閲覧前に必ずご確認ください
一部流血表現やその他不快になる描写があるかも知れません。それを承知の上読んでいただけると幸いです。
昼休憩のチャイムが鳴り、皆グループを作って教室から散っていく。私は一人、ロッカーに入れていた弁当を取り出して机に置いた。
「あら…グリニアさん、貴女も一人なの?」
「えぇ、ランティルデ様。あまり人と親しくすることが得意ではなくて」
「先程の班の方々は?」
「それは、貴女にも当てはまると思います」
それもそうね、と項垂れた後、ランティルデは私の隣の席に座って弁当を広げた。
「私、多国籍の学校ではヒュリニオンの敵国出身もいますし、一応公爵家の身分ですから毒殺も有り得ないわけでは無いのです」
「だから、学食には行かないのですね」
「えぇ。貴女はどうしてなの?」
「秘密です。でも、いつか言わなければならないかも知れませんね」
私も大体、ランティルデと同じような理由だ。ルテイフィラス出身もいる中、呑気に学食に行ってルテイフィラスの料理人に毒を食わされてはたまらない。ジュリエナにもそう伝えてある。
「そうですか……。なら、お友達になれば教えてくださいますか?」
「いえ、お友達でもお話し出来ません。でも、お友達になること自体は大丈夫ですよ」
「本当ですか? なら、私初めてのお友達ですね」
「あら、ランティルデ様は令嬢方のお友達がいるのではないですか?」
どうやらランティルデは完全無欠な訳では無いらしい。安心した。にしても、自分から友達にと話しかけてくる子はいないのだろうか。
「私、色々な理由で少し周りから隔離されていて…十五歳になってここで人と関わるのを許されたのです」
ふむ、隔離。私はまだ情報不足なようだし、ここで集めなければならない情報はかなり多そうだ。入学式にレッティルダらしき人物を見たが、双子の割にあまり似ていないのも関係あるかも知れない。ただ、ここで「双子ではない」と断定するのは良くないか。
「では、本当に私が一番なのですね。嬉しいです」
「フフ。…じゃあ、お弁当を頂きましょう」
カトラリーを手に取り、ランティルデが弁当を丁寧な仕草で食べ始めた。この辺りでは見かけない食材が多いので、きっとお金をかけているのだろう。私のは野菜とハムのサンドイッチだけだ。
「あら、グリニアさん、えぇと…質素なのですね。ダイエット中ですか?」
「まぁ、そんなところですね。弁当一つにあまりお金をかけられませんし」
少しランティルデに皮肉をこめて言ってみると、「そうですか…少し要りますか?」と哀れみの視線を向けられた。多分、皮肉が効かないのだろう。
___そうして他愛の無い話をし、弁当を食べ終わった頃。
「ランティルデ様、いらっしゃいますか? わたくし、六回生のウィアレアと言うのですが…」
「どうかしまして? わたくし、サロンのお約束でもしましたでしょうか」
六回生は確か私の知り合いが多い学年だ。ウィアレアも同じ本を好きな友達だったし、危ないかも知れない。
「いえ、ランティルデ様。お誘いに来たのですよ。今三席余っていて…もし良ければ、そちらのお友達も」
そう言ってウィアレアは、ランティルデに気づかれない程度に私に向けてウィンクした。あの時と、同じ本を持って。
___ウィアレアの屋敷のティールームに招かれ、席に着く。因みに、学院は寮だけでなく金を積めば屋敷なども変えるのだ。
「お誘い頂けて嬉しいです、ウィアレア様。噂は聞いていたのですが、本当に容姿が整っていらっしゃいますね」
私はウィアレアの隣に半強制的に座らされ、横にまた知り合いのサリアも座らされていた。サリアも私の正体に気が付いているようで、ソワソワしているのがハッキリ分かる。
「いえいえ、お母様やお父様を褒めてくださいませ。わたくしは何もしていませんから」
「にしても、ウィアレア様とグリニアさんに交流があったとは驚きです。お二人ともラズタルキア出身とはいえ…」
「身分が違いますものね。私は庶民で援助金入学をしていますが、ウィアレア様は侯爵家の令嬢でいらっしゃるもの」
「グリニアはわたくしの自慢の友ですよ。なんてったってラズタルキアの首都一番の魔術師ですから」
確かに私は魔術師だが、一番では無い。上には上が居過ぎるものだ。というか、褒めるなら味覚のない状態でなんとか食事を食べていることを褒めて欲しい。
「それから、わたくしはわたくしの知らないヒュリニオンの話が聞きたいのです。よろしいですか?」
これは、他国同士の貴族の間で使われる「お前の国の情報を教えろ」という意味の言葉なのだが、友達がいないと言っていたランティルデは多分知らないだろう。
「はい。私もラズタルキアの話が聞きたいです」
ウィアレアの問いかけに「お前もお前の国の情報を教えろ」と無自覚に言ってランティルデは微笑んだ。
___二人の話が終わり、私はサリアとウィアレアに屋敷に残るよう言われた。まだ昼休みの終わるまでは一時間ある。さて、この二人にどんな質問をされるのか。
「ねぇ、フィレデリア? フュレイヴは…ううん、聞いていたのよ。でも、フュレイヴがまさか、そんな」
目を伏せて信じられないというようにサリアが声を震わせた。ウィアレアも同様にして目に涙を溜めている。
「…フィレデリア、継いじゃったんでしょ? フィレデリアも、死んじゃうの?」
「そうよ。でも、そうしないと世界が滅んじゃうから。ルテイフィラスも次はラズタルキアを属国にするかも知れない」
「なんでそんなに冷静なの!?」
サリアがドンと音を立てて机に拳を叩きつける。カップのお茶が揺れ、サリアの顔を映す。
「フィレデリアも、死んでしまうのでしょう? 貴女の弟子も、その弟子もみんな、死ぬんでしょう…? どうして。怖くないの?」
まだ平静を保てているギリギリのウィアレアにそう問われ、私は目を瞑って答えた。
「私が『刻守り』を継いで死んだら、師匠と同じように死ねる。死んだ後も、会える。だからだよ」
サリアが赤い目でこちらをじっと見つめ、その瞬間制服のポケットから一つのメモを取り出した。
「ごめん、フィレデリア。もう一回言って? メモして本にする」
「やめて!?」
こんな状況で二年前と変わらないサリアが羨ましい。何でもかんでも恋愛に変換して、本にして図書館に寄贈していたあの頃が懐かしい。
「というか、フュレイヴとはどうなったの? 私、それだけが気になって…」
「どうなった…って、ただの師弟だしどうもこうもないけど」
「フィレデリア、それじゃフュレイヴが可哀想じゃない!!」
「はぁ、何がよ」
サリアが一度深呼吸して私を真っ直ぐ見据えた。
「フュレイヴはあんたのことが好きだったのよ!? 恋情を抱いていたのよ!?」
「はぁっ!?」
「あら…グリニアさん、貴女も一人なの?」
「えぇ、ランティルデ様。あまり人と親しくすることが得意ではなくて」
「先程の班の方々は?」
「それは、貴女にも当てはまると思います」
それもそうね、と項垂れた後、ランティルデは私の隣の席に座って弁当を広げた。
「私、多国籍の学校ではヒュリニオンの敵国出身もいますし、一応公爵家の身分ですから毒殺も有り得ないわけでは無いのです」
「だから、学食には行かないのですね」
「えぇ。貴女はどうしてなの?」
「秘密です。でも、いつか言わなければならないかも知れませんね」
私も大体、ランティルデと同じような理由だ。ルテイフィラス出身もいる中、呑気に学食に行ってルテイフィラスの料理人に毒を食わされてはたまらない。ジュリエナにもそう伝えてある。
「そうですか……。なら、お友達になれば教えてくださいますか?」
「いえ、お友達でもお話し出来ません。でも、お友達になること自体は大丈夫ですよ」
「本当ですか? なら、私初めてのお友達ですね」
「あら、ランティルデ様は令嬢方のお友達がいるのではないですか?」
どうやらランティルデは完全無欠な訳では無いらしい。安心した。にしても、自分から友達にと話しかけてくる子はいないのだろうか。
「私、色々な理由で少し周りから隔離されていて…十五歳になってここで人と関わるのを許されたのです」
ふむ、隔離。私はまだ情報不足なようだし、ここで集めなければならない情報はかなり多そうだ。入学式にレッティルダらしき人物を見たが、双子の割にあまり似ていないのも関係あるかも知れない。ただ、ここで「双子ではない」と断定するのは良くないか。
「では、本当に私が一番なのですね。嬉しいです」
「フフ。…じゃあ、お弁当を頂きましょう」
カトラリーを手に取り、ランティルデが弁当を丁寧な仕草で食べ始めた。この辺りでは見かけない食材が多いので、きっとお金をかけているのだろう。私のは野菜とハムのサンドイッチだけだ。
「あら、グリニアさん、えぇと…質素なのですね。ダイエット中ですか?」
「まぁ、そんなところですね。弁当一つにあまりお金をかけられませんし」
少しランティルデに皮肉をこめて言ってみると、「そうですか…少し要りますか?」と哀れみの視線を向けられた。多分、皮肉が効かないのだろう。
___そうして他愛の無い話をし、弁当を食べ終わった頃。
「ランティルデ様、いらっしゃいますか? わたくし、六回生のウィアレアと言うのですが…」
「どうかしまして? わたくし、サロンのお約束でもしましたでしょうか」
六回生は確か私の知り合いが多い学年だ。ウィアレアも同じ本を好きな友達だったし、危ないかも知れない。
「いえ、ランティルデ様。お誘いに来たのですよ。今三席余っていて…もし良ければ、そちらのお友達も」
そう言ってウィアレアは、ランティルデに気づかれない程度に私に向けてウィンクした。あの時と、同じ本を持って。
___ウィアレアの屋敷のティールームに招かれ、席に着く。因みに、学院は寮だけでなく金を積めば屋敷なども変えるのだ。
「お誘い頂けて嬉しいです、ウィアレア様。噂は聞いていたのですが、本当に容姿が整っていらっしゃいますね」
私はウィアレアの隣に半強制的に座らされ、横にまた知り合いのサリアも座らされていた。サリアも私の正体に気が付いているようで、ソワソワしているのがハッキリ分かる。
「いえいえ、お母様やお父様を褒めてくださいませ。わたくしは何もしていませんから」
「にしても、ウィアレア様とグリニアさんに交流があったとは驚きです。お二人ともラズタルキア出身とはいえ…」
「身分が違いますものね。私は庶民で援助金入学をしていますが、ウィアレア様は侯爵家の令嬢でいらっしゃるもの」
「グリニアはわたくしの自慢の友ですよ。なんてったってラズタルキアの首都一番の魔術師ですから」
確かに私は魔術師だが、一番では無い。上には上が居過ぎるものだ。というか、褒めるなら味覚のない状態でなんとか食事を食べていることを褒めて欲しい。
「それから、わたくしはわたくしの知らないヒュリニオンの話が聞きたいのです。よろしいですか?」
これは、他国同士の貴族の間で使われる「お前の国の情報を教えろ」という意味の言葉なのだが、友達がいないと言っていたランティルデは多分知らないだろう。
「はい。私もラズタルキアの話が聞きたいです」
ウィアレアの問いかけに「お前もお前の国の情報を教えろ」と無自覚に言ってランティルデは微笑んだ。
___二人の話が終わり、私はサリアとウィアレアに屋敷に残るよう言われた。まだ昼休みの終わるまでは一時間ある。さて、この二人にどんな質問をされるのか。
「ねぇ、フィレデリア? フュレイヴは…ううん、聞いていたのよ。でも、フュレイヴがまさか、そんな」
目を伏せて信じられないというようにサリアが声を震わせた。ウィアレアも同様にして目に涙を溜めている。
「…フィレデリア、継いじゃったんでしょ? フィレデリアも、死んじゃうの?」
「そうよ。でも、そうしないと世界が滅んじゃうから。ルテイフィラスも次はラズタルキアを属国にするかも知れない」
「なんでそんなに冷静なの!?」
サリアがドンと音を立てて机に拳を叩きつける。カップのお茶が揺れ、サリアの顔を映す。
「フィレデリアも、死んでしまうのでしょう? 貴女の弟子も、その弟子もみんな、死ぬんでしょう…? どうして。怖くないの?」
まだ平静を保てているギリギリのウィアレアにそう問われ、私は目を瞑って答えた。
「私が『刻守り』を継いで死んだら、師匠と同じように死ねる。死んだ後も、会える。だからだよ」
サリアが赤い目でこちらをじっと見つめ、その瞬間制服のポケットから一つのメモを取り出した。
「ごめん、フィレデリア。もう一回言って? メモして本にする」
「やめて!?」
こんな状況で二年前と変わらないサリアが羨ましい。何でもかんでも恋愛に変換して、本にして図書館に寄贈していたあの頃が懐かしい。
「というか、フュレイヴとはどうなったの? 私、それだけが気になって…」
「どうなった…って、ただの師弟だしどうもこうもないけど」
「フィレデリア、それじゃフュレイヴが可哀想じゃない!!」
「はぁ、何がよ」
サリアが一度深呼吸して私を真っ直ぐ見据えた。
「フュレイヴはあんたのことが好きだったのよ!? 恋情を抱いていたのよ!?」
「はぁっ!?」