「[小文字]れい………。それ……[/小文字]ソレイユ!!!!」
「起きて、起きて!!」
懐かしい声が、聞こえる。
この声を何度望んだことか。
「おにい、、ちゃん?おねえ、、ちゃん?」
「ソレイユーーーー!!!」
「よく頑張ったねぇ!!」
「お姉ちゃんの誇りだよ。」
「よくやったな!」
ぎゅむーっと四人に抱きしめられると、やはり不思議な感覚。
あったかくて、柔らかい。
「……ごめん、仇、討てなかった。」
シャインお兄ちゃんの腕の中に顔を埋め、震える声でそう伝える。
あの男にとどめを刺せなかった。
止めたのはライダーとエンペラー。
理由はわかりきってる。あっちのほうが正しい。
けれど、それでも私は、諦められなかった。
「おにっ……ちゃんたちのっ……仇を、とりたかったぁぁぁ!!!」
まるで小さい子供のように泣いて、泣いて、涙が枯れるほど泣いても顔を伝う水は止まることはなくて。
ここ数年、泣くことなんてなかった。
いつも無表情で、笑うことなんて二人といるときぐらいだった。
だから、氷のようだとみんなから言われた。
それでも良かったんだ。仇を討つためなら、どんなことを言われようと耐えられた。
けれど、とれなかった。
もうチャンスはないだろう。あいつは私を警戒する。
もう、入り込むことはできない。
真っ向切って対決できる相手でもない。
仇を打つ機会は、アレしかなかった。
「おにいちゃっ……。おねえちゃっ……。」
「もういいよ。」
リュミお姉ちゃんの声が聞こえる。
それと一緒に、シャインお兄ちゃんも、ライトお姉ちゃんも、スパークお兄ちゃんも、私の頭をなでてくれる。
「ソレイユは、いい子だね。
ボクらのことを、いつも一番に考えてくれてる。」
「でもね、自分の好きなこともやっていいのよ?」
「今、ソレイユがやりたいことは、アタシたちの仇をとることじゃないでしょ?」
「……オレらは、お前に幸せに生きてほしい。
そのためなら、なんだってしてやるさ。」
溢れた涙が、まだ止まらない。
もう何もかもが、嫌になる。
ここにいたい。ずっとこうしていたい。
お兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒に、ずっとここに___。
「だめだよ。」
シャインお兄ちゃんが、私を引き剥がすようにして、そう言った。
その声はとても優しくて、死んでしまったあの時と全く変わっていなかった。
「ソレイユ。お前は生きるんだ。
大切な人と一緒に、長生きするんだ。」
「ワタシたちは早死しちゃったけれど、あなたはワタシたちの分まで生きて。」
「もう、アタシたちにとらわれるな。
過去のことは変えられないでしょ。前だけ向いて。未来だけ見て。」
「お前自身の本当の幸せを、見つけてくれ。」
大好きなお兄ちゃんたちに言われても、私は嫌だと言い張る。
離れたくなかった。
一回失ったものを、手放したくなかった。
「もう嫌だよ……一緒にいてよ!!お兄ちゃん、お姉ちゃん……。」
まるで駄々っ子のように、大声で叫び散らかす。
けれど、四人の言う事は、変わらなかった。
「さぁ、行くんだ。」
「ここにいすぎたら、死んじゃうからね?」
「急いで。立って。ほら。」
急かすようにお兄ちゃんたちは私を引っ張る。
私も手加減せず全力で逆方向に体重をかける。
帰りたくない。もっとここにいたい。
「……ライダーくんも、エンペラーくんも悲しむだろう?」
「アイツラは、私がいないと生きていけないほど弱くねぇっ!!!!!」
全力で拒否するように声を張り上げる。
けれど、頭の奥には二人の姿がちらついてしまう。
「二人は……強いから。」
「そう?あなたがいないとご飯も喉を通らないみたいだけど。」
ライトお姉ちゃんが、私の方を向く。
その奥には、霧に包まれよく見えないが、何かを取り囲む人々の姿。
―ソレイユ……目ぇ覚ませ……!!―
―なんでもする。だから___起きてくれないか。―
―ら、ライダー、まずご飯食べようよ。―
―兄さんも……。身が持たないよ……!!―
―いらねぇ。― ―いらない。―
かすかだが声が聞こえてくる。
ライダーの声、エンペラーの声。彼らの仲間の声。
「……!!!」
「ほら。【あなたがいなくても生きていける】かもしれないけど、
[太字]あなたのいない世界[/太字]が彼らにとって幸せかどうかは話が別よ?」
「それは、お前も同じだ、ソレイユ。」
その言葉に、私は声がうまく出せなくなってしまっていた。
私がいない世界。そんなので何も変わるわけはないと思っていた。
私は、誰にだって愛されないことはわかりきっていた。
けれど、違った。
私を大切に愛してくれる人がいた。
一緒に笑ってくれる人がいた。
それに、気付けなかった。
「彼らのいない世界で生きることが本当にお前の幸せか?」
シャインお兄ちゃんがこちらを見つめ、そういう。
手を握るスパークお兄ちゃんとライトお姉ちゃん、
横に付き添ってくれるリュミお姉ちゃんも、私の言葉を待ってくれている。
「私は、、、。」
お兄ちゃんたちと一緒にいたい。
ライダーとエンペラーにもう悲しい思いをさせたくない。
そんな思いがこんがらがって、ほどけてを繰り返す。
最終的にそれは、一生かけてもほどけないであろう知恵の輪となって硬直した。
「[小文字]えら、べない………。[/小文字]」
こんなに私は優柔不断だったのか。
初めてここまで悩んだ。
私はどうしたらいいんだろうか。
「ここに、いたいよ。
あっちに、もどりたいよ。
どっちも選べるわけ無いじゃんか………。」
「それでいいんだぜ。」
スパークお兄ちゃんが私の独り言にそう返す。
なにがと返せないまま、私とお兄ちゃんの間の時間は流れていく。
「ってことは、未練残ってんだろ?
だったらさっさと帰って全力で生きてこい。
[漢字]あの世[/漢字][ふりがな]こっち[/ふりがな]にはいつでも来れるんだからよ。」
「来るならボクらが迎えに行くさ。」
お兄ちゃんたちはおもむろに私の後ろに回ると、私の背中を押した。
「行って来い。」
「頑張って生きて。」
「生きなきゃ、できないことだってあるよ。」
「諦めんな。最後まで足掻け。」
その言葉を背に受けて、私は霧の中へ飛び込んだ。
[水平線]
「[小文字]れい……それ……[/小文字]ソレイユ!!!!」
「ソレイユ!!」
二人の声が耳をつく。
重いまぶたをこじ開けると、そこには涙目でこちらを見つめる二人の姿。
体全体が重い。口のあたりに違和感。これは……酸素マスクか?
いやこれ、邪魔でしょうがないな。
「バカヤロっ……一週間も寝るなら先に知らせやがれ!!!」
「運ばれたときっ……心肺停止だったんだぞ!?無茶するなとあれほど言ったろう!?」
「二人共、ここ病院だy「「そんなこと言ってる場合か!!!!」」
止めようとしたチームメイトらしき人に、二人が怒鳴る。
普段おとなしいエンペラーでさえもそう叫んでしまうほど、心配してくれたのだろう。
心肺停止だったのか、私。
通りでお兄ちゃんたちが夢に現れるわ。
「ほんとっ……心配したんだからなっ……。」
「[小文字]ご、めん、ね?[/小文字]」
かすれる声で、上手く出せない声で、そう言い、彼らの頬を伝う涙を拭おうと手を伸ばす。
けれどその手は、二人によって抑えられた。
「絶対安静だとよ。あんまり動くんじゃねぇ。」
「オレたちはもう、子供じゃないって……。」
そういう彼らの目の下には、濃い隈がついている。
「[小文字]ありがとう、二人共。[/小文字]」
「そんなのいいから寝ろって。」
「早く治して戻ってこい。」
隠しきれない嬉しさと笑顔が、私は嬉しかった。
「[小文字]二人も、ね?[/小文字]」
そう言うと、私は目を瞑った。
もう、死の間なんかいかないだろう。いや、行けないだろう。
二人のあんな顔を見てしまってはもう。
どこにだって行けやしない。
[水平線]
「退院おめでとーーーー!!!」
パァン!!クラッカーが鳴る。
ここはスクエア、ロブさんの店の前。
退院祝いにみんながパーティを開いてくれたのだ。
ありがとうと言いながら、私は眼の前のドーナツとケーキに目を向ける。
「食べていい?」
「ほんっと、好きだよな、甘いもの。」
「いいだろ。ほら食べろ食べろ。」
いただきますっと声を上げ、私は甘いものを口に放り込み始める。
まともに甘いものを食べれてなかったので、全身が喜んでくれている。
「よかったね、ソレイユ!!」
「ん?あぁ。」
外で食べるのも新鮮で、こんなに大人数で食べるのも悪くない気がする。
やっぱりよかったな〜と思っていると。
ビュウウウウウウウウウッといきなり突風が吹いた。
全身が引っ張られるような感覚。
そして砂煙。
「ぶふぁ……何だ何だ?」
「すっごい風だったね……・・・!?
そ、ソレイユ!?」
いきなりグローブが大声を張り上げる。
それに合わせて他のチームのメンバーも目が大きく開いていき、最終的に開いていないのは二人と私の従者たちだけになった。
「ソレイユ、頭頭。」
「カツラ取れてるぞ〜。」
エンペラーとレインに言われ、頭に手をやると、普段のセンニューニットはなく、マッシュの感触もなかった。
そして横に手を当てると、ゲソの感触。
カツラで隠して潜入のときにすぐガールに戻れるようになっている。
「「「「「「「「ガール!?」」」」」」」」
「いや、気づけよそこは!!!顔つきとかで!!!」
その言葉に、私はぶつかりそうな勢いで皆に突っ込む。
気づかれていなかったということがショックすぎる。
わかんないか?私ってそんなにボーイっぽいか?
「顔の半分をバンダナで隠し、眉や目もニットで見えないのですよ。しかたないかと。」
「口調だって中性的だし、人前にいる時の一人称、【我】だろ。
プランに一票。」
「そこはフォローしろよぉ……。」
従者にすら辛く言われて、私はやっぱりちょっと傷つく。
こう見えてもガールだよ。五人兄弟の三女だよ……。
「ってか!!ライダー、エンペラー!!
私のことガールだって言ってくれてなかったの!?」
「ったりめーだろ。オレのもんなのに取られてたまるか。」
「ライダーに賛成。」
言いたいことはわかるけど。嬉しいけど。
そんな、知らせたっていいじゃないか。
私は二人から離れる気はないのに。
というか離れられないのに。
「んもう!!!帰るぞ二人共!!」
「まだ始まったばっかだぞ?」
「帰って材料取りに行くの。」
「あー、なるほど。」
で、ついてくるんかい、二人共。
一歩進むたび、皆の姿が少しずつ離れていく。
夕日がまた、キラキラと輝いてきれいだ。
「今日は新月らしいな。」
「月見えないのか。」
エンペラーはいつになく残念そうだ。
っていうかライダーはなぜ、その話を切り出した?
そう思う間はなく、私の足は止まる。
「二人共。」
ここしかないと思った。
今しかないと思った。
どんなに結果が望んでないものでも、言わなかったらまた後悔すると思った。
「なぁ、お前らなら、ずっと、いつまでも一緒にいてくれるか?」
振り向いた二人は、笑っていた。
「ったりめーだろ。爺さんになろうが一緒にバトルしてやる。」
「だな。三人で死ぬまで遊び尽くすか。」
呑気に、でも覚悟を決めたような声で、私にそう告げる。
その姿が、失った家族に重なった。
「そこまでやるの?」
「バトルは楽しいって教えてくれたのは、お前だろ。」
「お前が楽しんでないと、オレたちも面白くない。」
私が笑いながら聞けば、あちらも笑いながら返す。
まだ二人がワカバだった時、一緒にたくさんバトルした。
チームも組んだ。それは、忘れられない。
「また三人でチーム組むかぁ……。」
「そうだな。」
「いいな。あ、今度バイト行こう!暇してるしな。」
「ライダーから言うなんて珍しいな〜。」
これからも、私は最強の皇帝として、二人と一緒に歩んでいきたい。
でも、今度はひとりじゃない。最強の皇帝たちだ。
[大文字][大文字][大文字]「なぁ、ソレイユ。ライダー。
夕日が、綺麗だな。」[/大文字][/大文字][/大文字]
[大文字]「月も綺麗だろうな。」[/大文字]
唐突なエンペラーの言葉に、すぐにライダーが返す。
私も、意味を理解して微笑む。
[大文字]「明日も、晴れそうだね。」[/大文字]
「起きて、起きて!!」
懐かしい声が、聞こえる。
この声を何度望んだことか。
「おにい、、ちゃん?おねえ、、ちゃん?」
「ソレイユーーーー!!!」
「よく頑張ったねぇ!!」
「お姉ちゃんの誇りだよ。」
「よくやったな!」
ぎゅむーっと四人に抱きしめられると、やはり不思議な感覚。
あったかくて、柔らかい。
「……ごめん、仇、討てなかった。」
シャインお兄ちゃんの腕の中に顔を埋め、震える声でそう伝える。
あの男にとどめを刺せなかった。
止めたのはライダーとエンペラー。
理由はわかりきってる。あっちのほうが正しい。
けれど、それでも私は、諦められなかった。
「おにっ……ちゃんたちのっ……仇を、とりたかったぁぁぁ!!!」
まるで小さい子供のように泣いて、泣いて、涙が枯れるほど泣いても顔を伝う水は止まることはなくて。
ここ数年、泣くことなんてなかった。
いつも無表情で、笑うことなんて二人といるときぐらいだった。
だから、氷のようだとみんなから言われた。
それでも良かったんだ。仇を討つためなら、どんなことを言われようと耐えられた。
けれど、とれなかった。
もうチャンスはないだろう。あいつは私を警戒する。
もう、入り込むことはできない。
真っ向切って対決できる相手でもない。
仇を打つ機会は、アレしかなかった。
「おにいちゃっ……。おねえちゃっ……。」
「もういいよ。」
リュミお姉ちゃんの声が聞こえる。
それと一緒に、シャインお兄ちゃんも、ライトお姉ちゃんも、スパークお兄ちゃんも、私の頭をなでてくれる。
「ソレイユは、いい子だね。
ボクらのことを、いつも一番に考えてくれてる。」
「でもね、自分の好きなこともやっていいのよ?」
「今、ソレイユがやりたいことは、アタシたちの仇をとることじゃないでしょ?」
「……オレらは、お前に幸せに生きてほしい。
そのためなら、なんだってしてやるさ。」
溢れた涙が、まだ止まらない。
もう何もかもが、嫌になる。
ここにいたい。ずっとこうしていたい。
お兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒に、ずっとここに___。
「だめだよ。」
シャインお兄ちゃんが、私を引き剥がすようにして、そう言った。
その声はとても優しくて、死んでしまったあの時と全く変わっていなかった。
「ソレイユ。お前は生きるんだ。
大切な人と一緒に、長生きするんだ。」
「ワタシたちは早死しちゃったけれど、あなたはワタシたちの分まで生きて。」
「もう、アタシたちにとらわれるな。
過去のことは変えられないでしょ。前だけ向いて。未来だけ見て。」
「お前自身の本当の幸せを、見つけてくれ。」
大好きなお兄ちゃんたちに言われても、私は嫌だと言い張る。
離れたくなかった。
一回失ったものを、手放したくなかった。
「もう嫌だよ……一緒にいてよ!!お兄ちゃん、お姉ちゃん……。」
まるで駄々っ子のように、大声で叫び散らかす。
けれど、四人の言う事は、変わらなかった。
「さぁ、行くんだ。」
「ここにいすぎたら、死んじゃうからね?」
「急いで。立って。ほら。」
急かすようにお兄ちゃんたちは私を引っ張る。
私も手加減せず全力で逆方向に体重をかける。
帰りたくない。もっとここにいたい。
「……ライダーくんも、エンペラーくんも悲しむだろう?」
「アイツラは、私がいないと生きていけないほど弱くねぇっ!!!!!」
全力で拒否するように声を張り上げる。
けれど、頭の奥には二人の姿がちらついてしまう。
「二人は……強いから。」
「そう?あなたがいないとご飯も喉を通らないみたいだけど。」
ライトお姉ちゃんが、私の方を向く。
その奥には、霧に包まれよく見えないが、何かを取り囲む人々の姿。
―ソレイユ……目ぇ覚ませ……!!―
―なんでもする。だから___起きてくれないか。―
―ら、ライダー、まずご飯食べようよ。―
―兄さんも……。身が持たないよ……!!―
―いらねぇ。― ―いらない。―
かすかだが声が聞こえてくる。
ライダーの声、エンペラーの声。彼らの仲間の声。
「……!!!」
「ほら。【あなたがいなくても生きていける】かもしれないけど、
[太字]あなたのいない世界[/太字]が彼らにとって幸せかどうかは話が別よ?」
「それは、お前も同じだ、ソレイユ。」
その言葉に、私は声がうまく出せなくなってしまっていた。
私がいない世界。そんなので何も変わるわけはないと思っていた。
私は、誰にだって愛されないことはわかりきっていた。
けれど、違った。
私を大切に愛してくれる人がいた。
一緒に笑ってくれる人がいた。
それに、気付けなかった。
「彼らのいない世界で生きることが本当にお前の幸せか?」
シャインお兄ちゃんがこちらを見つめ、そういう。
手を握るスパークお兄ちゃんとライトお姉ちゃん、
横に付き添ってくれるリュミお姉ちゃんも、私の言葉を待ってくれている。
「私は、、、。」
お兄ちゃんたちと一緒にいたい。
ライダーとエンペラーにもう悲しい思いをさせたくない。
そんな思いがこんがらがって、ほどけてを繰り返す。
最終的にそれは、一生かけてもほどけないであろう知恵の輪となって硬直した。
「[小文字]えら、べない………。[/小文字]」
こんなに私は優柔不断だったのか。
初めてここまで悩んだ。
私はどうしたらいいんだろうか。
「ここに、いたいよ。
あっちに、もどりたいよ。
どっちも選べるわけ無いじゃんか………。」
「それでいいんだぜ。」
スパークお兄ちゃんが私の独り言にそう返す。
なにがと返せないまま、私とお兄ちゃんの間の時間は流れていく。
「ってことは、未練残ってんだろ?
だったらさっさと帰って全力で生きてこい。
[漢字]あの世[/漢字][ふりがな]こっち[/ふりがな]にはいつでも来れるんだからよ。」
「来るならボクらが迎えに行くさ。」
お兄ちゃんたちはおもむろに私の後ろに回ると、私の背中を押した。
「行って来い。」
「頑張って生きて。」
「生きなきゃ、できないことだってあるよ。」
「諦めんな。最後まで足掻け。」
その言葉を背に受けて、私は霧の中へ飛び込んだ。
[水平線]
「[小文字]れい……それ……[/小文字]ソレイユ!!!!」
「ソレイユ!!」
二人の声が耳をつく。
重いまぶたをこじ開けると、そこには涙目でこちらを見つめる二人の姿。
体全体が重い。口のあたりに違和感。これは……酸素マスクか?
いやこれ、邪魔でしょうがないな。
「バカヤロっ……一週間も寝るなら先に知らせやがれ!!!」
「運ばれたときっ……心肺停止だったんだぞ!?無茶するなとあれほど言ったろう!?」
「二人共、ここ病院だy「「そんなこと言ってる場合か!!!!」」
止めようとしたチームメイトらしき人に、二人が怒鳴る。
普段おとなしいエンペラーでさえもそう叫んでしまうほど、心配してくれたのだろう。
心肺停止だったのか、私。
通りでお兄ちゃんたちが夢に現れるわ。
「ほんとっ……心配したんだからなっ……。」
「[小文字]ご、めん、ね?[/小文字]」
かすれる声で、上手く出せない声で、そう言い、彼らの頬を伝う涙を拭おうと手を伸ばす。
けれどその手は、二人によって抑えられた。
「絶対安静だとよ。あんまり動くんじゃねぇ。」
「オレたちはもう、子供じゃないって……。」
そういう彼らの目の下には、濃い隈がついている。
「[小文字]ありがとう、二人共。[/小文字]」
「そんなのいいから寝ろって。」
「早く治して戻ってこい。」
隠しきれない嬉しさと笑顔が、私は嬉しかった。
「[小文字]二人も、ね?[/小文字]」
そう言うと、私は目を瞑った。
もう、死の間なんかいかないだろう。いや、行けないだろう。
二人のあんな顔を見てしまってはもう。
どこにだって行けやしない。
[水平線]
「退院おめでとーーーー!!!」
パァン!!クラッカーが鳴る。
ここはスクエア、ロブさんの店の前。
退院祝いにみんながパーティを開いてくれたのだ。
ありがとうと言いながら、私は眼の前のドーナツとケーキに目を向ける。
「食べていい?」
「ほんっと、好きだよな、甘いもの。」
「いいだろ。ほら食べろ食べろ。」
いただきますっと声を上げ、私は甘いものを口に放り込み始める。
まともに甘いものを食べれてなかったので、全身が喜んでくれている。
「よかったね、ソレイユ!!」
「ん?あぁ。」
外で食べるのも新鮮で、こんなに大人数で食べるのも悪くない気がする。
やっぱりよかったな〜と思っていると。
ビュウウウウウウウウウッといきなり突風が吹いた。
全身が引っ張られるような感覚。
そして砂煙。
「ぶふぁ……何だ何だ?」
「すっごい風だったね……・・・!?
そ、ソレイユ!?」
いきなりグローブが大声を張り上げる。
それに合わせて他のチームのメンバーも目が大きく開いていき、最終的に開いていないのは二人と私の従者たちだけになった。
「ソレイユ、頭頭。」
「カツラ取れてるぞ〜。」
エンペラーとレインに言われ、頭に手をやると、普段のセンニューニットはなく、マッシュの感触もなかった。
そして横に手を当てると、ゲソの感触。
カツラで隠して潜入のときにすぐガールに戻れるようになっている。
「「「「「「「「ガール!?」」」」」」」」
「いや、気づけよそこは!!!顔つきとかで!!!」
その言葉に、私はぶつかりそうな勢いで皆に突っ込む。
気づかれていなかったということがショックすぎる。
わかんないか?私ってそんなにボーイっぽいか?
「顔の半分をバンダナで隠し、眉や目もニットで見えないのですよ。しかたないかと。」
「口調だって中性的だし、人前にいる時の一人称、【我】だろ。
プランに一票。」
「そこはフォローしろよぉ……。」
従者にすら辛く言われて、私はやっぱりちょっと傷つく。
こう見えてもガールだよ。五人兄弟の三女だよ……。
「ってか!!ライダー、エンペラー!!
私のことガールだって言ってくれてなかったの!?」
「ったりめーだろ。オレのもんなのに取られてたまるか。」
「ライダーに賛成。」
言いたいことはわかるけど。嬉しいけど。
そんな、知らせたっていいじゃないか。
私は二人から離れる気はないのに。
というか離れられないのに。
「んもう!!!帰るぞ二人共!!」
「まだ始まったばっかだぞ?」
「帰って材料取りに行くの。」
「あー、なるほど。」
で、ついてくるんかい、二人共。
一歩進むたび、皆の姿が少しずつ離れていく。
夕日がまた、キラキラと輝いてきれいだ。
「今日は新月らしいな。」
「月見えないのか。」
エンペラーはいつになく残念そうだ。
っていうかライダーはなぜ、その話を切り出した?
そう思う間はなく、私の足は止まる。
「二人共。」
ここしかないと思った。
今しかないと思った。
どんなに結果が望んでないものでも、言わなかったらまた後悔すると思った。
「なぁ、お前らなら、ずっと、いつまでも一緒にいてくれるか?」
振り向いた二人は、笑っていた。
「ったりめーだろ。爺さんになろうが一緒にバトルしてやる。」
「だな。三人で死ぬまで遊び尽くすか。」
呑気に、でも覚悟を決めたような声で、私にそう告げる。
その姿が、失った家族に重なった。
「そこまでやるの?」
「バトルは楽しいって教えてくれたのは、お前だろ。」
「お前が楽しんでないと、オレたちも面白くない。」
私が笑いながら聞けば、あちらも笑いながら返す。
まだ二人がワカバだった時、一緒にたくさんバトルした。
チームも組んだ。それは、忘れられない。
「また三人でチーム組むかぁ……。」
「そうだな。」
「いいな。あ、今度バイト行こう!暇してるしな。」
「ライダーから言うなんて珍しいな〜。」
これからも、私は最強の皇帝として、二人と一緒に歩んでいきたい。
でも、今度はひとりじゃない。最強の皇帝たちだ。
[大文字][大文字][大文字]「なぁ、ソレイユ。ライダー。
夕日が、綺麗だな。」[/大文字][/大文字][/大文字]
[大文字]「月も綺麗だろうな。」[/大文字]
唐突なエンペラーの言葉に、すぐにライダーが返す。
私も、意味を理解して微笑む。
[大文字]「明日も、晴れそうだね。」[/大文字]
- 1.Prologue
- 2.マイペースキングは、今日も今日とてマイペース
- 3.弁当をちゃんと食え!!
- 4.新しい家
- 5.not本編 インペリアル&登場人物の紹介!
- 6.体調不良表現あり、ご注意!! NightとKing
- 7.サーモンランと、ライダーの憂鬱
- 8.濁る瞳
- 9.太陽
- 10.殺し屋の子
- 11.皇帝のチームのチームメイト
- 12.オレら5人で、最強チーム!?
- 13.初バトル
- 14.さいきょう皇帝様は親に頭が上がらない?
- 15.愛されたかった
- 16.二戦目 シンペラーチーム戦!?
- 17.オレ等の宣戦布告
- 18.あなた達が従うべきは
- 19.バトルロワイヤル・イヴ
- 20.バトロワ開始!?即三人戦!?
- 21.新たな皇帝と闇社会の子
- 22.キミを助けるために
- 23.番外編(?)曲パロ
- 24.戦い、開始。 皆の心
- 25.戦いのスタート地点
- 26.最強皇帝の従者たち
- 27.愚王と愚民、そして愚帝【前編】
- 28.愚王と愚民、そして愚帝【後編】
- 29.処刑の日
- 30.スプラマニューバーの帝王
- 31.みんなで帰ろう
- 32.大切な人
- 33.最終回 君に伝えたい