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一部流血表現やその他不快になる描写があるかも知れません。それを承知の上読んでいただけると幸いです。
「レシェル? 出ていくって、その…どういうことなの?」
翌朝、朝食で開口一番にリデイアにそう問われた。今日出ていくつもりだから、いっそ真実を全て話してしまおう。
「私はレシェルじゃないんです。フィレデリアです。それに…【解除】。ほら、見た目も違うでしょう」
変化の魔術を解除する。髪は茶色から銀へ、瞳も黒から銀へ。肌の色も白くなった。
「わっ、お姉ちゃん白っ!」
「あ、貴女ってもしや、ラズタルキアの…?」
そう、私の容姿はラズタルキア公国に住む人の特徴だ。
「はい。騙していてごめんなさい。でも、必要な嘘だったから」
「…ラズタルキア公国か。嘘ついてまでここにいる意味、あったか?」
「話せばここをルテイフィラスの標的にしてしまうけれど、それでもいいかしら」
私はヴァレスを黙らせる天才なのではないか…いや、冗談だよ。
「ルテイフィラスの標的…? 貴女はルテイフィラスの人達に何をしたの?」
「私はそれを言いませんし、言ってしまえば後で殺さなければならないかも知れません。飽くまで私にとって一番大事なのは師匠の結界ですから。」
「そうそう、あのねお母さん。それで、ジュリもついて行っていい?お姉ちゃんに」
「ダメよ。レシェ…フィレデリアにはまだジュリエナを託せるほどの信用はないもの」
やはり今ので信用は著しく下がったようだ。少し寂しい。いつかやらなければならない事なのは分かっているのだけれど。
「私としては、親切にしてくれた貴女たちがルテイフィラスに襲われて欲しいわけじゃないんです。ジュリエナを交渉材料にするのも本意ではありませんし」
「…なら、衣食住の保証と一日二回の連絡」
「それで、ジュリエナを連れて行って良いんですか? 三日ほどは連絡できないかも知れませんが…」
「行き先はどこなの?」
「ヒュリニオン王国の魔導学院です。そこに行かせれば足手纏い度は減ると思うので」
ヒュリニオンの学院は私とフュレイヴの母校でもある。卒業すれば中退の私より成績優秀になる可能性もあるので、足手纏いではなくなると思う。
「分かった。それなら良いわよ。でも、その連絡の取れない三日はど何をするの?」
「学院に入るにあたって足りない年齢を、時間を加速させて補います。精神年齢も上げるつもりですから、三日はかかるかなと。本人は一時間くらいの体感だと思いますよ」
「あ、あの、痛かったりしない? それに、そういうのって…服がすごいことになりそうじゃない?」
今「凄く痛いよ」と伝えると逃げられそうなので、ギリギリまで無視しておこう。後戻りできないように。
「とにかく、そうと決まれば時間的にも今日中に出るしかないわ。荷造りをするわよ」
「心の準備とか、そういうのは…」
「要らないわ。そんなことしている場合なら勉強でもしていないと追いつけないわよ」
スパルタだったが、フュレイヴと同じ方法でジュリエナにも教えれば学院の勉強にはついて行くことが出来るだろう。しかし七歳にスパルタ教育を施すのは少し、というかかなり心苦しいのだが、そういうのは自分から言い出したジュリエナの責任だろう、きっと。
「学院ってどんなところ? やっぱり、富豪の子や貴族の子が多い?」
「そうね。そういう子もいるけれど、国からの援助をもらって庶民でも寮で暮らしている子もいるわ。」
大体は金持ちが多いのだが、援助金がもらえるぐらい優秀になれば良いだけに話だ。そうすれば『汚い女』などと蔑まれることも少なくなる。私のように、ね。
「お金があまり多くは手に入らないと思うから、援助金枠で入るわ。だからかなりの詰め込み教育になると思うけれど」
「ひぃ…でもジュリ、いや私頑張るよ。じゃないとお姉ちゃんの足手まとい? になるんだもんね」
「えぇ。じゃあ早速荷造りを…でも、着替えだけでいいわ。お金や食料は私が負担するから」
「待ってフィレデリア。少しは持って行って頂戴。申し訳ないというか、ジュリエナを任せるのだし」
ヒュリニオンの物価はゲレンデル並に高いので貰えるものは貰っておきたいのだが、残念ながらヒュリニオンではヒュリニオンでしか使えない通貨があるので貰っても換金がかなり難しい。何もしないで貰うのも…と思うところもあるのでここは素直に断っておく。
「ヒュリニオンには独自の通貨があるでしょう。換金商も中々いないので、貰ってもあまり足しにならないかも知れません」
「ならせめて、パンをいくつか持って行って。そうすれば道中で食べられるでしょう」
「貰ってもいいんですか? こちらの都合なので、少し申し訳ないというか…」
「今まで働いてくれたお礼よ。遠慮なく貰って行って」
リデイアはとびきりの笑顔で笑った。ジュリエナと私もつられて笑った。
そうして私たちは旅立つことになった。連絡用水晶を渡して、ジュリエナはこれから起こることを想像もせず無邪気に笑っていた。
翌朝、朝食で開口一番にリデイアにそう問われた。今日出ていくつもりだから、いっそ真実を全て話してしまおう。
「私はレシェルじゃないんです。フィレデリアです。それに…【解除】。ほら、見た目も違うでしょう」
変化の魔術を解除する。髪は茶色から銀へ、瞳も黒から銀へ。肌の色も白くなった。
「わっ、お姉ちゃん白っ!」
「あ、貴女ってもしや、ラズタルキアの…?」
そう、私の容姿はラズタルキア公国に住む人の特徴だ。
「はい。騙していてごめんなさい。でも、必要な嘘だったから」
「…ラズタルキア公国か。嘘ついてまでここにいる意味、あったか?」
「話せばここをルテイフィラスの標的にしてしまうけれど、それでもいいかしら」
私はヴァレスを黙らせる天才なのではないか…いや、冗談だよ。
「ルテイフィラスの標的…? 貴女はルテイフィラスの人達に何をしたの?」
「私はそれを言いませんし、言ってしまえば後で殺さなければならないかも知れません。飽くまで私にとって一番大事なのは師匠の結界ですから。」
「そうそう、あのねお母さん。それで、ジュリもついて行っていい?お姉ちゃんに」
「ダメよ。レシェ…フィレデリアにはまだジュリエナを託せるほどの信用はないもの」
やはり今ので信用は著しく下がったようだ。少し寂しい。いつかやらなければならない事なのは分かっているのだけれど。
「私としては、親切にしてくれた貴女たちがルテイフィラスに襲われて欲しいわけじゃないんです。ジュリエナを交渉材料にするのも本意ではありませんし」
「…なら、衣食住の保証と一日二回の連絡」
「それで、ジュリエナを連れて行って良いんですか? 三日ほどは連絡できないかも知れませんが…」
「行き先はどこなの?」
「ヒュリニオン王国の魔導学院です。そこに行かせれば足手纏い度は減ると思うので」
ヒュリニオンの学院は私とフュレイヴの母校でもある。卒業すれば中退の私より成績優秀になる可能性もあるので、足手纏いではなくなると思う。
「分かった。それなら良いわよ。でも、その連絡の取れない三日はど何をするの?」
「学院に入るにあたって足りない年齢を、時間を加速させて補います。精神年齢も上げるつもりですから、三日はかかるかなと。本人は一時間くらいの体感だと思いますよ」
「あ、あの、痛かったりしない? それに、そういうのって…服がすごいことになりそうじゃない?」
今「凄く痛いよ」と伝えると逃げられそうなので、ギリギリまで無視しておこう。後戻りできないように。
「とにかく、そうと決まれば時間的にも今日中に出るしかないわ。荷造りをするわよ」
「心の準備とか、そういうのは…」
「要らないわ。そんなことしている場合なら勉強でもしていないと追いつけないわよ」
スパルタだったが、フュレイヴと同じ方法でジュリエナにも教えれば学院の勉強にはついて行くことが出来るだろう。しかし七歳にスパルタ教育を施すのは少し、というかかなり心苦しいのだが、そういうのは自分から言い出したジュリエナの責任だろう、きっと。
「学院ってどんなところ? やっぱり、富豪の子や貴族の子が多い?」
「そうね。そういう子もいるけれど、国からの援助をもらって庶民でも寮で暮らしている子もいるわ。」
大体は金持ちが多いのだが、援助金がもらえるぐらい優秀になれば良いだけに話だ。そうすれば『汚い女』などと蔑まれることも少なくなる。私のように、ね。
「お金があまり多くは手に入らないと思うから、援助金枠で入るわ。だからかなりの詰め込み教育になると思うけれど」
「ひぃ…でもジュリ、いや私頑張るよ。じゃないとお姉ちゃんの足手まとい? になるんだもんね」
「えぇ。じゃあ早速荷造りを…でも、着替えだけでいいわ。お金や食料は私が負担するから」
「待ってフィレデリア。少しは持って行って頂戴。申し訳ないというか、ジュリエナを任せるのだし」
ヒュリニオンの物価はゲレンデル並に高いので貰えるものは貰っておきたいのだが、残念ながらヒュリニオンではヒュリニオンでしか使えない通貨があるので貰っても換金がかなり難しい。何もしないで貰うのも…と思うところもあるのでここは素直に断っておく。
「ヒュリニオンには独自の通貨があるでしょう。換金商も中々いないので、貰ってもあまり足しにならないかも知れません」
「ならせめて、パンをいくつか持って行って。そうすれば道中で食べられるでしょう」
「貰ってもいいんですか? こちらの都合なので、少し申し訳ないというか…」
「今まで働いてくれたお礼よ。遠慮なく貰って行って」
リデイアはとびきりの笑顔で笑った。ジュリエナと私もつられて笑った。
そうして私たちは旅立つことになった。連絡用水晶を渡して、ジュリエナはこれから起こることを想像もせず無邪気に笑っていた。