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一部流血表現やその他不快になる描写があるかも知れません。それを承知の上読んでいただけると幸いです。
「こんにちは。えー、初顔だな。ヒュリニオン王国宮廷薬師のアイドリオ・ジェイスティだ」
初回から薬学、しかも実習。態度も結果も見られるスパルタ仕様だ。アイドリオは赤髪を後ろで一つにまとめた青年だ。きっと二十代前半程度で、宮廷に配属されたのも最近だろう。一年前には此処にはいなかった。
「皆は五回生と言うことで。少し難しめのレシピを実習させるようにと。今日はまず中級回復薬から作る。レシピを後ろに回してくれ」
学院の教室は大きな長机がいくつかあり鍋も置けるサイズなので、実習は主に教室で行う。
「中級回復薬は主に体力を回復させることに重点を置いたものだ。工程が少し複雑で、材料も珍しいものが多いから、失敗出来無い」
無自覚の圧をかけられて、何人かの生徒が冷や汗をかいている。もちろん私もだ。ここで成績に響かせられると困るのは私だし、ジュリエナもだ。
「では、班ごとに机を移動させ、道具や材料は前に取りに来い」
机は横二人が移動させてくれたので、私は材料を取りに行った。のだが、材料がかなりグロテスクだ。因みにレシピは…
[水平線]
中級回復薬のレシピ
{材料}
・セイホウガエルの卵 4つ
・ヒュロジカの目玉 6つ
・キイチゴの茎 5cm
・ジヴヘビの鱗 3枚
・ラウサギの血管 10cmのものを三本
①卵と目玉を鍋に入れ、火にかける
② ①が溶け切る前に茎を切り刻んでおく
③ ①が溶け切ったら②を入れる
④鱗をすり鉢で擦り潰す
⑤血管はそのままで鱗と血管を鍋に入れ、このレシピの裏面の魔術陣と同じ紫色になるまで煮詰める
⑥このレシピを鍋に入れ、見えなくなったら完成
[水平線]
かなり日常的に飲んでいた薬の材料を知って今更ながら吐き気がしてきた。もう飲めない。同じ班の四人も流石に面食らった顔でレシピを見つめている。レシピの用紙裏面には複雑な魔術陣が刻まれていて、毒々しい紫色をしている。値段が高いはずだ。ジヴヘビの鱗は南西の一部の地域でしか取れない貴重な素材だ。これだけ取ってしまっても良いのだろうか。
「えぇと…グリニアだったっけ? これ本当に作るの?」
「本当に作るみたい。結構学院の実習でも出されてるでしょう? この薬…気の毒に」
「あんたもこれから飲み続けるのよ!?」
私と隣の席のイェルナが話しているうちに、淡々と準備をするヴィード。何となく、パン屋時代のヴァレスに似ている。躊躇いもなく目玉に触れ、真剣に見つめる[漢字]様[/漢字][ふりがな]さま[/ふりがな]にはパンの材料を見るヴァレスと同じものを感じた。
「さあ、お嬢さん方。そんなことを言っても成績の足しにはならないからね。君は鱗を擦り潰していてくれ」
ヴィード同様薬の配合準備をするハイトルに促され、私は鱗を擦り潰し始めた。擦り潰されるかけらはどれもキラキラと虹色に輝いて、幻想的だ。イェルナは嫌々ながらも卵と目玉を火にかけて溶かしている。
「えーと…あぁ、君。グリニア。擦り潰し過ぎではないかな? 細かすぎても時間にズレが出るよ」
そんな風のアドバイスを皆にしていくハイトルを横目にアイドリオが感心したような声を上げて通り過ぎて行く。「薬師になれば良い先生になれるかも…」なんて呟きながら他生徒の配合風景を眺め、教卓に戻って行った。
「ヴィード、その茎を今鍋に入れて。イェルナはかき混ぜ続けながらだよ」
ヴィードが茎を鍋に入れると、ジュッと音を立てて鍋の中の液体が黄色に染まっていく。続いてハイトルが私の持っていた鉢を取り、鱗と血管を鍋に入れた。イェルナは悲鳴でも上げそうな悲痛な顔で混ぜ続ける、最後に私がレシピの紙を入れ、何とか成功させることが出来た。
「先生、この瓶に入れるのですか?」
ハイトルがガラス瓶を指差し、首を傾げる。
「あぁ。ナイフで蓋を切ってから中身を注いで、蓋を被せたら勝手に接着するようになっている」
ハイトルは教卓のガラス瓶を取り、此方へやって来る。イェルナが手際よくナイフ…ではなくて腰に刺した剣を出した。
「こら、イェルナ・ヴィウシル。蓋はナイフで切るように。危ない」
イェルナはアイドリオに冷静に指摘され、味方になってくれと言わんばかりに此方を覗き込んできた。加勢するもんか、お前が悪いと言いかけた口を閉じ、代わりにナイフを出してハイトルの差し出した瓶の蓋を切った。瓶の蓋を切った。
「おぉ、こう見るとかなり上手くできたように見えるな」
ハイトルが照明に瓶をかざした。鱗の成分が入っているからか虹色にキラキラと光っている。蓋を被せると接着面が光り、あっという間に戻ってしまった。そして、ハイトルはそのまま先生へ提出しに行った。
「ふむ…では、失礼」
そうしてアイドリオは瓶の蓋をまたナイフで切り、一滴自分の指に乗せて吟味する。ハイトルのように照明に透かしたり、匂いを確認した後、少し舌を出して指先を舐めた。後ろの女子達の黄色い歓声が[漢字]煩[/漢字][ふりがな]うるさ[/ふりがな]い。
「味も変わらない。五班、合格だ。三番手なのが惜しいところだな。因みに、一番手はランティルデ嬢のいる七班だ」
やはりランティルデは優秀らしい。コトリと置かれた私達の班の二つ右にある瓶に入った薬は、私達の作ったものよりずっと澄んでいて、虹色の煌めきは比べ物にならなかった。
「では皆、道具を置くように。続きは二限目だが昼休みを挟むので、よく手を洗ってから食事をするように」
そこまで言った瞬間、チャイムが鳴って昼休みの開始を知らせた。
初回から薬学、しかも実習。態度も結果も見られるスパルタ仕様だ。アイドリオは赤髪を後ろで一つにまとめた青年だ。きっと二十代前半程度で、宮廷に配属されたのも最近だろう。一年前には此処にはいなかった。
「皆は五回生と言うことで。少し難しめのレシピを実習させるようにと。今日はまず中級回復薬から作る。レシピを後ろに回してくれ」
学院の教室は大きな長机がいくつかあり鍋も置けるサイズなので、実習は主に教室で行う。
「中級回復薬は主に体力を回復させることに重点を置いたものだ。工程が少し複雑で、材料も珍しいものが多いから、失敗出来無い」
無自覚の圧をかけられて、何人かの生徒が冷や汗をかいている。もちろん私もだ。ここで成績に響かせられると困るのは私だし、ジュリエナもだ。
「では、班ごとに机を移動させ、道具や材料は前に取りに来い」
机は横二人が移動させてくれたので、私は材料を取りに行った。のだが、材料がかなりグロテスクだ。因みにレシピは…
[水平線]
中級回復薬のレシピ
{材料}
・セイホウガエルの卵 4つ
・ヒュロジカの目玉 6つ
・キイチゴの茎 5cm
・ジヴヘビの鱗 3枚
・ラウサギの血管 10cmのものを三本
①卵と目玉を鍋に入れ、火にかける
② ①が溶け切る前に茎を切り刻んでおく
③ ①が溶け切ったら②を入れる
④鱗をすり鉢で擦り潰す
⑤血管はそのままで鱗と血管を鍋に入れ、このレシピの裏面の魔術陣と同じ紫色になるまで煮詰める
⑥このレシピを鍋に入れ、見えなくなったら完成
[水平線]
かなり日常的に飲んでいた薬の材料を知って今更ながら吐き気がしてきた。もう飲めない。同じ班の四人も流石に面食らった顔でレシピを見つめている。レシピの用紙裏面には複雑な魔術陣が刻まれていて、毒々しい紫色をしている。値段が高いはずだ。ジヴヘビの鱗は南西の一部の地域でしか取れない貴重な素材だ。これだけ取ってしまっても良いのだろうか。
「えぇと…グリニアだったっけ? これ本当に作るの?」
「本当に作るみたい。結構学院の実習でも出されてるでしょう? この薬…気の毒に」
「あんたもこれから飲み続けるのよ!?」
私と隣の席のイェルナが話しているうちに、淡々と準備をするヴィード。何となく、パン屋時代のヴァレスに似ている。躊躇いもなく目玉に触れ、真剣に見つめる[漢字]様[/漢字][ふりがな]さま[/ふりがな]にはパンの材料を見るヴァレスと同じものを感じた。
「さあ、お嬢さん方。そんなことを言っても成績の足しにはならないからね。君は鱗を擦り潰していてくれ」
ヴィード同様薬の配合準備をするハイトルに促され、私は鱗を擦り潰し始めた。擦り潰されるかけらはどれもキラキラと虹色に輝いて、幻想的だ。イェルナは嫌々ながらも卵と目玉を火にかけて溶かしている。
「えーと…あぁ、君。グリニア。擦り潰し過ぎではないかな? 細かすぎても時間にズレが出るよ」
そんな風のアドバイスを皆にしていくハイトルを横目にアイドリオが感心したような声を上げて通り過ぎて行く。「薬師になれば良い先生になれるかも…」なんて呟きながら他生徒の配合風景を眺め、教卓に戻って行った。
「ヴィード、その茎を今鍋に入れて。イェルナはかき混ぜ続けながらだよ」
ヴィードが茎を鍋に入れると、ジュッと音を立てて鍋の中の液体が黄色に染まっていく。続いてハイトルが私の持っていた鉢を取り、鱗と血管を鍋に入れた。イェルナは悲鳴でも上げそうな悲痛な顔で混ぜ続ける、最後に私がレシピの紙を入れ、何とか成功させることが出来た。
「先生、この瓶に入れるのですか?」
ハイトルがガラス瓶を指差し、首を傾げる。
「あぁ。ナイフで蓋を切ってから中身を注いで、蓋を被せたら勝手に接着するようになっている」
ハイトルは教卓のガラス瓶を取り、此方へやって来る。イェルナが手際よくナイフ…ではなくて腰に刺した剣を出した。
「こら、イェルナ・ヴィウシル。蓋はナイフで切るように。危ない」
イェルナはアイドリオに冷静に指摘され、味方になってくれと言わんばかりに此方を覗き込んできた。加勢するもんか、お前が悪いと言いかけた口を閉じ、代わりにナイフを出してハイトルの差し出した瓶の蓋を切った。瓶の蓋を切った。
「おぉ、こう見るとかなり上手くできたように見えるな」
ハイトルが照明に瓶をかざした。鱗の成分が入っているからか虹色にキラキラと光っている。蓋を被せると接着面が光り、あっという間に戻ってしまった。そして、ハイトルはそのまま先生へ提出しに行った。
「ふむ…では、失礼」
そうしてアイドリオは瓶の蓋をまたナイフで切り、一滴自分の指に乗せて吟味する。ハイトルのように照明に透かしたり、匂いを確認した後、少し舌を出して指先を舐めた。後ろの女子達の黄色い歓声が[漢字]煩[/漢字][ふりがな]うるさ[/ふりがな]い。
「味も変わらない。五班、合格だ。三番手なのが惜しいところだな。因みに、一番手はランティルデ嬢のいる七班だ」
やはりランティルデは優秀らしい。コトリと置かれた私達の班の二つ右にある瓶に入った薬は、私達の作ったものよりずっと澄んでいて、虹色の煌めきは比べ物にならなかった。
「では皆、道具を置くように。続きは二限目だが昼休みを挟むので、よく手を洗ってから食事をするように」
そこまで言った瞬間、チャイムが鳴って昼休みの開始を知らせた。