した。ある意味失敗でもある。しかし、おやつ抜きはかなりひどいと思う
「レイズ、せめてチョコレートはありにして頂戴…?」
「チョコレートは太りますよ。それに、高いので古本屋の稼ぎで得られる量も限られます」
「一粒でも良いから!お願いレイズ…高いことは分かっているの。でも、私はチョコレートがないと生きていけないの…!」
「ダメですよ。そんなに甘いものが好きなら砂糖でも舐めていたら良いのではないですか?」
「違うのよ!砂糖とチョコレートの甘さはまた…」
チョコレートについて熱く語り出そうとした私を、レイズは口を強引に手で塞いで止めた。解せぬ。
「ん…いらららら!れいふやめれ!いらいから…」
「はい?何と言っているかよく聞こえませんね」
「ひどい…れいふ…」
レイズに無言で頬を引っ張られた。これはかなり痛い。うまく話せないのでレイズ相手には抗議することもできない。
「はぁ…分かりました。チョコレートは一旦無しにしますが、食べたければ必死に働いてくださいね」
レイズがやっと私の頰から手を離した。だがそこで気がついてしまったのだ。“チョコレートは一旦無しにしますが”?
「サラッとチョコレート禁止宣言しないでよレイズっ…!」
私の悲鳴とも取れる叫び声が響き渡る、よく晴れた朝の出来事だった。
手に取った古本は、そんな一文から始まっていた。一ページ目から文章と魔術陣でぎっしりと埋められたかなり重い本で、ページに触れると微かな風の音と共に勝手に捲れる。魔導術といえば、国王と一部の貴族にしか使えない不思議な術。それが私にも使えるのか、と少し興奮してしまう。
「ベライダ店長。一体どうしたのですか?そんな本を持って私に何…」
「水 それは私に 恵みをもたらすもの この地に降り注ぎ 慈愛の雨とならんことを」
試しに話しかけてきたレイズに向かって手を翳し、本に書いてあった通りに詠唱する。その瞬間、レイズの頭上から滝の如く水が降り注ぎ、服は濡れて透け……て、あられもない姿に。
「店長…?一体何の真似ですか?先日の戴冠式で見た魔導術を再現したとでも?まさか、貴女は国王や貴族の子でもないでしょうに」
私に降ったのは慈愛の雨ではなくレイズの疑問符の雨だった。むしろ、怒りも感じられるような。魔導術が使えると書いてあったから使った、それだけなのに。
「この服はお嬢様が洗ってくださるんですか?責任の取れないことはしないようにとずっと言ってきた私の苦労は…」
「レイズ。あのね」
「何ですか?」
なるべく真面目に見えるように、真剣な眼差しを作って私は言った。
「私はお嬢様じゃなくて店長じゃないの?」
「…店長は今月おやつ抜きです。それから、後でその手に持っている本の話も聞かせてください」
かなり怒らせることに成功した。ある意味失敗でもある。しかし、おやつ抜きはかなりひどいと思う
「レイズ、せめてチョコレートはありにして頂戴…?」
「チョコレートは太りますよ。それに、高いので古本屋の稼ぎで得られる量も限られます」
「一粒でも良いから!お願いレイズ…高いことは分かっているの。でも、私はチョコレートがないと生きていけないの…!」
「ダメですよ。そんなに甘いものが好きなら砂糖でも舐めていたら良いのではないですか?」
「違うのよ!砂糖とチョコレートの甘さはまた…」
チョコレートについて熱く語り出そうとした私を、レイズは口を強引に手で塞いで止めた。解せぬ。
「ん…いらららら!れいふやめれ!いらいから…」
「はい?何と言っているかよく聞こえませんね」
「ひどい…れいふ…」
レイズに無言で頬を引っ張られた。これはかなり痛い。うまく話せないのでレイズ相手には抗議することもできない。
「はぁ…分かりました。チョコレートは一旦無しにしますが、食べたければ必死に働いてくださいね」
レイズがやっと私の頰から手を離した。だがそこで気がついてしまったのだ。“チョコレートは一旦無しにしますが”?
「サラッとチョコレート禁止宣言しないでよレイズっ…!」
私の悲鳴とも取れる叫び声が響き渡る、よく晴れた朝の出来事だった。