閲覧前に必ずご確認ください
一部流血表現やその他不快になる描写があるかも知れません。それを承知の上読んでいただけると幸いです。
翌日から私は仕事に励んでいた。朝から行列が出来ていて、かなり人気のパン屋だったらしい。
「では、リドウルとヴィレ、白パンとチョコレートパンで、合計レザ銅貨十七枚です。他の通貨でお支払いしますか?」
「いや、レザの方で大丈夫だ。これで丁度か。そういやお嬢ちゃん、見ない顔だな。新人か?」
「あ、レシェル。この人は常連のデイドさん。偶にパンを沢山買っていってくれる良い人よ」
そうクスリと笑ってリデイアが私に耳打ちしていった。それを聞いて私はもう少し愛想の良い笑顔を深めた。
「常連さんなんですね。私は入りたてですが、なるべく役に立てるよう頑張っているつもりです」
「リュナーシェルの子か。良いところに拾われたな。富裕層だとリュナーシェルの人間を下に見てるやつが多いし、奴隷にされてるやつも多い。助けるにしても手が届かんからな。…あぁ、怖がらせてすまんな。じゃ」
話すだけ話した後、デイドはパンを持って店を出ていった。人と話すのは今までずっと苦手だったのだが、変化している今はフィレデリアではないし、変化の魔術を解除して「あ、それ私じゃないです」と言えば私のことではなくなるのだ。
「いらっしゃいませー! 今は、リドウルがおすすめですよー」
ジュリエナも朝から体力を持て余しながら看板娘を頑張っている。頑張ってるねとお客に頭を撫でられると嬉しそうに笑う。それが道行く人達の目を引いているようで、可愛いわねと店内に入ってくるおばさま方もいる。
「こら、並んでるぞ。ジュリエナ見てる暇があったら働け」
工房から出てきたパン係のヴァレスに叱られた。こいつはかなり毒舌でなのだが、パンは美味い。ジュリエナとは対の性格だ。あと顔が良くて、チラチラとこっちを見る人がかなりいる。
「あっ、ごめんなさい。つい見ちゃってて…可愛いわね、ジュリエナちゃん」
そう、実は私も見惚れていたのだ。ジュリエナの可愛さに。
「馬鹿なこと言うな。人に媚びるのがうまいだけだろ」
「それは違うと思うわ。少女特有の可愛さってやつでしょ」
「俺はあんまり好きじゃないな。というか、子供は嫌いだ」
「貴方も子供だった時期があったのに?」
そう言い返すと彼はすぐ黙り込んでしまった。彼自身もまだ18歳で子供といえば子供だと思うけれど、と言ってしまえば余計に拗ねられる気がする。口論に勝ってニヤニヤしながら私は客を捌いていく。
「あの…ゲレンデルって知っていますか? 西の方の国で、ギドで支払えませんか?」
「はい、大丈夫ですよ。リダ銀貨二枚ですから、ギド金貨三枚ですね…って、かなり違うんですね」
メモ帳に書かれたギドとレザの違いに驚愕する。金貨ということはここだと物価がかなり高く感じるのではないだろうか。
「はい。かなりギドの価値が下がってしまって旅が大変になってしまって。」
「それは大変ですね。リュナーシェルに着いたら少し楽になるかも知れませんから、頑張ってくださいね。」
時に励まし、愛想を振りまいてパン屋の娘のように振る舞う。人の役に立てていることを実感して、演技だけれどかなり嬉しい。それが何日、何週間、何ヶ月と続き、リデイア達との仲もかなり深まった。…気がする。そして、パン屋で働き始めて半年経った頃。事件が起きたのだ。
「ふぅ…【解除】。やっぱり変化は疲れるわ。」
そうして変化の魔術を解除し、自室のベッドに倒れ込んだ瞬間。
「見つけたよ、フィレデリア。ここにいたのだな」
ヒヤリと首筋にナイフの当てられる感覚がした。背後からは女の声がする。気が緩んだ隙に変化の解除の瞬間を見られたらしい。多分、ルテイフィラスから私を殺しにきた暗殺者か、情報を聞き出すための拷問官だ。
「結界を壊す方法を教えなさい。貴方はフュレイヴの弟子でしょう?」
「ええ、そうね。でも、師匠の大切な魔術なのだから、壊す方法なんて易々と教える訳がないと分かっているんじゃないかしら」
「あぁ。だからここにいるんだよ、人質が。」
ゆっくりと後ろを振り向く。そこにいたのは、静かに涙を流して震えるジュリエナだった。そう認識した瞬間頭にカッと血が上る。
「ジュリエナを離せ!」
私の力任せな攻撃魔術を女は軽々と避け、ジュリエナを盾にしようとする。攻撃魔術の赤い光線はジュリエナをよけ、分裂してジュリエナ女の手首と脳天を貫いた。だが傷口から噴き出したのは血ではなく、紫色の煙だった。ジュリエナは
「チッ、偽物か…」
武器ごと紫色の煙になって霧散していった。どうやら分身体で本物ではないようだ。
「あ、あの、お姉ちゃん…だよね…?」
「ごめん、驚かせちゃったね」
「えっと、くちどめにころす…とか、しないよね?」
「どこでそんな言葉覚えたの? さっきの人に言われたの?」
「うん。きっと君は助かってもフィレデリア? にころされるよって。お姉ちゃん、レシェルじゃないの?」
あの女、ジュリエナに聞かせてはいけないことをいくつも聞かせて帰ったようだ。私がここに居られないように。
「私はもう今日出ていくよ。ごめんね。リデイアさん達には、『お姉ちゃんはまた旅に出たんだって』って言ってくれるかな。」
「そんなのいやだよ。お姉ちゃんが出ていっちゃうなんて…それなら、ジュリエナも着いていく!」
「…そこまでいうなら、明日まではここに居るから、リデイアさん達と話をするね。」
「わかった。絶対、ついていくからね。」
「では、リドウルとヴィレ、白パンとチョコレートパンで、合計レザ銅貨十七枚です。他の通貨でお支払いしますか?」
「いや、レザの方で大丈夫だ。これで丁度か。そういやお嬢ちゃん、見ない顔だな。新人か?」
「あ、レシェル。この人は常連のデイドさん。偶にパンを沢山買っていってくれる良い人よ」
そうクスリと笑ってリデイアが私に耳打ちしていった。それを聞いて私はもう少し愛想の良い笑顔を深めた。
「常連さんなんですね。私は入りたてですが、なるべく役に立てるよう頑張っているつもりです」
「リュナーシェルの子か。良いところに拾われたな。富裕層だとリュナーシェルの人間を下に見てるやつが多いし、奴隷にされてるやつも多い。助けるにしても手が届かんからな。…あぁ、怖がらせてすまんな。じゃ」
話すだけ話した後、デイドはパンを持って店を出ていった。人と話すのは今までずっと苦手だったのだが、変化している今はフィレデリアではないし、変化の魔術を解除して「あ、それ私じゃないです」と言えば私のことではなくなるのだ。
「いらっしゃいませー! 今は、リドウルがおすすめですよー」
ジュリエナも朝から体力を持て余しながら看板娘を頑張っている。頑張ってるねとお客に頭を撫でられると嬉しそうに笑う。それが道行く人達の目を引いているようで、可愛いわねと店内に入ってくるおばさま方もいる。
「こら、並んでるぞ。ジュリエナ見てる暇があったら働け」
工房から出てきたパン係のヴァレスに叱られた。こいつはかなり毒舌でなのだが、パンは美味い。ジュリエナとは対の性格だ。あと顔が良くて、チラチラとこっちを見る人がかなりいる。
「あっ、ごめんなさい。つい見ちゃってて…可愛いわね、ジュリエナちゃん」
そう、実は私も見惚れていたのだ。ジュリエナの可愛さに。
「馬鹿なこと言うな。人に媚びるのがうまいだけだろ」
「それは違うと思うわ。少女特有の可愛さってやつでしょ」
「俺はあんまり好きじゃないな。というか、子供は嫌いだ」
「貴方も子供だった時期があったのに?」
そう言い返すと彼はすぐ黙り込んでしまった。彼自身もまだ18歳で子供といえば子供だと思うけれど、と言ってしまえば余計に拗ねられる気がする。口論に勝ってニヤニヤしながら私は客を捌いていく。
「あの…ゲレンデルって知っていますか? 西の方の国で、ギドで支払えませんか?」
「はい、大丈夫ですよ。リダ銀貨二枚ですから、ギド金貨三枚ですね…って、かなり違うんですね」
メモ帳に書かれたギドとレザの違いに驚愕する。金貨ということはここだと物価がかなり高く感じるのではないだろうか。
「はい。かなりギドの価値が下がってしまって旅が大変になってしまって。」
「それは大変ですね。リュナーシェルに着いたら少し楽になるかも知れませんから、頑張ってくださいね。」
時に励まし、愛想を振りまいてパン屋の娘のように振る舞う。人の役に立てていることを実感して、演技だけれどかなり嬉しい。それが何日、何週間、何ヶ月と続き、リデイア達との仲もかなり深まった。…気がする。そして、パン屋で働き始めて半年経った頃。事件が起きたのだ。
「ふぅ…【解除】。やっぱり変化は疲れるわ。」
そうして変化の魔術を解除し、自室のベッドに倒れ込んだ瞬間。
「見つけたよ、フィレデリア。ここにいたのだな」
ヒヤリと首筋にナイフの当てられる感覚がした。背後からは女の声がする。気が緩んだ隙に変化の解除の瞬間を見られたらしい。多分、ルテイフィラスから私を殺しにきた暗殺者か、情報を聞き出すための拷問官だ。
「結界を壊す方法を教えなさい。貴方はフュレイヴの弟子でしょう?」
「ええ、そうね。でも、師匠の大切な魔術なのだから、壊す方法なんて易々と教える訳がないと分かっているんじゃないかしら」
「あぁ。だからここにいるんだよ、人質が。」
ゆっくりと後ろを振り向く。そこにいたのは、静かに涙を流して震えるジュリエナだった。そう認識した瞬間頭にカッと血が上る。
「ジュリエナを離せ!」
私の力任せな攻撃魔術を女は軽々と避け、ジュリエナを盾にしようとする。攻撃魔術の赤い光線はジュリエナをよけ、分裂してジュリエナ女の手首と脳天を貫いた。だが傷口から噴き出したのは血ではなく、紫色の煙だった。ジュリエナは
「チッ、偽物か…」
武器ごと紫色の煙になって霧散していった。どうやら分身体で本物ではないようだ。
「あ、あの、お姉ちゃん…だよね…?」
「ごめん、驚かせちゃったね」
「えっと、くちどめにころす…とか、しないよね?」
「どこでそんな言葉覚えたの? さっきの人に言われたの?」
「うん。きっと君は助かってもフィレデリア? にころされるよって。お姉ちゃん、レシェルじゃないの?」
あの女、ジュリエナに聞かせてはいけないことをいくつも聞かせて帰ったようだ。私がここに居られないように。
「私はもう今日出ていくよ。ごめんね。リデイアさん達には、『お姉ちゃんはまた旅に出たんだって』って言ってくれるかな。」
「そんなのいやだよ。お姉ちゃんが出ていっちゃうなんて…それなら、ジュリエナも着いていく!」
「…そこまでいうなら、明日まではここに居るから、リデイアさん達と話をするね。」
「わかった。絶対、ついていくからね。」