閲覧前に必ずご確認ください
一部流血表現やその他不快になる描写があるかも知れません。それを承知の上読んでいただけると幸いです。
「ねぇ、お姉ちゃん…いつになったら着くの?」
「さぁ…後四日くらいかしら。そこまで時間はかからないね」
「かかってるよ…!」
人の気配のない森の中を歩き続けて足は棒の様だし、毎日毎日寝て起きても身体のだるさが取れない。水浴びが出来ないから匂いも気になって仕様がない。そんな中フィレデリアだけが純白の髪を靡かせて颯爽と歩いている。初めは体力が少なそうに見えたのに…。そう思った時、フィレデリアのいた場所から金属のぶつかり合うキンという音がした。
「君は…資料に載っていなかったな。誰だい?」
「ボクはヴィルディ。フィレデリアの[漢字]飼い妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー[/ふりがな]さ!」
ヴィルディって、誰? と思っただろう。そう、それは旅の始まる二週間前、お姉ちゃんと旅に出た直後の話__
「ルドゥイ、思ったよりも早かったね。まだ半年しか経ってないよ? というか、その女の子は誰?」
光る羽のついた拳二つ分くらいの小さな人…そう、まるで絵本の世界から飛び出してきた様な[漢字]妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー[/ふりがな]が、フィレデリアに話しかけた。でもフィレデリアも私も「ルドゥイ」という名前ではない。フィレデリアはまるでずっと会えなかった恋人に見せる様な笑顔で言った。
「ヴィルディ、この子はジュリエナ。私の旅について来てくれる…『[漢字]刻守り[/漢字][ふりがな]ときもり[/ふりがな]』を継ぐ少女だよ」
フィレデリアはルドゥイと呼ばれたことを否定せず、代わりに私を紹介した。どうやらこの[漢字]妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー[/ふりがな]の名前はヴィルディという様だ。というか私の頭には今疑問符が大量に浮かんでいるのだが、フィレデリアはそんな私に見向きもせずヴィルディと楽しそうに話している。
「ねぇ、お姉ちゃん。刻守りって何? それに、お姉ちゃんはルドゥイじゃなくてフィレデリアでしょ?」
「あぁ、まだ話していなかったわね。この子…ヴィルディは、代々刻守りと旅をする光の[漢字]妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー[/ふりがな]でね。あ、刻守りについても話していなかったかしら。ということは、『あれ』の出番ね」
フィレデリアが空中に向かって本を取る動作をすると、たちまち光る本が現れた。金糸で複雑な模様が描かれているが、一体何の本だろう。
「ここの魔法陣に触れてみて。これよ、この模様」
金糸の模様はどうやら魔法陣というものだそうだ。手で軽く触れると、身体の中がぐわっとかき混ぜられる様な気色の悪い感覚がして、私の視界が暗転した。
「ジュリエナ。起きた?」
目を覚まして身体を起こすと、目の前にいたのはヴィルディだった。ここはパン屋のすぐ近くの宿屋らしい。フィレデリアは横から私を覗いていて、心配そうな顔をしていた。そして起きた瞬間私の頭にあったのは、誰かの…『ルドゥイ』という名の人物の記憶と、刻守りの歴史だった。簡単に言うと、ルドゥイとは一代目刻守り。刻守りとは、昔は魔力の源水で保たれていた結界のことで、言い伝えである天の厄災や魔族から人を守るためのものだ。それを三代目のフュレイヴがルテイフィラスの根幹を使って世界を照らす結界に変容させたのだ。では、なぜ刻守りと呼ばれているのか。それは、天の厄災や魔族に滅ぼされないための『時間を稼ぐ』ための役目だから。そしてヴィルディは刻守りの『呪い』で刻守りを感知していて、一代目から共に旅をしていた彼にとっては『ルドゥイ=刻守り』、『刻守り=ルドゥイ』だからだそうだ。しかし、この量の知識とフュレイヴまでの記憶が全て一度に入ってくると頭が痛くなるなんて程度の話ではなかった。痛みを通り越して、身体の動かし方も考え方も音の聞き方もわからない様に、私はもう一度グダっとベッドに倒れ込んだ。
「ルドゥイもこんな感じだったよね。フュレイヴに記憶を移された瞬間、同じ様に倒れて。フュレイヴもだし、ライニアもだよ」
ヴィルディにとって、刻守りの役目を継承し終わって死んだ者は『ルドゥイ』ではないらしい。そして、そのフュレイヴやライニアと呼ばれた人も、皆同じ様に倒れたそうだ。
「ジュリエナ、頭は痛いと思うのだけれど…『刻守り』については分かったわね。ルテイフィラスに狙われる理由も。…それで、貴女は五感を失ってまで私について来る? やっぱり、貴女のような子供には任せるのは心苦しくて…」
「お姉ちゃん、今更私は変えないよ! お姉ちゃんも迷わないで」
フィレデリアは、私を連れて行かなければいけないくせにまだ悩んでいるようだ。ヴィルディも私に加勢して叫ぶ。
「そうだそうだー! フュレイヴとまで行かなくても、ルドゥイも大概だーっ!」
__そんなこともあって、今は二人と一匹(?)と旅をしているのだが…
「ふぅん、ヴィルディね…[漢字]妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー[/ふりがな]なんてとっくの昔に滅ぼしたと思っていたのだけれど。そうね、光の[漢字]妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー[/ふりがな]は寿命が無いから殺しにいかなければ死ぬことはなかなかないのだったかしら」
「まぁ、そんなとこだね。まぁ、ボクは何度も転生を繰り返してるんだけど…取り敢えず、その剣を戻してくれないかな?」
少し前に私を人質にした女が、ヴィルディの結界に向かって剣を振り翳している。私の身長くらいある様な紫色の大剣を片手で支えて、だ。
「ボクだってこれを保つための魔力の限界ってものがあるから…さ!」
そう言ってヴィルディは結界を自ら壊すことで女の大剣を弾き飛ばした。
「ッ…! フフ、やるじゃない[漢字]妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー[/ふりがな]。でもね、私は何度でも襲いに来るわよ。例え貴女たちが名前を変え、結界を守ることを諦めたとしても」
「さぁ…後四日くらいかしら。そこまで時間はかからないね」
「かかってるよ…!」
人の気配のない森の中を歩き続けて足は棒の様だし、毎日毎日寝て起きても身体のだるさが取れない。水浴びが出来ないから匂いも気になって仕様がない。そんな中フィレデリアだけが純白の髪を靡かせて颯爽と歩いている。初めは体力が少なそうに見えたのに…。そう思った時、フィレデリアのいた場所から金属のぶつかり合うキンという音がした。
「君は…資料に載っていなかったな。誰だい?」
「ボクはヴィルディ。フィレデリアの[漢字]飼い妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー[/ふりがな]さ!」
ヴィルディって、誰? と思っただろう。そう、それは旅の始まる二週間前、お姉ちゃんと旅に出た直後の話__
「ルドゥイ、思ったよりも早かったね。まだ半年しか経ってないよ? というか、その女の子は誰?」
光る羽のついた拳二つ分くらいの小さな人…そう、まるで絵本の世界から飛び出してきた様な[漢字]妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー[/ふりがな]が、フィレデリアに話しかけた。でもフィレデリアも私も「ルドゥイ」という名前ではない。フィレデリアはまるでずっと会えなかった恋人に見せる様な笑顔で言った。
「ヴィルディ、この子はジュリエナ。私の旅について来てくれる…『[漢字]刻守り[/漢字][ふりがな]ときもり[/ふりがな]』を継ぐ少女だよ」
フィレデリアはルドゥイと呼ばれたことを否定せず、代わりに私を紹介した。どうやらこの[漢字]妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー[/ふりがな]の名前はヴィルディという様だ。というか私の頭には今疑問符が大量に浮かんでいるのだが、フィレデリアはそんな私に見向きもせずヴィルディと楽しそうに話している。
「ねぇ、お姉ちゃん。刻守りって何? それに、お姉ちゃんはルドゥイじゃなくてフィレデリアでしょ?」
「あぁ、まだ話していなかったわね。この子…ヴィルディは、代々刻守りと旅をする光の[漢字]妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー[/ふりがな]でね。あ、刻守りについても話していなかったかしら。ということは、『あれ』の出番ね」
フィレデリアが空中に向かって本を取る動作をすると、たちまち光る本が現れた。金糸で複雑な模様が描かれているが、一体何の本だろう。
「ここの魔法陣に触れてみて。これよ、この模様」
金糸の模様はどうやら魔法陣というものだそうだ。手で軽く触れると、身体の中がぐわっとかき混ぜられる様な気色の悪い感覚がして、私の視界が暗転した。
「ジュリエナ。起きた?」
目を覚まして身体を起こすと、目の前にいたのはヴィルディだった。ここはパン屋のすぐ近くの宿屋らしい。フィレデリアは横から私を覗いていて、心配そうな顔をしていた。そして起きた瞬間私の頭にあったのは、誰かの…『ルドゥイ』という名の人物の記憶と、刻守りの歴史だった。簡単に言うと、ルドゥイとは一代目刻守り。刻守りとは、昔は魔力の源水で保たれていた結界のことで、言い伝えである天の厄災や魔族から人を守るためのものだ。それを三代目のフュレイヴがルテイフィラスの根幹を使って世界を照らす結界に変容させたのだ。では、なぜ刻守りと呼ばれているのか。それは、天の厄災や魔族に滅ぼされないための『時間を稼ぐ』ための役目だから。そしてヴィルディは刻守りの『呪い』で刻守りを感知していて、一代目から共に旅をしていた彼にとっては『ルドゥイ=刻守り』、『刻守り=ルドゥイ』だからだそうだ。しかし、この量の知識とフュレイヴまでの記憶が全て一度に入ってくると頭が痛くなるなんて程度の話ではなかった。痛みを通り越して、身体の動かし方も考え方も音の聞き方もわからない様に、私はもう一度グダっとベッドに倒れ込んだ。
「ルドゥイもこんな感じだったよね。フュレイヴに記憶を移された瞬間、同じ様に倒れて。フュレイヴもだし、ライニアもだよ」
ヴィルディにとって、刻守りの役目を継承し終わって死んだ者は『ルドゥイ』ではないらしい。そして、そのフュレイヴやライニアと呼ばれた人も、皆同じ様に倒れたそうだ。
「ジュリエナ、頭は痛いと思うのだけれど…『刻守り』については分かったわね。ルテイフィラスに狙われる理由も。…それで、貴女は五感を失ってまで私について来る? やっぱり、貴女のような子供には任せるのは心苦しくて…」
「お姉ちゃん、今更私は変えないよ! お姉ちゃんも迷わないで」
フィレデリアは、私を連れて行かなければいけないくせにまだ悩んでいるようだ。ヴィルディも私に加勢して叫ぶ。
「そうだそうだー! フュレイヴとまで行かなくても、ルドゥイも大概だーっ!」
__そんなこともあって、今は二人と一匹(?)と旅をしているのだが…
「ふぅん、ヴィルディね…[漢字]妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー[/ふりがな]なんてとっくの昔に滅ぼしたと思っていたのだけれど。そうね、光の[漢字]妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー[/ふりがな]は寿命が無いから殺しにいかなければ死ぬことはなかなかないのだったかしら」
「まぁ、そんなとこだね。まぁ、ボクは何度も転生を繰り返してるんだけど…取り敢えず、その剣を戻してくれないかな?」
少し前に私を人質にした女が、ヴィルディの結界に向かって剣を振り翳している。私の身長くらいある様な紫色の大剣を片手で支えて、だ。
「ボクだってこれを保つための魔力の限界ってものがあるから…さ!」
そう言ってヴィルディは結界を自ら壊すことで女の大剣を弾き飛ばした。
「ッ…! フフ、やるじゃない[漢字]妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー[/ふりがな]。でもね、私は何度でも襲いに来るわよ。例え貴女たちが名前を変え、結界を守ることを諦めたとしても」